ユニクロではこれら一連のコンテンツを「UNIQLO LIFE TOOLS」と呼んでおり、UNIQLO APPからもアクセスできるようにしている。しかし、いずれもファッションとは直接関係のないコンテンツのようにも思える。同社では、ただ着るためだけの服を提供するのではなく、“常に着る人の日常生活に寄り添い、豊かにする服”を意味するコンセプト「LifeWear」に基づいて商品開発を進めており、このLifeWearの概念をデジタルに落とし込んだものがUNIQLO LIFE TOOLSなのだという。
それぞれのコンテンツにはユニクロのECサイトへの導線も設けられており、新たな顧客の獲得にもつながっているそうだ。たとえば、UNIQLO HairDoは紹介したヘアアレンジに合わせた服のコーディネートを紹介し、ユーザーは気に入ればそのまま購入できる。UNIQLO RECIPEでもシェフがレシピや盛りつけの色合いにマッチした服を着て登場し、同様にアプリ上から服を買うことができる。
実はこれらコンテンツには、ストーリー仕立てにするなど日常の“シーン”にそったコーディネートを提案することで、自然な形で利用者の購入意欲を高める狙いが込められている。「ここ1年ほどで商品情報や価格の訴求から、デートやスポーツなど、シーンを提案する見せ方にシフトした」(デジタルチーム担当者)。この考えは、たとえば「暖房器具とヒートテック」など“体を暖める”という共通点がある商品をセットにして販売する、ビックカメラとの共同店舗「ビックロ」(新宿)にも通じるものがある。
UNIQLO LIFE TOOLSは海外でも利用されており、まだユニクロの店舗がない国などでも多くのユーザーを抱えているという。たとえば、レシピアプリUNIQLO RECIPEは、iPad向けに10月に公開したばかりだが、すでに世界約80カ国でダウンロードされているという。クリエイティビティでありながら企業のブランディングツールとしての側面を押さえたことで、結果的に海外での同社のブランド力を高める役割を果たしているようだ。
そのほかにも、ユニクロ銀座店にオープンした「ウルトラライトダウンスペシャルストア」に、国内の大手小売チェーンとして初めてモバイル決済サービス「Square(スクエア)」を導入した。「店舗によってはレジに長い行列がでぎてお待たせすることがある。そんな時にスタッフが手元の端末で決済できるのは大きい」(同)。今後は試験導入の状況を見つつ、通常の店舗への導入も検討していくという。
老舗のアパレル企業でありながら、先進的なウェブ施策を次々と展開してきたユニクロ。その一方で、スマートフォンの普及にともない、ファッション領域への新規事業者の参入が相次いでいる。この点については「ECサービスは増えているが、それぞれで売られている商品のターゲットやコンセプトが異なるため接点は意外に少ない」と、直接の競合にはあたらないと見ている。引き続き、ユニクロのコンセプトであるLifeWearに沿った商品開発やデジタル戦略を貫くことで、競争が激化するファッション領域において差別化を図りたい考えだ。
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