フレキシブルな対応がヒットを生んだ--バンナム「ゴッドイーター」シリーズ開発に聞く

佐藤和也 (編集部)2014年02月04日 15時00分
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 バンダイナムコゲームスは2月4日、マルチプレイアクションゲームシリーズ「GOD EATER」(ゴッドイーター)シリーズにおいて、国内で累計販売本数が200万本を突破したことを発表した。

 プレイヤーは3つの形態に変化する武器「神機」を操るゴッドイーターの一員となり、“アラガミ”と呼ばれるモンスターを討伐するミッションに挑むという、ハイスピードハンティングアクションをうたったオリジナルタイトルとして、第1作目をPSP向けに2010年2月4日に発売。新規タイトルにもかかわらず、約50日間で販売本数が60万本を突破した。

  • シリーズ最新作で、PSP版とPS Vita版を同時発売した「GOD EATER 2」(画像はPS Vita版パッケージ)

 その後、システムの改善やシナリオなどの追加要素を盛り込んだ「GOD EATER BURST」(ゴッドイーターバースト、以下「GEB」)を、1作目から約8カ月後という異例のスピードで10月28日に発売。単体で遊べる通常版に加え、1作目のUMDソフトを保有しているユーザーに向けた安価なアペンド版もリリース。1作目よりも累計販売本数を上回っているという。

 そして3年の月日を経て、続編となる「GOD EATER 2」(ゴッドイーター2、以下「GE2」)の、PSP版とPS Vita版を2013年11月14日に同時発売。ゲームの内容やボリュームに関しては両機種版とも同一で、PSPとPS Vitaの別機種間におけるマルチプレイ(クロスプレイ)を実現した。発売日の時点で50万本の出荷を発表。現在は60万本の出荷を発表している。

 日本では人気ジャンルのひとつとして挙げられる多人数で遊ぶスタイルのマルチプレイ型アクションゲーム。多様なタイトルが各社からリリースされているなかで、ゴッドイーターシリーズは若年層を中心に支持を受け、独自の地位を築いている。新規のオリジナルタイトルとして立ち上がってから、どのようにしてヒットまで結びつけたのか。プロデューサーを務めるバンダイナムコゲームスの富澤祐介氏、ディレクターを務めるバンダイナムコスタジオの吉村広氏に開発の経緯や取り組みについて聞いた。

プロデューサーを務める富澤祐介氏(左)と、ディレクターを務める吉村広氏(右)
プロデューサーを務める富澤祐介氏(左)と、ディレクターを務める吉村広氏(右)

--まず第1作目の開発の経緯を教えてください。

富澤氏:もともとは、吉村が新規タイトルとなるマルチプレイのアクションゲームを企画したのがきっかけです。だいたい1年ぐらい吉村と開発会社であるシフトの方とで試行錯誤を続けていて、そのころに当時の上司からプロジェクトの話を聞きました。なので私はプロジェクトに途中から加わった形です。

吉村氏:当時、ハンティングアクションゲームは大きいタイトルも含めていろいろ出ていましたが、差別化としてひとつ決めていたのは「ひとりでも楽しめる形にする」ということでした。単に一人プレイを充実させるというだけではなくて、マルチプレイのなかで自分の役割を果たすなかでも、好きなように戦えるアクションゲームを作るということですね。その延長線上にキャラクターやストーリーを決めていきました。

--ゴッドイーターシリーズは若年層に支持を受けている印象がありますが、最初からこの層を狙っていたのでしょうか。

吉村氏:現在のユーザー層は、だいたい中学3年生ぐらいから大学生ぐらいまでが中心です。ただ、企画初期段階はそのひとつ下の世代を狙っていました。ニンテンドーDSに親しんだユーザーの皆さんが、PSPに移るタイミングで手にとってもらうことを想定していました。それにあわせて世界観やキャラクターを作っていったんですが、社内で子どもっぽいという意見が強かったんです。なので、与えられた使命を成し遂げるという世界観をストレートに出して響く世代をターゲットに見据えることにしました。

富澤氏:私が加わったときは、プロトタイプができたぐらいの段階で、シナリオもキャラクターも作られてはいましたが、外から見るとまだ整合性が十分でない状態。素材がそろいつつあるところで、これをどのようにして売り出していくかというタイミングでした。ただ、これはいけるのではと思うところがあって、引き受けたんです。

--富澤さんから見て、いけると思ったポイントはどこですか。

富澤氏:このタイトルが狙っていたことですけど、中学生から高校生あたりの世代の心に響くであろう世界観を守った上で、キャラクターゲームではなくアクションゲームとしてやりこんで遊んでもらえるということです。当時でもハンティングアクションが流行していましたけど、その流れにのりつつも独自の世界観と遊びを提供するという目的がハッキリしていました。

