中高生を対象にしたIT開発キャンプ「Life is Tech!」。学校の夏休みなどを利用して、名門大学のキャンパスで、3~5日間にわたりスマートフォンアプリやウェブサイトなどを開発するキャンプで、“日本にIT教育を浸透させる”ことを目的に設立されたピスチャーによって、2011年夏から開催されている。
8月に開催されたLife is Tech!のサマーキャンプには約300名が参加した。彼らの多くは物心がついた頃から、PCや携帯電話が当たり前のように存在する環境で育った、いわゆる「デジタルネイティブ」だ。大人には思いつかない学生ならではの斬新な発想で、さまざまなユニークなアプリを開発している。
サマーキャンプに参加した角南萌さんは、都内の学校に通う中学2年生。小学2年生から韓国に2年間住んだ後、米国で3年間過ごした帰国子女だ。日頃からPCやスマートフォンには触れていたが、2010年に公開された映画「ソーシャルネットワーク」を観て「カッコいい」と思ったことが、プログラムに興味を持ったきっかけだという。
角南さんは、中学1年生の夏休みにスタンフォード大学で開催されたJavaプログラミングのサマーキャンプに参加。その後、日本の「全国小・中学生作品コンクール」のパソコン部門でJavaを使ったゲームを開発し、文部科学大臣奨励賞を受賞した。さらに、2012年にはジョンズ・ホプキンス大学の教育プログラム「CTY」で、コンピュータサイエンスの基礎を学んだ。
学校の課題などが多いため、実際にプログラミングをするのは、開発イベントやキャンプの時のみ。ただし、日常的に浮かんだアイデアなどをiPadのノートに書きためるようにしているという。また通学時などは、Appleの「iTunes U」で海外の大学の講義ビデオを視聴している。「電車で寝過ごすことが多いので、そういうものを見ながら勉強しています」(角南さん)。
角南さんは学校で帰国子女向けのクラスに所属しており、授業でプレゼンやディスカッションをする機会が多いという。そこでLife is Tech!のサマーキャンプでは、プレゼンの残り時間がセッションごとに分かるiPhoneアプリを開発。残り時間を円グラフで表示し、プレゼンでどのセッションにいるかが一目で分かるようになっている。また、セッションが切り替わるタイミングでiPhoneが振動するため、ポケットなどに入れながらプレゼンすることもできる。
「本来はプレゼン内容に時間をかけるべきなのに、ペース配分に時間をかけることも多くて、そこで役立つアプリがあればいいなと思って、自分で作ってみることにしました。これまでにもタイマーアプリはあったのですが、数字だけのものが多かったので、(自身のアプリでは)デザインにこだわりました」(角南さん)。
ところで、日常的にプログラミングをしていないにも関わらず、イベントなどですぐにアプリを開発できるのだろうか。角南さんは「論理的に考えることがすごく大事なのですが、それさえできれば作れます。プログラミングは技術ではなくてツールなので、考え方のコツなどはありますが、アイデアさえあれば誰でもできると思います」と語る。
そのため将来はエンジニアなど開発をメインにした職種に就くというよりも、異なる職種でプログラミングをツールとして生かしていきたいという。「他の分野に進んでもプログラミングは必ず求められるようになると思うので」(角南さん)。近い将来、プログラミングは誰もが当たり前のように身につけるスキルになっているかもしれない。
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