ファッション、ソーシャル、ECのクロスポイントを狙う日本人起業家--Material Wrld運営の矢野氏 - (page 2)

個性とエモーション、そして価値と価格の情報化

 Material Wrldは現在サーチなどを用意せず、人が作るクローゼット単位で楽しんでもらうスタイルを取っている。

 誰が、どんなアイテムを「気に入って」購入してクローゼットに収め、身につけて楽しんでいるのか、というリアルなファッションライフが透けて見えるところにも面白さがある。セレブリティのクローゼットを見てみたいという好奇心もあれば、センスの良いクローゼットを公開するファッションブロガーに注目が集まることもある。

 そしてこれは、「センス」や「持っているアイテム」といった、これまで情報化されていなかったことが、明らかになっていくプロセスでもある。また、「価値と価格」についても、センス、持っている人が誰かと言うこと、そしてそのアイテムにかける情熱によって変わってくると言う。

 「たとえばハイファッションの場合、同じブランドでもデザイナーが変わると、過去のデザイナーの服の価値がむしろ上がることもあります。あるいは、非常にセンスが評価されている人が長くお気に入りのアイテムとして使ったものは、すぐに手放した新品に近いものに比べて、価値を帯びるかも知れません。ユーズドのマーケットも、新しければ高い、古ければ安い、という単純な値動きではないし、個人やセンスが可視化されると、これらも価格変動に影響します」

 価格設定は現在は売り手が決めているが、今後はマーケットのレートなどから推奨する価格を教えられるようにしたいとしているが、「人ありき」のMaterial Wrldで、どのような価値付けがなされていくのか、非常に興味深いところだ。

  • お気に入りのアイテムをワンタッチで販売できる。その際Likeを付けた人に通知が行く

ニューヨークという「場」を生かす

 人のセンスを表現したり、楽しめるようにすることをコマースのエンジンに変えていこうとしているMaterial Wrld。参加する「人」にフォーカスを当てたコンテンツにも力を入れている。たとえばファッションブロガーを特集するコンテンツを提供して、ブロガーたちにもクローゼットを公開してもらうというコラボレーションをコンテンツ化している。しかしこの活動は、ファッション好きな人、ファッション業界の人に広げていく事にもつながる。

 また、これまでユーズドのマーケットプレイスはファッションブランドとコラボレーションできていなかったが、新品を購入した人からプラットホームに情報を提供するという点で、ブランドとの関係作りも可能だという。ソーシャルメディア上の「グル」と呼ばれる情報の拠点になっているユーザーと積極的に手を組んできたファッションブランド。矢野氏はこの「ロジック」を知っており、その強みを生かせる場面も大きいだろう。

 そして何より、こうしたファッションやメディアの企業や、これらのビジネスに関わっている人々が集まり、世界中から注目されている街「ニューヨーク」という地の利を生かすことも大きな後押しになる。アイデア、ロジック、経験、そして地の利をフルに導入しながら、ファッション好きのための世界作りの1つ目のボタンをつけたところだ。

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