IoT本命Cerevoのモノづくり--ニッチを標的に世界で作る・売る方法

別井貴志 (編集部) 日沼諭史2014年02月10日 14時21分

 「Internet of Things(IoT、モノのインターネット)」に関連する業界の出来事としては、最近ではGoogleがサーモスタットを開発する米Nest Labsを買収したのが記憶に新しい。これまでネットワークとは無縁だった“モノ”が次々とつながることで、新しいビジネスチャンスが広がり、ライフスタイルもさまざまに変化していくことが予想されている。

 IoTに関わる企業はGoogleのような大企業だけではない。むしろスマートウォッチのPebbleのように、中小企業やスタートアップの方がかなり以前から積極的に携わってきたと言える。都内にオフィスを構える日本のセレボもその1つだ。同社は2007年4月10日(フォトの日)に設立し、既存のビデオカメラに接続するだけでライブ配信できる「LiveShellシリーズ」や、スマートフォンから一眼カメラのシャッターを操作する「SmartTrigger」など、数々のIoT関連機器を企画、製造、販売してきた。

 以前は「ネット家電」などともいわれてきたが、いち早くIoTのモノづくりをしてきたセレボは、昨今のIoTが注目されている状況をどのように考えているのだろうか。同社代表取締役の岩佐琢磨氏に聞いた。

ニッチなハードウェアが存在しうる環境に

--セレボでは近頃のIoTのムーブメントを、どのように感じていらっしゃいますか。

「インターネットにつながる家電」を創業以来、標榜してきたコネクテッドハードウェアカンパニーのCerevo 代表取締役 岩佐琢磨氏 「インターネットにつながる家電」を創業以来、標榜してきたコネクテッドハードウェアカンパニーのCerevo 代表取締役 岩佐琢磨氏

岩佐氏:僕らは自社製品について、もともと「インターネットにつながる家電」というのをずっと標榜してきました。いわばインターネットハードウェアというものだったのです。ただ、いい呼び方がないねということで「ネット家電」と言っていたんですけど、最近ネット家電というと掃除機みたいな、いわゆる「白物」を指すようになってしまいました。

 僕らとしては変えなきゃいけないね、と考えて、社外でプレゼンする際には「コネクテッドハードウェアカンパニー」と言っているんです。たぶんIoTより「コネクテッドハードウェア」の方がまだ日本人には受け入れやすいのではないかと。

 コネクテッドハードウェアについては、「これは来たな」というようなウェーブの原動力になっている要素がここ2年くらいで増えたと感じています。ECサイトが盛り上がり始めた時も、PCが多くの家庭に普及して、クレジットカードの普及が進んだタイミングだったように、いくつかのピースが同時にパチッとはまって、ドーンとはじけるようなものがありました。

 たとえばソーシャルゲームバブルの時もそうで、OSネイティブに比べて要求されるスペックのハードルが高いブラウザーというプラットフォームであっても、ゲームを動かせるレベルのハードウェアをみんなが持っているとか、ほぼすべての家庭にブロードバンドが普及したとか、あるいはモバイルはパケット定額を使うのが当たり前になっているとか、キーとなる要素がありました。

 いくつかのピースが同時にはまった時に、ムーブメントやバブルが起きると思っています。そういう意味でIoTについては、ニッチなハードウェアが存在しうる環境ができあがった、というのがポイントになりますね。

--具体的には、どういう環境になったのでしょう。

岩佐氏:Cerevoはハードウェアを作っているし、スマートフォンなどと接続するためのアプリも作っています。ただこれってIoTでは当たり前の話で、IoTは、ガジェットとそれを操作するものや、連携するアプリ、サービスがあって初めて完結するものです。

 これを僕らは5、6年前から、13人くらいで、小さい会社だけれど独自のブランドでずっとやってきました。このパターンはスマートウォッチの「Pebble」もそうだし、ボール型ロボットの「Sphero」もそうだし、あの手のIoTと呼ばれている企業はみんなこのスタイルで、だいたいどこも4、5人もしくは10人程度でやっているんです。

