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「もしドラ」に見るヒット作の生み出し方--著者の岩崎氏がCEDECで講演 - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2012年08月23日 17時57分
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表紙が良かったのは女の子ではなく背景

 「売れたものを調べて自分なりの法則を作るんです。それを当てはめてできたのがもしドラなんです」という岩崎氏。そして売れた戦略について問われると、逆を行くことを意識したと回答。「お笑いの時代が続いていたんです。面白くないといけない雰囲気があって、泣かせるコンテンツの供給不足が起きていたんです」と当時の背景を振り返り、泣かせる話を投じれば世間に刺さると考えたとのこと。

 また表紙についても言及。実際に書籍を読んだことのない人でも、女子高生が川沿いに立っているというもしドラの表紙を思い浮かべられる人は多いだろう。「あの表紙だから売れたという意見に間違いはない」としたが、実は注目すべきは女の子ではなく背景にあると指摘。「みんな女の子に注目してました。もしドラを真似た本は、女の子がかわいく描いてあるだけで背景が描いてなかったり、ダサい背景だったりするけど、そうじゃない。表紙がいいのは背景が良かったからなんです」。

 最初はライトノベルの表紙を意識し、白バックに女の子が描かれているだけのものだったが、物足りないと感じていた。その原因を考えるなかで、アニメ「東のエデン」の背景を手がけたBambooという会社を知って打診。岩崎氏が考える日本人の好きなものとして「夏の雲」と「川」をテーマに依頼をし、表紙ができあがった。

 岩崎氏はこれを無意識に訴えかけた結果と分析する。それを恋愛にたとえてこう説明した。「容姿がイマイチだけど不思議とモテる男性がいます。なぜモテるのかを研究すると、声がいいんです。声がいいとなぜモテるかというと、女性が『この人はいい声をしている』と思うのですが、表層意識ではなく無意識に感じているんです。無意識では好きだけど、表層意識では自覚できないんです。そうするとイマイチなのになぜ好きなんだろうとモヤモヤするんです。そのモヤモヤ感が恋を燃え上がらせるんです」。つまり、本当にいいと感じているのは背景なのだが、女の子に目が行き、背景がいいという気持ちは無意識に入ってしまうということで、認知されない部分で訴えかけると購買に繋がると岩崎氏は強調した。

 ほかにも、もしドラは高校生向けに書かれた書籍となっているが、本当のターゲット…マネジメント風に言うと”真の顧客”はそこではなく、彼らの親であって、親が子供に贈りたくなる本が売れることに岩崎氏は気づいた。中高生は経済的に自立しておらず親に依存している面もあるが、実際に岩崎氏は従兄弟に本をプレゼントしてガッカリされてしまった経験を踏まえ、「贈ったら喜ぶ顔を見たいのが親の性。そして喜んでもらえると、子を持つ親の友達に喜んだことを教えるんです」と、口コミによる効果についても語った。

ヒットを生み出すには「猿になる」

 話題の中では「ゲームを作るのに、ゲームをやらなくてもいい」というテーマも用意されていた。これは岩崎氏がテレビの放送作家時代に、テレビを全く見ない時期があったことに由来する。これに触れ、岩崎氏は「結局のところ、物を作ることはパクることなんです。もちろん盗作や真似るだけのコピペではなく、構造を抜き出して置き換えることなんです」とコメント。もしドラも多岐にわたるジャンルや過去のコンテンツ、ヒットの法則などのあらゆるエッセンスを取り入れているのは間違いない。ただし、それをゲームでやってしまうと似すぎてしまうので難しいとしながらも、「テレビゲームばかり遊んでいるクリエイターが作るゲームは似通ったものになってしまい、オリジナリティが生み出せないのではないか」と指摘した。

 岩崎氏はセッションのなかで「ヒット作を作るには猿になる必要がある」と述べていた。ここでの猿になるというのは、周囲が見えなくなるほどに熱中するということ。岩崎氏自身も麻雀やパチンコ、ゲームに熱中した経験から、他人を猿のようにさせるには、自らその経験が必要であると説いた。そしてゲーム以外のジャンルなどから、人々を猿にさせるアイデアの種を探してほしい訴えかけるとともに、それを理解したならゲームをしている余裕はないはずと指摘した。

 

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