commは今後どのような機能を追加する予定なのか。しばらくは音声通話、スタンプ、テキストコミュニケーションのUI改善など基本機能の改善に集中していくという。
その中で、現在足りていない部分として、画像を使ったコミュニケーションを挙げた。今後注力する分野だという。
「実は、コミュニケーションの時間も、やり取りの数も、音声通話よりもテキストメッセージの方が多いんですよ。海外のアプリでもどちらかしかやっていないものが多い。でも僕らは、コミュニケーション手段の全てが1つに集約されていることが大事です。写真も大切なコミュニケーションなので、ここは力を入れていきたい」(長田氏)
写真と言えば、先行するLINE cameraが人気だ。ただ、commの目指すところとはコンセプトが異なるのだという。山敷氏は、LINE cameraは画像加工ソフトとして非常に完成度が高いと評価する一方、commは写真をコミュニケーションツールととらえ、ソーシャルアイデンティティの確立とソーシャルグラフの活性化につなげることを志向している。現在でも、commは写真へのタグ付け機能が実装されており、タグ付けした相手へのプッシュ通知やプロフィールページへの表示などコミュニケーションの促進を図るようデザインされている。
全世界の共通コミュニケーションインフラを目指しての取り組みだが「千里の道も一歩から」ということで、まずは2012年でのユーザー数1000万人を目指していくという。
具体的な数値は公開できないが「現時点での推移はまずまず」であるとのことだ。コストの高いテレビCMも、認知獲得には大きな役割を果たしているようだ。アプリのマーケティングにどんなケースでどの程度マスメディアやOOH(屋外広告や交通広告といった家庭ではない場所で接触するメディアによる広告)が有効なのか、貴重なケーススタディとして来年度の成果に期待したい。
グローバル展開はまだまだこれからということだが、今年度中には何かしら仕掛ける意向があるようだ。Mobageとの相乗効果やngmoco(米国に本拠地を置くDeNAのモバイルゲーム開発子会社)といった拠点を考えると欧米で何かありそうな気もするし、スマホが普及している国であればアジアでデファクトスタンダードを取りに行くかもしれない。
国内では、先行するLINEが圧倒的なシェアを得ている状況だ。コミュニケーションツールのビジネスが三つ巴、四つ巴になる可能性について尋ねたところ、個人的見解としながらも次のような回答をもらった。
「winner take all (一人の勝者が市場を全て持っていく) になるのでは」(長田氏)。その後こう付け加えるのも忘れなかった。
「ただ、勝者の入れ替わりが激しくなるので、改善し続けなければ長くは続かない」
メッセージングサービスはLINE、commの他にもKAKAO TALK、デコリンクなど選択肢は多い。GREEもオランダのeBuddyとの関係を深めている。今後各社がどう動くかはわからないものの、LINEとcommの方向性は違うようだ。
それに対するDeNAの強みは意思決定の早さとイノベーションを促す体制にあるとチームのメンバーはいう。
「イノベーションのジレンマって、今あるアセットのみに依存して何かをやろうとするから直面すると思うんですよ。われわれにはゼロベースで考える文化があるので、そういうことをあまり感じません」(長田氏)
「社長の守安の影響が大きいと感じています。今回もリリースしてわずか2日目、ユーザー数の推移を見て10億円規模の広告投資と50人の追加人員の投入を決めました。彼の意思決定は早いだけでなく、複雑なものの中からロジックを見出して答えを出す。だからいつもシンプルなんです。常にゴールが見えているからできることです」(山敷氏)
commの開発の中心はいずれも入社2~3年目の若手社員。大きな野心と高い能力を持った人間にとって天国のような職場なのかもしれない。
いずれにせよ、モバイルコミュニケーションという大きなカテゴリーが、次の大きなビジネスのトレンドだ。手のひらという、史上最も顧客に近いポジションを得たプラットフォームに、ありとあらゆる企業が投資をするだろう。
そんな中、ユーザーは一体何を基準にどのようなソリューションを選ぶのか。顧客接点を求める多くのニーズに対し、それらを集約・統率するプラットフォームはどのようなコミュニケーションのあり方を提案するのか。非常に多くの可能性を秘めた分野であるだけに、引き続き注目していきたい。
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