フレキシブルな対応がヒットを生んだ--バンナム「ゴッドイーター」シリーズ開発に聞く - (page 2)

タイトルの評価を良くしてから展開

--「GEB」の発売はすぐに決まったのでしょうか。

富澤氏:新規タイトルで発売前から次の制作を始めることは、会社としてもジャッジしきれないところなんです。でも現場のコアメンバーはすぐに動き出していましたね。

吉村氏:マスターアップしたあとすぐに動きました。そのころにはある程度受注や出荷本数などもわかりますから、売れそうという手応えがあったんです。だったら先行して動いていこうと。

「GOD EATER BURST」
「GOD EATER BURST」
(C)2010 NBGI

富澤氏:なんでこの期間でできたのかと今でも聞かれることがありますけど、それは開発が作り続けていたからです。ユーザーの皆さんの意見も体験版のときとは違って、じっくり遊んでいただいた上でのものなので、それに対していかにスピーディーに動けるかが命題でした。たくさんのユーザーが一度は遊んだタイトルとして、それでつまらなかったと忘れ去られるようなタイトルになってはいけないですから。ここで終わらせてはいけないという気持ちは、開発はもちろんですけど、社内的にも出てきました。ただ、それをどういう形でユーザーの皆様に提供するのか、また販売戦略の面で議論がありましたね。

--どのような点が議論されたのでしょうか。

富澤氏:これだけ売れたのなら、一定期間を置いて安価なベスト版を出してユーザーを広げて、その次に……という意見も営業的側面から出てきましたけど、それはやらなかったんです。現場としては1作目をこのまま広げていくよりも、より良い形の「GEB」を出して、タイトルとしての評価をより良くした状態から広げたいと。課題も多く残り賛否両論あるタイトルをこのまま広げていくのは耐えがたいところがあったんです。

吉村氏:時間が経過するとチャンスがつぶれてしまうんです。厳しい意見の裏に、「もっとこうだったらいいのに」という気持ちがあるとしたら、それはいい反応なんです。もちろん褒められる、満足してもらえる反応がうれしいことには間違いないですが、「う、うん……」という、何の気持ちも動かないようなものは興味がないってことで、厳しい意見をおっしゃる人は興味をもっていただけている人たちですから。競合タイトルも多いジャンルでもありますので、いち早く提供することを最重要課題として動きました。

--「GEB」では当初通常版のほかに安価なアペンド版も発売されました。ただ、これは中身は同じですよね。

富澤氏:前作を持っていれば動くというだけの差で、中身は全く変わりません。当然利益を削る形になりますけど、ユーザーの皆さんからは増補版という見られ方をされますし、販売間隔も短い。手にとってもらう障壁を下げて乗り越えてもらわない限り、1作目の評価でとどまってしまうという危機感は強くありましたから、そのなかで生まれたひとつの販売方法です。最終的に販売本数は1作目よりも「GEB」のほうが多く販売されました。「GEB」で得た評判が、新たなユーザーを呼んでくださったからだと思います。

吉村氏:当初は無料で出そうと思っていたんです。そもそもネット配信による無料アップデートで対応しようと考えていました。

富澤氏:ただ当時はPSPというハード特性やダウンロードコンテンツの認知度、ネット接続率が高くない状態だったので、これでは初代タイトルに不満を持ったユーザーの方に届けられないと。その方法を考えたひとつの形がアペンド版の販売ですね。

吉村氏:僕は、どうやったらこのアペンド版のUMDを無料で配布できるかと言ってました。なんとかならんかと。

富澤氏:当初予定してなかった「GEB」としての体験版も出したんです。その上でさらにパッケージを無料で配るなんて、おまえは一体何を言ってるんだと(笑)。最終的には、販売に足りうるコンテンツをしっかりと用意しようという形になりました。

吉村氏:結果的に「GEB」で新しいユーザーの方が多く入って来ていただいたというのは、いい意味での誤算でした。

富澤氏:3年間長く売れ続けて、実は「GE2」の発売後も販売本数が伸びているんです。世界観が続いているものですので、「GE2」から入ったユーザーが、さかのぼって「GEB」を楽しみたいという方も少なからず存在するというのは、面白い現象ととらえています。

吉村氏:「GEB」は初速が鈍かったので不安視されたところがあります。でもここで残ってくれたユーザーと新たに入ってくれたユーザーが、ゴッドイーターを本当に好きでいてくれるユーザーととらえて、その先の戦略などを考えていました。

富澤氏:独自性のところを好きでいてくれているからこそ、厳しい意見を出しつつも残ってくれているという意味では、我々はこのユーザーの皆様を今後も楽しませ続けることが第一優先。その上で新たに関心を持ってもらえるようにしていくと。それを1作目から「GEB」、そして「GE2」へと戦略は考え続けています。

--ユーザー向けの施策や戦略で心がけていることはありますか。

吉村氏:思いついて、良さそうだったらやるというのがスタンスですね。外側向けのキャンペーン的な施策よりも、ゴッドイーターは「物を作ってお客様に提供する」ということがまずありきなのかなと。開発側としては、作ったものをユーザーの皆さんに届けるためには、なんでもやりますというスタンスで動いていますし、自分たちも考えます。

富澤氏:ゴッドイーターはハンティングアクションということからスタートしていますけど、今はゴッドイーターとしての楽しさを提供すると。それはシナリオだったりキャラクターだったり、ひとりでもみんなでも楽しめるという部分、アクションとしてもハイスピードで爽快感を重視しているというのも、比較的若年層の方にしっかり刺さっていることは理解しているので、ゴッドイーターシリーズと、その先に期待している方々を失望させないことを第一としています。

吉村氏:「GEB」のときも、体験版はかなり無理をして出したんです。販売間隔がこれだけ短期間ですから予定にはなかったですし、このときは体験版を出しても、意見を聞いて反映させるのも難しいタイミングだったので。それでも、出した方がいいだろうと思ったので、すぐに作業して完成した翌日に配信したぐらいですし。

富澤氏:フレキシブルな対応を開発や営業、プロモーションにもしてもらってますが、それができるのも、みんなが同じ方向を向いているからだと思います。もちろん予定を組んでその通りに進めていくこともとても大切なことだと思いますが、考え方や方法論、パターンに固執しすぎるよりは、思いついたらやるぐらいのフレキシブルさを、今後も維持していきたいです。

吉村氏:ブレていけないのはユーザーの皆さんがいるということ、そして求められているもののイメージです。ユーザーの皆さんが喜ぶものを思いついたら、とにかくやったほうがいいよねというだけの話です。考えなしに乱発するのはよくないですが、弾を撃たないよりは撃った方がいいという考え方です。

富澤氏:ゴッドイーターは、ユーザーとのコミュニケーションを継続的に行っていく前提のイメージがありますので、ユーザーとのチャンネルをきちんともちながら、定期的に商品を節目として出していく、それを今後も続けていく形ですね。

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