クラウドやインフラの発達によって開発環境が効率化され、おびただしい数の類似サービスが生まれた結果、運営側に血みどろの「ユーザー獲得戦争」に直面するようになった。この解決の一助として、リクルートのR&D部門であるメディアテクノロジーラボは7月23日、「ComingSooners」を公開した。
「LaunchRock」をご存知の方はComingSoonersをすぐに理解できるだろう。LaunchRockは北米で2011年に開始された「サービスの事前登録サービス」。サービス提供者はアカウントを作成するだけでティザーサイト(事前告知サイト)を用意できる。ComingSoonersは、いわばLaunchRockの日本版サービスだ。
使い方は至ってシンプル。サービス提供者はアカウント作成後、管理画面からロゴやドメインなどの設定、ソーシャルメディアへの投稿条件を入力するだけでティザーサイトを作成できる。サービスに興味を持ったユーザーが登録したメールアドレスはリストとして蓄積でき、サービスの事前告知などに使える、という具合だ。
アドレスを登録したユーザーにはソーシャルメディアへの投稿ボタンが表示され、ユーザーがユーザーを呼び込む仕組みを提供する。たとえばサービス提供者が「友人3人を登録させれば何かをプレゼントする」といったインセンティブを自由に設定して、拡散のためのモチベーションを提供することも可能だ。あるユーザーが何人ユーザーを呼び込んだかといった情報は、サービス提供者向けの管理画面で確認できる。
一見すると単なるメールアドレス収集にしか思えないサービスをなぜリクルートが立上げるのか。その視点の先には大きな「スタートアップ・プラットフォーム」構築への狙いがあるのだという。
「元々は我々が量産しているアプリの集客を考えることから始まった」--そう語るのはComingSoonersの企画開発を担当したメディアテクノロジーラボの松江澄人氏。これまでにコマーシャライザーやスマートTV、最近ではVideoNaviなどの企画をこのラボで担当してきた人物だ。「毎回毎回アプリを立上げる度に集客が問題になる。これを解決したかった」と、企画のきっかけを振り返りつつ「ティザーサイトに登録するのはIT系リテラシーの高い人達が多い。最初に登録してもらってそこから広がる。その層をちゃんと集めてネットワーク化する必要があると思った」と狙いを語る。
LaunchRockと“ほぼ同じ”サービスではあるが、大きく違うポイントもある。それは彼らがプラットフォーマーを指向しているということだ。今後は、ComingSoonersを利用するサービス提供者全体で集めたユーザーに対して、サービスを告知したりするほか、メディアとの連携やイベント開催などを通じて総合的に集客や認知促進が実現できる仕組みを提供するのだという。「LaunchRockはあくまでユーザーのメールアドレスを事前に集めるだけのサービス。我々はさらにその上の役割を果たす」(松江氏)
ComingSooners単体での収益やビジネスモデルについては、現時点では重要視しない。「たとえばATNDにしても、もともとはエンジニアが『面白そう』と作ったのがきっかけだが、現在は事業に発展している」(松江氏)。それ以上に重要視するのはユーザー数だ。「LaunchRockは8カ月で4500サイトを公開、150万ユーザーを獲得した。北米の規模を4倍とみて、今期末までに750サイト公開して、25万ユーザーは獲得したい」(松江氏)
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