ガートナージャパンは4月24日~26日、東京・港区で「ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2013」を開催した。4月25日の基調講演に登壇したガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 ガートナー フェローのスティーブ・プレンティス氏は、「今後5年間でITに影響を与える最重要トレンドとテクノロジ」と題し、今後5年間に起こりうる最重要トレンドの予想を語った。独自の視点で興味深い分析を列挙し、その影響や問題点、それらに対する心構えなどを多角的に論じた。
プレンティス氏は10項目にわたり、知っておくべきトレンドを挙げたが、その最初となったのが、「2014年までに、SaaS運用管理ツールを利用する組織の30%が、サービスレベルの低さを理由にオンプレミスに転換する」というものだ。さらに「2014年までに、市場の統合によりITサービスベンダーのトップ100社中20%が市場から姿を消す」という。
このような事態となる背景には、ITの複雑性の増大が顕著になり、リアルタイム性への要求がいっそう高くなることにより「多くの組織が、重要なシステムは社内に置きなおそうと考えるようになる」(プレンティス氏)からだ。
次に、ソフトウェアによりネットワークを制御するSDN(Software Defined Networking)の重要性を強調。「ネットワーク構成の変更などに要する時間は数週間から数分に短縮され、柔軟性がいっそう高まることが期待される」。これもまた「ITがより良いサービスを早く展開することを望まれている」ことが要因だ。ただ、「新たなスキルが必要になる」ことから、従来のネットワーク技術者が居場所を失い「組織が破壊される恐れも否めない」とも話す。
ビッグデータも重要なテーマだ。プレンティス氏は「2015年までに、ビッグデータ需要により創出される雇用機会は、グローバル1000企業において100万件に上るが、採用につながるのは3分の1のみにとどまる」とする。理由は「新しい雇用機会があっても、必要とされるスキルがないと意味がない」ことだ。「ビッグデータを解析するには、技術より解釈が重要になる。巨大なデータをビジネスにいかに活かしていくか。解釈する能力が必要なのだが、これまでは、IT部門にそのようなスキルは求められていなかった。企業が、今後欠かせないスキルをもった人材を見つけるのは困難だろう」と、プレンティス氏は指摘する。
一方、日々膨張を続けるデータに対し、保存する容量、能力の維持は容易ではない。さらに、さまざまな組織は、多数の個人情報を手にする機会が増える。それは、個人に、よりきめ細かいサービスを提供することを可能にするが、プレンティス氏は「組織が個人情報を持ちすぎるのは危険だ。人々には個人情報を保護される権利がある。どのように保護していくのか。いまや、きわどい境目にある」と警告する。
クラウドは不可欠だが、「すべてをクラウド化するのは現実的ではなく、プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドサービスが適切である」という。組織内業務を再点検し、クラウドに移行すべきものとそうでないものを見極めることが重要になる。
「企業の90%はWindows 8の大規模展開を回避する」との見解も、「知っておくべきトレンド」として紹介された。なぜなら「Windows 8は、タブレット端末には適しているが、デスクトップ機で業務に従事する場合、タッチ操作は必要ない。今まで通りのホームファクターが適した用途もあれば、Windows 8が適合する用途もある」からだ。プレンティス氏は「どの従業員に何が必要なのかということをじっくり見極めるべき」としている。
インターネットの進化はさらに加速し「あらゆるモノがインターネットに接続され」、たとえば走行している、あるいは停止している自動車の数、ある場所にいる人の数など、状態のデータがつなげられる。そして、いわば、機器同士が会話するようになる。これらのようなデータやモノの接続が新たな価値を創出する。プレンティス氏は「ここに、インターネットがもたらす次の革新がある」とする。
プレンティス氏は、これらの大変革を控え、ガートナーの提言として、ソフトウェアネットワーク時代の到来に対し、スキルのアップデートを今すぐ開始するという。ハイブリッドクラウドサービスは、ニーズ、価格、価値、実行能力に基づいて評価する。オペレーションの複雑性が高まることについては、標準化されたプラットフォームとプロセスによって、複雑さを低減化する--などの点を挙げた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?