連載の第6回はアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)でコミュニケーションデザインを担当させていただいている安藤大からお届けさせていただきます。どうぞおつきあいください。
一昔前まで、デジタルプロモーションといえば、いわゆるウェブサイトでのキャンペーンを指していた時代が確かにあった。ところがここ数年、その感覚は急速に過去のものになりつつある。今回はソーシャルメディアの話をはじめる前に、日進月歩で変化しているデジタルプロモーションの変化を、象徴的な事例から追ってみよう。
例えば「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」の2011年サイバー部門グランプリを獲得した「The Wildness Downtown」というウェブサイトがある。
これは、GoogleがChromeブラウザのプロモーションのために作った、HTML5という技術で再生される風変わりなPVを体験出来るサイトだ。未体験の方はとても面白い仕組みなので、ぜひ試してみるといいだろう。インタラクティブな仕組みとテクニカルな発想が生んだ素晴らしいウェブサイトだ。
そのたった1年後の2012年、同じサイバー部門のグランプリを獲ったのはNIKEの「FuelBand」というリストバンドだった。
一言で言えば「一日中着け続ける超高機能歩数計」だ。これをつければ、ビジネスマンが通勤時にする階段の登り降りも、主婦が夕食の支度する動作も、全ての行動はFuelBandに運動として捉えられ記録される。
グランプリに、NIKEの新商品が選ばれたのには訳がある。FuelBandはただの商品ではなく「日常をスポーツ化する」ためのデジタルプロモーションなのだ。FuelBandはスポーツメーカーであるNIKEの商域を、スポーツ中という限られた時間から生活全てに拡大し、NIKE的な世界を作っていくためのアイデアなのである。
デジタルプロモーションが、リアルな世界に向けて、どんどん拡大している象徴的な出来事だと言えるだろう。このようなリアルとデジタルの融合は、ソーシャルメディアにも影響を及ぼしている。
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