林智彦の電子書籍days

書籍にまつわる都市伝説の真相--委託販売、再販制度は日本だけなのか(2) - (page 3)

林 智彦(朝日新聞社デジタル本部)2013年03月21日 15時21分

 ここにも見られるように、同じ「本の価格を固定する」制度といっても、すべての国が日本と同じような制度を導入しているわけではない。

 日本の再販制度は、法制化されたものだが、法律上の手当をせず(戦前の日本のように)業界内の協定で取り決めている国もある。また価格固定についても、売り出す価格そのものではなく、割引は許容しながらもその最低価格を定めたり、定価販売の期限を切る(時限再販)など、数値や時間に幅を持たせている場合がある。法制化されている場合でも、日本のようにそれ以外の契約ができる(つまり罰則はない)国と、フランスのように、違反者には罰金刑が課される国がある。

 しかし、いずれにしろ、本に「定価」を定めている国は、世界的にみて少ないわけではない、ということだけは言える。

 また米国にしても、いつでも、どの本でも安売りをしているわけではない。前出のReluctant Capitalistsによると、

  • そもそも、安売り全般に対する反感が、20世紀前半においては米国社会に根強かった。書籍は安売りになじまないという考えもあった
  • 出版社も、(安売りをしていない)書店からの圧力に応え、小売店に最低価格を守らせる契約を結ぶよう努めた。
  • チェーン店が大々的に安売りをしだしたのは70年代からだが、当初はチェーン店自体も抵抗していた
  • そのチェーン店も、21世紀の始めはほとんどの本を定価販売していた

 というわけで、世界でも、米国でも書籍の定価販売はレアケースというわけではない。

 ところが、こうした見方は日本においては少数派のようだ。永江朗氏は、2009年の対談で、以下のように述べている。

「別に諸外国が上手くいっているとは言わないけど、再販制のある国って、先進国では珍しいくらいになっている」

 長くなってしまった。日本においては、電子書籍に関しての本や論文だけでなく、広く書籍市場、出版市場について論じた文献のほとんどが、わが国の書籍市場の特殊性として「委託販売」と「再販制度」を挙げている。そして、アメリカなど、諸外国との対比で、いかに日本の書籍流通が非効率で不合理であるかを強調する。

次回に続く。

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