復活のシナリオが固まらないシャープ

 シャープは、2012年度の通期業績見通しの下方修正を発表。8月公表値に比べて、売上高は400億円減の2兆4600億円、営業損失は550億円減のマイナス1550億円の赤字、経常損失は700億円減のマイナス2100億円の赤字、当期純損失は2000億円減のマイナス4500億円の赤字とした。8月に続く2度目の下方修正となる。

 また、2012年度上期(2012年4〜9月)連結業績は、売上高が前年同期比16.0%減の1兆1041億円、営業損失は前年同期の335億円の黒字からマイナス1688億円の赤字に転落。経常損失は208億円の黒字からマイナス1972億円の赤字となった。当期純損失はマイナス398億円の赤字から、マイナス3875億円の赤字。

 部門別では、エレクトロニクス機器の売上高が27.1%減の6328億円、営業利益が93.2%減の31億円。電子部品は、売上高が7.7%減の5870億円、営業損失が1560億円減のマイナス1516億円の赤字となった。

シャープの奥田隆司社長
シャープの奥田隆司社長

 シャープの奥田隆司社長は、「上期の売上高は前回公表値を達成。営業利益、経常利益、当期純利益は下回ったが、事業構造改革の追加計上を除いた実質ベースでは、ほぼ計画通りとなった」としたものの、「多額の追加損失を計上し、株主資本を大きく毀損することになったこと、年間業績の下方修正を再び行った点は、改めてお詫びする。事業構造改革を加速し、今後の収益確保を確実にすることが、現下の重要課題。第4四半期および下期トータルでの営業黒字化を目指す。また、2013年度の最終利益の黒字化を必達目標として、全社一丸となって取り組む」とした。

 同社では、上期に大型液晶の事業構造改革にともなう棚卸資産評価損をはじめとする構造改革追加対策費用として1754億円を計上。これが最終赤字の大幅な下方修正に直結したと説明した。

 今年8月に発表した4000億円の経営改善対策では、大型液晶事業のオフバランス化や在庫の適正化、固定資産の圧縮、設備投資の圧縮などにより、計画の69%にあたる2766億円を上期に達成していることを示した。

 しかし、このなかに含まれている鴻海グループへの第三者割当増資の669億円については、「協議は継続しており、大型液晶や携帯電話などでの協業は進展している。協議のスピード感にも問題はない」などとした。

 一方、今後の取り組みについては、目指すべき企業像の明確化、主要事業分野における構造改革、コスト構造改革、資金の安定化、実行体制強化の5点を重点方針としながらも、「新たな事業構造改革テーマについても引き続き検討を進めており、中期経営計画を含めて、本事業年度内に改めて方針を説明する」としている。

 シャープの奥田隆司社長は、「シャープは多くの技術を持っている会社」としながらも、「だが、技術の価値や資産をうまく回転させて収益に結びつけることができる、バイタリティのある企業にはなっていない。決めたことをやり遂げ、問題があればスビード感をもって軌道修正していく会社にならなくてはいけない」と語ったほか、「シャープの成長ドライバーはIGZO。これはシャープのオンリーワン技術であり、高精細化とタッチセンサー機能、低消費電力化といった点で高い評価を得ている。モバイルの流れにフィットした技術」などと位置づけた。

 シャープの通期業績見通しは、下方修正後は前年度の3760億円の過去最大の赤字をさらに上回る最終赤字となる。

 決算短針のなかには「継続企業の前提に関する重要事象等」と表記。そのなかで「前連結会計年度に続き多額の営業損失・四半期純損失を計上し、重要な営業キャッシュフローのマイナスとなりました。こうした状況により、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在している」と明記した。これは同社としては初めてのことだという。

 復活に向けた原資と見込まれる鴻海グループからの出資が遅れており、来年3月までという払い込み期限までの出資を懸念する声もある。

 シャープの復活に向けたシナリオはなかなか固まらない。

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