iPhone 5とiOS 6が登場し、日本のスマートフォン市場でもiPhone 5に対する注目が高まっている。情報量や充実度が足りないとされる地図は、Appleの謝罪から、App Storeで「地図アプリ」のコーナーを用意し、代替アプリを紹介するなどの対策がとられている。
ではここで、AppleがApp Storeの中に「地図アプリ」のセクションを作らなかったら、皆さんはどのように地図アプリを発見しただろう?日本はアプリ紹介サイトが充実しており、Appleが対応する以前から代替となる地図アプリの情報を提供してきた。あるいは友人から、SafariでGoogleマップを開いてブックマークすればよい、と教えてもらった人もいるだろう。
そういったアプリ紹介サイトを読んでいなかったり、詳しい友人がいなかったらとしたら?App Storeの中を探すしかないのだが、iOS 6になってApp Storeのデザインは大きく変更されている。これまでであれば、アプリのカテゴリにすぐにアクセスでき、そのランキングを一望でき、人気のあるアプリや評価の高いアプリを発見できていたはずだ。
柴田尚樹氏は、シリコンバレーに渡り、App Groovesを起業した日本人起業家だ。これまで、アプリやiPhone向けアプリのレコメンデーションエンジンを開発し、現在は「SearchMan」という開発者向けのApp Store分析ツールを提供している。柴田氏が一貫して取り組んでいるのは、「自分が欲しい、使いたいというアプリをApp Storeから発見しにくい」という問題だ。
「すでにApp Storeには70万本のアプリがありますが、せっかく開発者がよいアプリを作っても、ユーザーに見つけ出してもらうのは大変です。少なくとも、App Storeだけで発見するのは難しく、外部のサイトに頼るという不健全な状態が続いていると言えるでしょう」(柴田氏)
もちろん開発者からすれば、外部のサイトなどを活用して宣伝をすることができるのであれば、その手段を使えばいい。しかしユーザーはどうだろう。iPhone向けのアプリを見つけるときに、わざわざGoogle検索をしたり、アプリ紹介サイトの過去のアーカイブを探したりするよりは、App Store内で完結した方がシンプルなはずだ。
ここに来て、iOS 6でApp Store自体のデザイン変更がなされた点で、ユーザー体験が大きく変わってしまった。
まず、これまでアプリを探すときに参考にしていたカテゴリは1階層下の画面に追いやられ、手早くアクセスできなくなった。これにより、すぐに見られるランキングは総合のランキングが中心となってしまい、カテゴリ内でトップを取ればダウンロード数が増やせる、と言うロジックは弱まってしまったことを意味する。
また自分が持っているアプリなどからおすすめアプリを紹介する「ジーニアス」がメニュー中央に配置されたが、少なくとも柴田氏も筆者も、ジーニアスからよいアプリを発見してダウンロードした経験はまだない。さらに、カテゴリの画面での変化についても、柴田氏は次のように指摘する。
「これまでのApp Storeでは、カテゴリのランキングは縦にアプリが並び、一覧性が高く、25件でも50件でも見ていくことが容易でした。しかし新しいApp Storeでは、最初のチャートの画面で、アプリアイコンを横にめくっていくインターフェイスに変更されました。これでは25件どころか、3~5枚くらいでめくるのに飽きてしまいます」(柴田氏)
この変更には、Appleからの「カテゴリ内のランキング不正を許さない」に対する意志が感じられる、と柴田氏は指摘する。
iOS 6の開発者向けプレビューが出されてから、フォーラムを見ていても、新しいApp Storeのデザインは不評だった。しかしAppleはその不評を聞かず、現在の一覧性の低いデザインを採用したままiOS 6を正式リリースした。
2011年にAppleはアプリ内で他のアプリのダウンロードをおすすめするリワード広告を閉め出すようになった。またApp Store内でランキングを上げるためのダウンロード数稼ぎは許さないというエコシステムの姿勢を表していると見ることができる。
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