いい仕事をするためにできることはすべてやる。一切の妥協は許さない。それは自分に対しても、一緒に仕事をする仲間に対しても同じこと。映画監督の大友啓史氏の場合、いい仕事とは映画やドラマといった作品を作ることだが、本書には、これまでの作品に対するさまざまな思いが、あふれ出んばかりに綴られている。
触ったら火傷しそうなほど熱く燃える情熱と、作品の細部にまでわたるこだわり、仲間を信じる純粋な気持ち、ともすれば誤解されそうな「喧嘩」腰も、本気で取り組んでいる証だ。
「ハゲタカ」「白州次郎」「龍馬伝」「るろうに剣心」「プラチナデータ」といったそうそうたる作品群の裏話的な部分ももちろん興味深い。だが、NHKという大企業で仕事に取り組んでいたときの気持ち、ハリウッドへの留学によって起きた心の変化、NHKを「脱藩」すると決めたときの心境など、心の機微が分かることも面白い。それは業界や職種が違ったとしても、誰でも人生の中で何度かは感じるであろうことだからだ。
また、「監督」という立場の人間がすべきこと、チームをまとめるリーダーとして大勢の仲間を統率するのに必要なことは、実際に人の上に立つ仕事をしている人には非常に参考になるはずだ。誰にも相談できないような立場の人にこそ、読んで欲しい1冊でもある。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」