質問1:キーワードは、「資金調達の大型化」です。弊社はシリーズAを中心に投資をしておりますが、スタートアップの方々の旺盛な資金需要を強く感じます。ひと昔前なら1億円の調達というとそれなりに、大きいな印象というがあったかと思いますが、今だと、2〜3億円、大きい場合は5億円くらいをシリーズAで調達するスタートアップも出てきています。
基本的な方向性としては、“正しい”かなと思っています。ですが単に市場環境がバブルなので、それにともなって「調達できるときにしておこう」というようなスタンスだと早晩崩れていくと思います。その中で、きちんとしたTractionを出していて、かつ適切なサイズの資金調達が出来るスタートアップが今後勝ち残っていくと思います。
また、ベンチャーキャピタル側でも新しいファンドが数多くでき、特に政府系のお金が入ることでより資金規模の大きなファンドが組成され、その結果、投資する側の投資金額が大型化しているという側面もあるかと思います。
いずれせよ、過去にも似たような光景を何度も見ていますので、そのあたり、ファンドマネージャーとしてのDisciplineを持って、運用していきたいですね。
質問2:私自身がBtoBの投資が好きなのもありますが、大きなテーマ感としては、「ホワイトカラーの生産性の向上・改善」というのがあります。日本の場合は、世界的に見てもホワイトカラーの生産性が低いと言われております。
実際にみなさんの周りをみても、「なんでこのアウトプット作るのにこんなに時間がかかるのだろう」というような仕事は、正直たくさんあると思います。そういう意味では、ホワイトカラーがしているオペレーショナルな仕事を極力、ITに置き換えて自動化していくことで、人間はよりクリエイティブな仕事に従事するようにしていくみたいな世界観を作っていきたいと思います。具体的には、支援先でもありますが、「Kaizen Platform」なども、企業のマーケティングプロセスの一部を自動化することで、より費用対効果を上げていくことを目指しているものです。
また、ITが浸透する中で、「ツールが多すぎて煩雑になり過ぎる」という傾向もあります。そこは“ダッシュボード化”というのがもう1つの切り口として面白いと思っています。海外の会社ですと、米国のDomoというまさに多様化するマーケティングデータをダッシュボードとして見せる会社もありますし、シンガポールのHRBossというHRのさまざまなデータをダッシュボード化して見せるという企業などが急成長しています。
このように、企業内の特にホワイトカラーの業務の中には、まだまだ改善や改良できる部分がたくさんありますので、そのあたりのソリューションを考えるスタートアップに投資していきたいと思っております。
質問1:2013年は、官民の動きにより、ベンチャー企業にとっての「追い風」が吹いた1年であったと思います。
「官」においては、アベノミクスの成長戦略における起業家支援制度の拡充がなされました。例えば、官民ファンドの設立、経産省主導のベンチャー企業支援プログラム、ベンチャーファンドへの出資に対する税制優遇措置の法案成立等の動きがありました。
「民」では、大企業内での新規事業創出における、ベンチャー企業との連携機運の高まりに伴う、大手メディアやネット企業等によるCVC設立の動きが顕著であったかと思います。また、スポットライト、スケールアウト、コーチ・ユナイテッドなどが大企業に買収されたように、大企業によるベンチャー買収の動きも、2012年に引き続いて比較的活発だったのではないかと思います。
また、IPO市況も堅調に推移したこともあり、ベンチャー企業にとっては、資金調達からExitに至るまで、チャンスの多い状況が続いているのではないでしょうか。
ただ、全体的なバランスを見ると、資金の供給量の増加に比べて、Exitの機会の増加は限定的のように感じられますので、今後、どこかのタイミングでその調整が起こるのではないかと見ています。
質問2:産業構造が古く非効率が多く存在する市場を、ITの力で効率化していく、というモデルに注目しています。2014年以降もそのようなモデルで大きく成長するところが出てくるのではないかと見ています。
例えば、ホワイトプラスやラクスルがその好例だと思います。両社に共通する点として、既存市場の縮小に付随して発生する遊休設備を、ITを用いてネットワーク化し、低価格で利便性の高いサービスを提供しているということが挙げられます。すでに巨大な市場が存在している領域をターゲットとしているので、収益モデルが明確で、スケールも見えやすいのではないでしょうか。
海外では、“インターネットオブシングス(あらゆるものがインターネットを通じてつながるという概念)”に関連して続々と登場する製品やサービスに注目しています。例えば、日々の運動量を計測するNikeのFuelbandやFitbitのようなもの、家のセキュリティや家電をスマホ経由でコントロールするスマートホーム関連等様々な領域が該当しますが、身近なものがインターネットに繋がっていく流れの中で、ベンチャー企業が挑戦できる領域も広がっていくものと考えています。
