8月31日、東京地裁にてアップルがサムスンを相手取った特許訴訟の中間判決が下され、アップルの請求が棄却される結果となった。
今回の訴訟でアップルは、サムスンのスマートフォンやタブレット型端末の製品の一部が、アップルの「iPhoneや「iPad」に用いられている特許技術(パソコンと端末の間でファイルを同期する際の技術)を侵害したと主張し、損害賠償を求めていたが、裁判ではサムスン製品のファイルの同期方法はアップルのそれとは異なり、アップルの特許権を侵害するものではないという判断が下された。
アップルとサムスンの間では、両社の製品についてそれぞれが保有するデザインや通信技術に関する特許の侵害を争点として世界各国で訴訟が繰り広げられており、8月24日には米連邦地裁でサムスン側の特許侵害が認定されたものの、同日の韓国の地裁では双方に特許侵害が認定されていた。日本では両社間の一連の訴訟について、今回初めて判決が下されたことになる。
それではなぜアメリカではアップルが勝訴し、日本ではサムスンが勝訴したのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。
「アメリカではアップル勝訴、日本ではサムスン勝訴というように簡単な図式で見ている方もいるようですが、実は両社の裁判では争点(論点)が異なっています。」
「いずれの件も判決を読んでいるわけではないのですが、アメリカでの裁判で問題とされていたのは、大まかに言ってしまえば、(1)サムスンが採用しているOS『Android』が、アップルの持つタッチ画面を指で操作する技術などの特許を侵害したというもの、(2)角が丸く、表面が黒くつやつやしているなどの端末デザインが模倣されたものであるというもの、の2点のようです。」
「対して、今回の東京地裁の判決は、PCと端末で音楽や画像データを同期する技術をサムスンが侵害しているかどうかという点が主な争点だったようです。このように争点が異なっていますが、争点が異なれば証拠も当然全く違ったものになるため、結論が異なることになったのはある意味自然なことといえます。」
「しかし、今回の東京地裁の判決は、PCと端末のデータ同期というスマホの利用について本質的なところではない点での争いのように思います。また、今回アップルの主張が認められなかったといっても、控訴をすることが可能ですし、今後別の件で特許等を侵害しているとして裁判をすることも可能です。」
「実際、東京地裁ではタッチ画面の操作性が争点となっている裁判も進行しているようです。これについてアップルの主張が認められるのかという点が、おそらく、アメリカなど他国での裁判と比較するべきものでしょう。」
なお、中間判決とは終局判決前に訴訟の主な争点に関する裁判所の見解を示すもので、今回の訴訟のように不法行為(今回の訴訟では特許侵害)の有無と損害額について争いがある場合に、中間判決で不法行為の有無について判断を下すことで終局判決では残る争点の審理に集中するというような、複数の争点を整理する役割がある。
現時点のところ、中間判決を受けてアップルは控訴をするかどうか明らかにしていないが、両社は今回のファイル同期の技術の他にバウンシング特許(画面スクロールで端にたどり着いた際にバウンド表示する機能)についても争っており、完全決着までにはしばらく時間がかかりそうだ。
取材協力:清水陽平 弁護士
共同代表パートナー
IT法務、特にインターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定に注力しており、東京弁護士会の弁護士向け研修講座の講師も担当。
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