2013年のモバイル業界

林信行が振り返る2013年のモバイル業界--パスワード不要の未来へ

 スマートデバイスの普及が進み、あらゆるビジネスの主戦場となりつつあるモバイル領域。2013年もさまざまなニュースが世間を賑わせましたが、モバイル業界に精通するジャーナリストの皆さんはどのような点に注目したのでしょうか。今回は林信行さんに、注目したモバイルニュースや、スマートデバイス、アプリなどを聞きました。

――2013年のモバイルニュースを3つを選ぶとしたら何ですか。

  • ソフトバンクが米Sprintを買収
  • iPhoneが2機種(5s/5c)になり、NTTドコモからも発売
  • Tizen、Firefox OS、Ubuntu、Sailfish OSなど“第3のOS”の登場

――今年購入した端末で一番のお気に入りは。

  • スマートフォン「iPhone 5s」
  • タブレット「iPad Air」

――今年よく使ったサービスやアプリは。

  • 写真共有サービス「Pinterest」
  • 世界中の空き部屋やアパートを貸し借りできるサービス「Airbnb」
  • 20カ国以上で展開する高級タクシー配車サービス「UBER」
  • イベント管理・チケット販売サービス「PeaTix」
  • スマートフォン向けニュースアプリ「SmartNews」
  • ファンコミュニティプラットフォーム「Revolver」

――2013年はモバイル業界にとってどんな1年だったと考えていますか。

 iPhoneの日本発売から5年目(米国発売から6年目)を迎え、スマートフォンによる新たな流れが生まれるのではないかと思わせる1年でした。変化の兆しは、国の壁を越えたソフトバンクによる米Sprintの買収、第3のOSと呼ばれる複数のモバイルOSがほぼ同時期に登場したこと、アプリ自体の販売からアプリ内課金主体のビジネスに変わり始めたことなど、随所に見てとることができます。

 また、アップルもこうした変化を鋭敏に察したからこそ、大胆に刷新したOSや、iPhoneの2モデル化、さらにはNTTドコモやチャイナ・モバイルからのiPhone販売に乗り出したのだと思います。

 スマートフォン周りの動向でもうひとつ重要な変化は「Beyond Screen」です。これまではスマートフォンのイノベーションの多くが画面の中、つまりアプリなどのソフトで起きていましたが、2013年からは「Bluetooth Low Energy」(近距離無線通信規格)などの普及もあり、家電などスマートフォンと連携する機器も一気に増えました。

――2014年は「コレがくる」という端末やサービス、トレンドなどがあれば教えて下さい。

 2014年はコンテンツ業界とEC関連の事業が大きく動く年になりそうです。日本においても、これまでデジタルに積極的でなかったコンテンツ業界が、ついにデジタル流通に本腰を入れざるを得なくなるタイミングが近づいている気がします。また、デパートなど、従来型の小売りビジネスがECに本腰を入れ始めるのも見逃せない動きです。

 これまでECといえばPC用のウェブページでの展開が中心でしたが、2014年からはソーシャルメディアと連動する形でモバイルからの利用が増えそうです。これと並行して、リアルな店舗で商品を確認してECを使ってオーダーをしたり、ECでオーダーした商品をリアルの店舗で受け取ったりと、ECとリテールビジネスを混在する動きも活性化しそうです。その中で「iBeacon」(近距離無線通信)なども積極的に使われるかもしれません。

 端末レベルではTizenやFirefox OSなど“第3のOS”の端末がいよいよ本格的に展開する年になりそうですが、iPhoneが圧倒的に優位な状況はしばらく崩せないでしょう。逆に日本でiPhoneが有利な状況を利用して、日本のiPhoneアプリや周辺機器のメーカーが切磋琢磨し、世界へと羽ばたく大きなチャンスの年になるかもしれません。

 もうひとつ注目すべき動きはセキュリティです。2013年はiPhone 5sが指紋認証機能を搭載しましたが、2014年は恐らくこれがiPadなどにも広がるでしょう。指紋認証と「iCloudキーチェーン」(ウェブサイトのID・パスワードを自動入力してくれる機能)を組み合わせ、これがECとも連動しはじめると、iOS機器ではパスワードをほとんど入力せずに済む状況ができあがります。

 一方で、Android陣営を率いるグーグルも、2013年のはじめからパスワードに変わる認証方法の開発に積極的に取り組んでいます。もしかしたら、私たちはコンピュータの黎明期から、ずっと頼りきっていた極めてレガシーなセキュリティ技術「パスワード」にそろそろお別れを告げられるのかもしれません。ただ、恐らくこの変化はPCからではなく、持ち歩きや屋外で使うことが多いスマートデバイスから始まるでしょう。

林 信行(はやし のぶゆき)

最新のテクノロジーは21世紀の暮らしや社会にどのような変化をもたらすかを取材し、テレビやラジオ、雑誌、ネットのニュース、Twitter(@nobi)などを通して伝えるジャーナリスト。コンサルタントとして、これからの時代にふさわしいモノづくりを企業と一緒に考えたり、スタートアップ企業に海外展開やメディア戦略のアドバイスもしている。リボルバー社取締役。ifs未来研メンバー。JDPデザインアンバサダー。

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