和太鼓との親和性の高さで一定の支持を集めた太鼓の達人だが、その入力数の少なさに課題もあった。たとえば楽曲選びのシーン。現在のゲームセンター用のゲーム機には1台につき300曲程度ほど収録されているが、当初の30曲程度だったころでも“ふちを叩いて選択肢をスクロールする”という操作にはわずらわしさがなかったわけではない。
それでも開発陣は“操作は和太鼓のみで完結”にこだわってきた。「バチをおいてボタン操作、という動作はユーザーに手間を感じさせてしまう。今後、どのような進化を遂げたとしても、和太鼓で完結という点にはこだわっていきたい」(笹岡氏)。なお、現在はジャンル選択や「戻る」メニューの配置、あるいはバナパスポート対応(認証カードにあらかじめ登録したお気に入り曲を表示できる)などによって、選択操作の負担はかなり軽減されてきている。
マルチプラットフォームで一定の人気を集める太鼓の達人だが、それらすべてに共通する特長のひとつに“体感の心地よさ”がある。和太鼓を模したゲームセンターのゲーム機や家庭用ゲームはもちろん、携帯ゲーム機やスマートフォンのディスプレイをタッチしても、太鼓を叩いているような不思議な実感が得られるのだ。
「ユーザーの体の動きをハードウェア・ソフトウェアが直観的に受け止められるよう開発している」(中館氏)ことからくる即応性、そこに映像・音声エフェクトを交えた再現力により、タッチペンや指でガラス板をタッチしても太鼓をたたく雰囲気が損なわれない。特にiPhoneアプリにおいてその現象は顕著で、叩いた際には本来ないはずの端末からの振動が返ってきているような錯覚すら起こす。これまでの600万ダウンロードという数字もうなずける話だ。
今後については「スマートフォンのような新しいデバイスは今後も出てくる可能性があり、それらに対しても『太鼓の達人』を提供していきたい」(中館氏)としているが、「反応速度が処理能力的に十分でないデバイスについては慎重に検討する」(同)と、ユーザー満足度を第一に考える徹底したこだわりがあるようだ。
入力箇所の少なさと反応の良さ、この優れたユーザーインターフェースによってゲーム業界に新たな風をもたらした太鼓の達人。ゲームの習熟度にかかわらず、子どもから大人まで誰でも楽しめる環境を実現したUIは、使いやすさを追求すべきさまざまな分野において参考になりえるかもしれない。
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