朝日インタラクティブは12月10日、マーケティングを軸にしたビジネスイベント「CNET Japan Live 2013 ~全社員マーケター時代のビジネス戦略~」を開催した。その中のセッション「マーケティング課題を解決する『循環型O2O』とは?」では、オンラインからオフラインへの送客である「O2O」のあるべき姿が語られた。
セッションには日本初のO2O専門会社SPARKを立ち上げた、グランドデザイン&カンパニー代表取締役社長の小川和也氏、インテグレート代表取締役CEOの藤田康人氏、ワイズインテグレーション代表取締役社長の佐野耕太郎氏の3名が登壇した。SPARKは、デジタルマーケティングとモバイルに強いグランドデザインと、店頭販促に強いワイズインテグレーション、統合マーケティングに強いインテグレートの3社によるジョイントベンチャーだ。
藤田氏はまず、O2Oを従来のように「オンライン基点」で考えるのではなく、オフラインを基点に「Offline to Online to Offline」、つまりオフラインとオンラインを循環するような施策をするように考えることこそが、マーケティング課題を解決すると語る。小川氏もこれに重ねて「デジタルと店頭、そしてそれらをつなぐコンテキストが融合して、はじめて課題解決型のO2Oになる」とコメントした。
デジタルやモバイルを活用してユーザーに“仕掛け”をしたいという企業は数多く存在いる。そしてこれまでその仕掛けの目的といえば、認知やブランディングだった。しかし最近では来店誘導や購入に直結するような施策など、より課題解決型の提案が求められるようになっているという。野村総研の試算では、2017年に向けてO2O関連施策で約16兆円の消費が生まれるとされている。
ではこれまで実施されてきたO2O施策の課題はどういったことなのだろうか。小川氏は「バラマキ型ディスカウントクーポン」と例を挙げる。
小川氏の言うバラマキ型ディスカウントクーポンとは、ネット上でクーポンを無料配布するというものだ。これにより多くの消費者にクーポンを利用してもらうことが可能になるが、一方ではクーポンがなくとも商品を購入したであろう消費者にもクーポンを配ることになってしまう。さらにはクーポンがないと商品を買わない消費者や、わずかなディスカウントでは買わないような消費者――「クーポンジャンキー」――を生み出すことにつながる恐れがあると指摘する。
こういった自体に陥らないためにも、小川氏は「クーポン以外の来店目的の設計やクーポンの配布方法を最適化していくことが重要」だと説く。
ここで話題は前述の“オフライン起点”のO2Oに移る。店頭や店頭の近くにいる消費者は、商品を購入するまでの物理的なハードルも心理的なハードルも下がっている。だからこそO2Oではオフラインを上手く活用することが重要だと小川氏は語る。
Googleが実施した「How Mobile Is Transforming the Shopping Experience in Stores(店舗におけるショッピング経験において、モバイルはどのように影響するのか)」の調査結果が紹介された。この調査では、店舗で買い物をする顧客の82%は、モバイルサーチで購入を決めていること、「店舗内で、購入時にスマートフォンを利用した経験のある顧客の割合」については、84%の顧客が「ある」と回答していることなどが報告されている。この結果からも、オフラインにアプローチすることの重要さが伺える。
店頭基点の例として、ユーザー数が400万人ほどのアメリカで最大規模のO2Oアプリ「ショップキック」の例を紹介した。ユーザーは同アプリをダウンロードし、そのアプリを起動したまま店舗に入ると、店舗側はショップキックの用意した機器で「信号」を検出し、アプリ利用者の入店を自動で察知して、利用者にクーポンを提供することができる。
「店頭にいるお客さんに対して、ディスカウント要素を提供しながら、元々は買う予定のなかった消費者に衝動買いさせたり、買うか買わないかのボーダーライン上にいる消費者の背中を押すことが可能になる。これも店頭基点の施策」だと小川氏は語った。
「O2Oはこれまで一過性のキャンペーン型のものが多かった。O2Oは循環する仕組み、CRMに近いような仕組みを作らなければ、絶えず何かキャンペーンを用意しなくてはならなくなる。なんらかの仕組みを設け、CRM型のO2O、O2O2Oと循環する仕組みを構築していくことを目指す必要がある」と小川氏。
SPARKでは、これまでオンラインが起点になっているケースが多かったO2Oを、オフライン起点の循環型O2Oとしていくことを目指している。その循環の中に、ゲーミフィケーション、エンゲージメントを介在させることで、消費者はオンラインとオフラインを循環できると考えているという。
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