質問1: 同様の意見が多く出ると思いますが、「好況」が2013年のキーワードでしょう。アベノミクスの金融緩和で、市場参加者のセンチメントが改善し、円安で大企業の業績を上向きになり、株価は大幅に上昇しました(2013年11月末までの1年間で日経平均は1.7倍になっている)。IPO市場も活況を呈し、スタートアップにも大企業や国などから、新たに大きく資金が供給される流れができました。結果、スタートアップの資金調達額、時価総額ともに大幅に上昇し、非常に恵まれた資金調達環境となりました。
総論で言うとスタートアップ業界にとって素晴らしい1年でしたが、“バブル”として終わるか、“業界全体のレベルが一段階上がる”かは、2014年以降の業界の参加者の動きにかかっているのではないでしょうか。
2005年も界隈は好況に沸きましたが、2008年のリーマンショック以降資金供給は極小化し、一過性のバブルで終わってしまいました。現在の流れをバブルで終わらせないためには、高時価総額を正当化するリターンがついてきて、その資金が次世代のスタートアップに投資される好循環を形成することが必要でしょう。
米国NASDAQだとIPOには数百億円程度の企業価値が必要ですが、日本だと米国におけるシリーズC、D程度に相当する数十億円規模の企業価値で実現できてしまいます。逆に言えば、1000億円規模の大型上場をする企業が出にくくしなってしまっているとも言えます。好循環を作りだすためには、早熟なIPOを目指すだけでなく、じっくり腰を据えて規模化してからIPOを目指すような骨太な企業も生み出す必要があります。
そのためには、起業家は上場までの長い道のりを見据えて、道半ばの実現化できない時価総額を過度に上げ過ぎず、一方で投資家も骨太な事業以外に過度に上げ過ぎた時価総額で必要な資金以上に投資をしないといった規律が必要になってくるでしょう。
2014年は、より好況に踊る年になるはずです。好況をきっかけに、業界を一段レベルアップさせるために、今まで以上に起業家、投資家など業界関係者と一致団結して、業界を盛り上げていきたいと考えます。
質問2:スマホが本格的に普及し、日本でも人口の33%を超えました(ニールセンの2013年12月の発表)。その中で、ようやくユーザー目線での“スマホコンテキスト”の意味合いも見えてきています。物理的なスクリーンサイズの制約に加え、移動中などの秒単位での隙間時間で使われるというユースケースなどが相まって、短時間で消費できるコンテンツの需要が急激に高まってきます。
短時間消費コンテンツは、超ハイコンテキストか、超ローコンテキストの2種類に収束すると考えています。超ハイコンテキストは、例えばLINEでのグループチャットのように、そもそもリアルのコミュニティでコンテキストが共有されている中で、1行以内、場合によっては数文字+スタンプでのやり取りなどがそれにあたります。一方で、超ローコンテキストは、ひとめでその意味や面白さが理解できるというパターンで、そういった意味では、「動画」が大きく“来る”と考えています。
動画メディアの有名どころとしては、6秒の動画をタイムライン形式でポストするコミュニティの「Vine」(2013年8月時点で4000万ユーザー)があります。また、11月に8900万訪問者を達成した、動画や画像中心のキュレーションメディアの「Upworthy」は注目です。Upworthyは動画、画像という切り口に加え、コンテンツの生産方法が日本的な“まとめ”の手法を取っている点でも二重に注目しています。
動画メディアとともに、動画広告も立ち上がるでしょう。米国では2013年ですでに4000億市場、2016年には8000億にまで成長すると言われています。動画以外の広告市場と同様にRTB化(Real Time Bidding)が進んでいます。主なプレーヤーとしては、8月にAOLに4億500万ドルで買収されたエクスチェンジのAdap.tvや5000万ドル以上の資金調達をしている動画DSPのTubeMogulなどがあります。
一方で、動画周りの市場が立ち上がるためには、手軽に高品質の動画を大量に作成する供給側のサービスも必要になってきます。API経由で動画や画像をアップロードするとパラメータを設定するだけで、クラウドベースで自動的に動画をレンダリング、生成する「Stupeflix」は、すでにサムスン、コカ・コーラなどの大手企業を含む累計2000万本以上の動画を作成しています。「Magisto」は、一般ユーザーが手軽にプロ品質の動画を生成するスマホアプリですが、11月時点で1300万ユーザを達成しています。日本でもB法人向けに安価に高品質の動画を量産するサービスとして、Open Network Lab7期デモデイで優勝した「Viibar」などが登場しています。
日本で「大型Exit」といった形での結果が出るのはまだ先かも知れませんが、2014年こそは“動画元年”になると読んでいます。
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