 そしてそれをいかにターゲットとしているユーザーの皆さんに伝えていくかが僕の仕事です。とにかくベースがないタイトルですから何もかも足りない。オープニングアニメーションを制作してプロモーションアニメとして活用することなど、プレイする前から興味を持ってもらうために、開発の二人三脚でやれることはなんでもやるというスタンスでプロモーションも展開しました。

体験版を3カ月前に出したことが転機に

--その展開のなかでは、体験版を発売から3カ月前に出されたことも大きかったとされています。

富澤氏:当時でも体験版を出すこと自体は珍しくありませんでしたが、そもそも体験版の多くは完成したものを切り出したもので、発売直前にゲームの良さを体験してもらおうという考え方でした。作業にしても商品が完成した後の作業になります。

 全くの新規タイトルですから、たとえハンティングアクションであってもゴッドイーターなりの良さを伝えるには、少しでも体験していただく機会を増やさないといけない。知られないまま発売することは避けたかったので、体験版は出すことは必須だろうと。それを3カ月前に出そうと提案したのは、まだ受注が始まる前に体験版を出して反響と話題を作っておき、多くの予約を取って受注につなげたいという販売的な戦略を主に意図していました。

--体験版を早い段階で配信して、ユーザーの意見をその都度体験版なり製品版に反映させていくような手法をとっているメーカーも最近ではありますし、ゴッドイーターも早い段階から取り組まれているかと思いますが、当時は意図してなかったのでしょうか。

富澤氏:当初はあくまで販売戦略の一環でしか考えてなかったです。いざ体験版を配信すると、続編でもない新規タイトルの体験版が、UMDで配布したものを含めると200万ダウンロードも配信され、数万単位で意見をいただきました。でもその出来について率直に厳しい評価を多数いただきました。

吉村氏:当時、体験版を3カ月早く出すということは、完成から1カ月半から2カ月前ぐらいのクオリティのものを切り出すことになります。当然その後からさまざまな調整が入ってクオリティアップをはかってゲームが完成するわけですから、ある程度の指摘は想定していました。ですが、すでに仕上げていた部分にまでダメだしがたくさんあったんです。

富澤氏:でも一番つらいのは全く反応がないことです。それを考えると、否定的でも意見があるということは関心を持っていただけるということ。やはりこのまま開発を進行するよりは、指摘されたところは直さないといけないと感じたんです。最悪延期の判断も視野に入れつつ、製品版の改善を進めました。今のように意見を聞いて体験版や製品版にフィードバックをするということを想定した開発スタイルではなかったですね。

吉村氏:1週間ぐらいでなんとかなると思って改善に取り組み始めたんです。結局1週間ではなんとかならなかったんですけど(笑)。でも考える前に、これはやると。

富澤氏:気がついたら吉村がやり始めていたんです。

吉村氏:あくまで営業施策がきっかけで予定していたことではなかったですけど、でもユーザーにゲームを提示して意見が返ってきて、それで良くなるとわかっているならなんとかしたいと思うのが開発者としての自然な気持ちですし、結果オーライな感じでした。

--いざ発売すると、約50日間で販売本数が60万本を突破しました。

富澤氏:目指してはいたところですけど、そこまでいく確証はありませんでした。体験版でいただいた意見を踏まえて改善したこともアナウンスして、ユーザーさんのなかで評判が上がっていたんです。狙っていたわけではないですが、こういった開発とのコミュニケーションが新鮮にも感じたところがあるんだと思います。新規タイトルでありながらユーザーとのコミュニケーションを取る環境ができたことが、ロケットスタートの要因だと考えます。

吉村氏:当時は富澤もそこまで何本もタイトルを手がけていませんでしたし、僕自身もオリジナルでゲームタイトルを作っていく経験もそこまでなかった。シフトさんも自分たちが考えて作ったものが広く世に出るということがそこまでなかった。みんなに“飢え”があったと思うんです。そこでユーザーからの意見がものすごくたくさんあって、そうなると素直にテンションが上がるんです。それで対応したらそれが話題を生んで、予約や受注が増えて……。「これは大変なことになるんじゃないか」という高揚感に突き動かされるまま進んでいって、それが製品に反映されたんだと思いますね。

 基にあったコンセプトが求められていて、それがユーザーに響いたのがヒットの一因であると思います。でもそれだけではなく、期待されていることに突き動かされて、製品をよくするといういい循環が後押しとしてあったと。そして営業やプロモーションも含めて「これはいけるのでは」という徐々に熱量が上がる実感とともに、みんなで突き進んでいった結果だと考えます。

--それだけ販売されると、体験版以上に意見や反応もなども多かったと思われます。

吉村氏:確かにそうです。でも体験版のフィードバックはしましたが、1作目についてはおかげさまで60万本という結果を残せましたが、ゲームに対する厳しい意見は多いと感じました。なので、すぐに次に取り組みはじめました。

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