 作っているものはマニアックといえばマニアックなモノ。「Sphero」が万人受けするかというと、おそらくそうではない。1000万台売って世界のみんなが持つような、Google GlassとかiPhoneに比べるともうコンセプトの時点でニッチなわけです。今IoTと言っているものの大半はたぶん等しく、ある特定の層の人に受ける商品なんです。

 で、そんなんで生きていけるの?ってところなんですけど、実は僕らの製品の売り上げ比率は、北米、欧州、アジアなどが全体の48%と、ほぼ半分が海外なんです。細かいところではベネズエラとか、ドミニカなどもあります。そういった国も、日本と同じように選挙運動をUstreamで中継していたり、ローカルのスポーツを撮影していたりするんでしょう。というわけで、実はけっこういろんな国でLiveShellシリーズの需要があって売れているんです。

“ガチ”ユーザー向けの製品を世界で売る

--そういう国ではどうやってセレボの製品を買っているんですか?

岩佐氏:ほぼ全部代理店経由ですね。ガジェットベンチャーというか、IoTベンチャーで国限定とかはもうナンセンスな話です。世界中の国々でECは多少の温度差はあれど盛り上がっていて、世界中の国でマニアックなハードウェアの需要がどんどん高まっています。

 各国の代理店は、どんな小さな国でも、数十万から100万人も人口がある国であれば、必ずディストリビューターはいます。ニッチなものを仕入れれば、確実にそのニッチ好きな層がECサイトなどで見つけて買ってくれることを知っているんです。なので、ディストリビューターは「International CES」などの国際展示会に行っては、目を皿のようにしていいモノがないかと探して回るんですね。

 スタートアップで実際にうまくいっている人たちは、たとえば米国で製品を発表して、そのニュースがCNETやNewYork Timesなどのサイトに掲載されます。そうすると、ディストリビューターはみんなこぞってそれを見たいと思って、展示会などを訪れるわけです。

--製品が世に出てから売れるまでの本来あるべきサイクルともいえますね。

岩佐氏:非常にきれいにサイクルが回ってますね。ただ展示会に出展しただけだと、いいディストリビューターに巡り会える率は低いのです。通常は3%しかないところを、うまくメディアリレーションさせていただくことによって5%や10%になる、ということをみんなしているんです。

--ディストリビューターに巡り会えて販路が確保できたとしても、さらにそれを広く知ってもらうことも重要ですね。

岩佐氏:IoTというのは、まずソーシャルメディアが最初の起点に来ているんですね。たとえば登山を例に取ると、“ガチ”で登山が好きで、命をかけてやるような人たちは少ないだろうけれど日本で5万人とか10万人はいそうですよね。その登山好きな人たちはFacebookの「登山部」みたいなコミュニティでつながっていて、そういうコミュニティがたくさんあり、マニアの人たちで無数の集合体を形作っています。

 そんなコミュニティの中で、両手がふさがっている時でも使えるGoogle Glassみたいなモノがほしいとか、そういう話が出てくるんですけど、じゃあ本当のGoogle Glassが登山でどれくらい使えるかっていうと、落としたら簡単に壊れるし、高度が上がると使えなくなるとか、高度計や気圧計を備えていないと意味がないよねとか、いろいろ意見が出てくると思います。

 そこで仮にCerevoが“ガチ登山家専用”のウェアラブルデバイスを作ったとします。が、日本で10万人いる登山家のうちの10%に売れたとしても、たった1万台にしかならない。まあ1万台でも売れればすごい数なんですけど、もし母数が10万人じゃなくて5万人しかいなかったとしたら、せいぜい5000台しか売れない。そのために製品を新規開発して1億円投資するのかというと、うーんと思ってしまいます。ただ、それを100カ国で売れば、1カ国1万台で計100万台、1カ国5000台でも50万台売れるということになって、話が違ってきますよね。

 で、もしCerevoがガチ登山家専用のウェアラブルデバイスを作ったとして、メディアにニュースを取り上げていただく、あるいはそういったメディアのFacebookページなんかに「こういうものを作ったので見てください」と書き込んだ瞬間に、それがすばらしい製品だということを前提とすれば、たぶん48時間くらいで世界中の登山家コミュニティに広がるといったことが起こりうるんです。

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