ソフトバンクモバイルは3月21日、子会社化したイー・アクセスのLTEネットワークが、ソフトバンクのiPhone 5やiPad miniなどで利用可能になる「ダブルLTE」の提供を開始した。同日より、両社の基地局の混雑状況をリアルタイムに共有し、より空いている基地局へと端末を接続する。まずは都市部から対応し、12月には全国まで拡大する予定。
ダブルLTEによって、ソフトバンクモバイルが2.1GHz帯で展開するFDD-LTEのネットワークに加えて、イー・アクセスが1.7GHz帯で展開するFDD-LTEのネットワークを、SoftBank 4G LTEに対応するスマートフォンやタブレットで利用できるようになる。帯域が増えることで、端末でアンテナバーが立っているのにパケットが流れない、いわゆる“パケ詰まり”も防げるとしている。
同日の記者発表会で登壇したソフトバンク代表の孫正義氏は、パケ詰まりを高速道路の渋滞に例えて「混んでいる道路(他社)はパケ詰まり状態になるが、もう片方(ソフトバンク)は使える道路が2車線に増えて、一気に渋滞が解消される」と、ダブルLTEによる優位性をアピールする。
iPhone 5、iPad mini、iPad Retinaディスプレイモデルはすでに1.7GHz帯に対応しているため、ダブルLTEの開始と同時に適用される。Android端末については今後販売するモデルに1.7GHz帯に対応したチップを搭載していく。なお、今夏以降にはイー・アクセスのEMOBILE LTE対応スマートフォンを、ソフトバンクの3Gサービスエリアでも利用可能にするとしている。
同日の会見では、ソフトバンクのネットワークへの取り組みについても説明された。孫氏は、2008年4月から2013年3月の約5年間で、同社のモバイルデータトラフィックが60倍に増えた一方で、音声通話は1.3倍に留まったと説明。特に都市部のデータトラフィックの増加が顕著で東名阪では100倍近くにおよぶことから、今後はますますトラフィックへの対応が重要になると強調する。
同社では急増するトラフィックへの対策として、2012年7月25日にサービスを開始した900MHz帯(プラチナバンド)の基地局の建設を大幅に前倒し。2013年3月目標だった1万6000局を1月に達成し、3月末には約2万局まで拡大する予定だ。
また、基地局の小セル化によってトラフィックの分散にも成功していると語り、AXGP基地局や公衆Wi-Fiなどによってさらなる小セル化を実現しているとした。「これは一朝一夕でできるものではない。我々にとってはウィルコムの買収が一番大きくプラスに働いている。(ウィルコムは)早くからいい場所にたくさんの基地局を持っている。それに併設したり作り直すなどして、何年も小セル化を進めてきた」(孫氏)。さらに同社は、世界で初めてフルIPバックボーンの構築にも成功している。
孫氏はこれらの取り組みよって、全国のスマートフォンの音声接続率とプラチナバンド対応スマートフォンのパケット接続率で、NTTドコモ、KDDIの数値を上回ったと説明。「ソフトバンクの電波は悪いというイメージが定着しているが、これはユーザーではなく長年解決できていなかった我々が悪い。それでも歯を食いしばって頑張った結果、内容が変わってきた」と喜びを語る。
また、NTTドコモやKDDIが立て続けに起こした通信障害を例に挙げ「我々はスマホ時代のネットワークとして、プラチナバンド、小セル化、フルIPのバックボーンを作った。だから、5年で60倍に増えたデータトラフィックに対し、一度も総務大臣に報告する基準を超える重大事故を起こしていない。それは偶然にできたものではなく必然だ」と胸を張った。
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