大企業とベンチャーの橋渡しをする--トーマツ子会社が支援を本格化

岩本有平 (編集部)2013年01月16日 11時44分

 有限責任監査法人トーマツのグループ会社であるトーマツベンチャーサポート(ベンチャーサポート)。2006年から休眠していた同社だが、2010年に事業を再開。国内スタートアップ支援に積極的な姿勢を見せている。

 監査法人と言えば通常、上場申請期の2期前から監査を行うが、実際そこで接点を持てるのは、上場を目指す体力を持つほどに成長したベンチャーだ。だがそれでは創業期のベンチャー、いわゆるスタートアップにはリーチできない。そこにベンチャーサポートが支援をすることで、最終的には新規の上場企業を増やすのが同社の目指すところだという。

 ベンチャーサポートでは、販路の拡大、メディアへのPR支援、資本政策の支援、税理士や弁護士の紹介、海外進出の支援、インターンの紹介と、大きく6つの支援施策を基本無償で提供するという。中でも重視するのは大企業との協業やアライアンスによる販路の拡大だ。

 同社事業開発部長の斎藤祐馬氏は、トーマツが監査法人やコンサルティング会社などグループ全体で大企業とのネットワークを持つと説明する。これらの企業に対して自社が支援するスタートアップを紹介し、協業の道を模索するのだという。「大企業は鎖国したいわけではない。一方でいきなりベンチャーと組むと文化が違いすぎる。我々が間に入ることで、その橋渡しをしている」(斎藤氏)。


トーマツベンチャーサポート事業開発部長の斎藤祐馬氏

 だが、ベンチャーサポートという“通訳”を介したところで実際に協業するのは簡単なことではない。そこで、大企業に新規事業の創出支援といった形でコンサルティングを請け負い、共同プロジェクトという形で協業の道を模索するという。すでにNTTレゾナントの社員とスタートアップが共同でサービスを開発するイベント「Challengers」などが生まれており、2012年12月にはこのメニューを正式に商品化している。また2012年には、インキュベーターのサムライインキュベートとともに地方都市でのイベントなども展開している。「地域にもよるが、まだまだ地方の閉塞感は強い。(企業の)掘り起こしから進めている。2013年にはすべての都道府県でイベントを開催したい」(斎藤氏)

 今後は大企業のコンサルティングやイベントなどを通じて、独立採算で運用できる体制作りを進める。直近では、CFO育成に向けた全4回のセミナーを開催する。「スタートアップからCFOを紹介して欲しいと言われるが、最適な人材は多くない。一方で会計士が余っているといった話がある。だが会計士は会計処理ができても事業への理解が不足していたり、資金調達の経験がなかったりするケースがほとんど。起業家とのネットワークにも乏しい。まずは座学や交流イベントを通じて、ダイレクトに起業家とつながれれば」(斎藤氏)

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