【第6回】リアルとソーシャルメディアの融合 - (page 2)

安藤大(アジャイルメディア・ネットワーク/コミュニケーションデザイナー)2012年09月07日 08時00分

リアルとソーシャルメディアがつながる3つのタイプ

 ソーシャルメディアは、通常のデジタルメディアに比べ「友人」や「同好の仲間」など、人間がもともと持っているつながりをベースに成り立っている。そのため、リアルに融合しやすいのはむしろ当たり前かもしれない。

 そこで今回は、リアルとソーシャルメディアがつながる際のパターンを3つのタイプに分け、ぞれぞれの事例を見ることでソーシャルメディアを活用した企画を考える際のヒントを探してみようと思う。

タイプは以下の3つだ。

  • ソーシャルメディアからリアルパターン
  • リアルからソーシャルメディアパターン
  • リアルとソーシャルメディア双方向パターン
では、一つずつ追っていこう。

ソーシャルメディアからリアルパターン

 これはソーシャルメディア上のデジタルデータを、実際のリアルな世界に出現させるパターンだ。例えばこんな事例がある。スイスの人口約80人の小さな村「Mutten」がはじめたFacebookキャンペーン(?)だ。

 この村では村を少しでも知ってもらいたいと、公式のFacebookページをはじめた。そして、そのページに「LIKE!」をしてくれた人を自分たちの仲間として認め、その人の写真を村に実際にある掲示板に貼る試みをはじめたのである。

 このいかにも人の良さが伝わってくるアイデアは、ソーシャルメディアに乗って一気に拡散し話題になった。これをきっかけにマスメディアの取材なども受け、今は村民人口の230倍にもなるファンに村ののどかな日常を届けている。私もこのFacebookページにLIKE!しているので、この小さなスイスの村の掲示板に、Facebookのアイコンが掲載されているはずだ。


「Mutten」Facebookページ

 この事例は「デジタルなものがリアルになる」というシンプルな喜びがクチコミを発生させたモデルであり、類似のプロモーションも数多く見られる。国内では、KDDIが実施した「キャンペーン参加者のTwitterアイコンが花火として六本木ヒルズに投影される」キャンペーンなどもこのモデルと言えるだろう。

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 そのほか「ソーシャルメディアからリアル」のパターンでは、ブラジルのアパレルブランド「C&A」による「Fashion Like」がある。

 これはFacebookに連動したウェブサイト上で、気に入った服にLike!をすると、実際の売り場のハンガーにそのLike数が表示されるというもの。買い物客はハンガーのLike数で人気の服がわかる仕組みだ。英語だが公式の説明動画あるのでリンクしておこう。

 これはECサイトなどで効果的に機能している「売れ筋ランキング」をリアルに拡張したモデルだ。一般的に購入時に検討が必要な商品の購買にクチコミが果たす役割は大きい。この事例のような取り組みは、クチコミが可視化するソーシャルメディアの利点と、最も購入に近いメディアをつなぐ新しい試みだと言える。


ブラジルのアパレルブランド「C&A」の「Fashion Like」

リアルからソーシャルメディアパターン

 これはリアルな世界で人が行なっている行動を、ソーシャルメディア上に可視化するタイプのパターンだ。このパターンで有名な事例に、イスラエルのコカ・コーラが実施した「Coca-Cola Village」というキャンペーンがある。

 キャンペーンは、コカ・コーラが作った「若者が夏を満喫できるテーマパーク」が舞台だ。ここではコカ・コーラのブランディングになるようなプール、サッカーコートなどのアトラクションが数々用意されていて、若者は楽しみながら、コカ・コーラのファンになっていく。この事例のポイントは、来訪者に特別なブレスレットが渡される事だ。

 このブレスレットはFacebookアカウントと紐付いており、特別な機器にかざすだけで、楽しかったアトラクションに対してLikeをしたり、記念写真をアップしたりする事ができる。これによって、Coca-Cola Villageで夏を満喫している友人の姿がリアルタイムでFacebookに拡散されたのだ。

 結果として、Coca-Cola VillageのFacebookページには5万4000ものLikeがつき、イスラエルで最も多くファンがついているページとなった。


「コカ・コーライスラエル」のウェブサイト

 またこんな事例もある。アメリカのケンタッキー大学が行った、在校生を利用し、大学進学を検討しているターゲットに同校をアピールする施策だ。

 仕組みは簡単。校内の数カ所に「巨大なチェックインピンのオブジェ」をおく。それだけ。これを見たケンタッキー大学の在校生は「ピンがあるってことは、ここでチェックインすればいいんだろう」と、何となく校内でチェックインをする。その行為が、ソーシャルメディア上に「私はケンタッキー大生である」という情報として拡散され、友人や後輩にリーチするのである。

 これにより、ケンタッキー大学を進学候補のひとつに、あげてもらう狙いだ。しかも、単なる大学名としてでなく、先輩の顔と紐付く事でより愛着を持ってもらう効果もあるだろう。


「University of Kentucky」Facebookページ

 この2つの事例に共通しているのは「リアルな行動を発生させ、デジタルなクチコミに変えた」という点だ。リアルなクチコミは、「いまここ」にいる人にしか伝わらないが、ソーシャルメディアはそれを「いつでもどこにでも」伝えてくれる。これらの事例では、ブレスレットやオブジェというアイデアで、そのきっかけとなる行動を喚起している点が素晴らしい。

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