「ワイヤレスジャパン2012」の初日となる5月30日、インターネットイニシアティブ(IIJ)によって、「『クラウド × LTE × スマートデバイス』が実現するビジネスモバイルのカタチ」と題した特別セッションが開催された。講演では、同マーケティング本部プロダクトマーケティング部の神田恭治氏が、ビジネスネットワーク環境の変化などを語った。
元々ISP事業を中心に展開してきたIIJだが、現在はアウトソーシング関連が収益の8割を占めるなど、事業が大きく変化している。そのIIJが2012年に注目している要素として、神田氏は“スマートデバイス”“モバイル(通信回線)”“クラウド”の3つのキーワードを挙げる。
スマートデバイスに注目したIIJは、アップルの代理店として、Wi-Fi版iPadの販売を法人向けに開始。現在では60以上のパートナーと、iPadを活用したビジネスを展開しているという。当初は、個人向けの事業が中心のアップルに対し、ビジネス利用でも信頼できるのかという心配の声が多かったが、現在ではそうした不安は払拭され、むしろ製品的な魅力やセキュリティ面の不安の少なさから、iPadが積極的に選ばれる傾向が強まっているようだ。
iPadをはじめとしたスマートデバイスは当初、大画面と可搬性を活かしたビューアーやプレゼンテーションツールとしての位置付けが強く、導入規模も限定されていた。しかし現在はネットワーク接続することで、リモートデスクトップなど幅広い用途へと利用が拡大。販売台数も大幅に伸びてきているという。さらに今後、PC向けアプリが利用できるWindows 8の登場によって、スマートデバイスの伸びがより加速するのではないかと、神田氏は予測している。
スマートデバイスを活かす上で重要となるのが、場所を選ばず利用できるモバイルの通信回線だ。IIJは、2008年からNTTドコモのMVNOとして「IIJ Mobile」を展開。従来の3Gに加え、2012年からはLTEに対応した端末も投入している。まだエリアが広くないにもかかわらず、単月でのオーダーが3Gの倍を超えるなど、当初の予測を超えて好調に推移しているとのこと。LTEはスピードが速いだけでなく遅延も少ないため、リモートデスクトップなどを利用する時に、固定回線と同じ操作性が得られることなどから、人気となっているようだ。
スマートデバイスと高速なモバイル通信の導入によって活用が加速しているのがクラウドだ。IIJはクラウドについても「IIJ GIO」というサービスを提供しており、2年間で1100システム、売上が5倍となるなど、こちらも好調を示している。
現在、クラウドはSaaSに代表されるアプリの利用が中心だが、今後は企業のプライベートアドレス空間、ひいては基幹業務までもがクラウドに移っていくと神田氏は予測。ネットワークとの間にあるゲートウェイも、将来的にはクラウドに移行していくのではないかという見解を示している。
ところでスマートデバイスを外出先で利用し、企業の情報に直接アクセスするとなると、盗難などセキュリティへの対応が気になるところだ。これについて神田氏は、IIJではMDM(Mobile Device Management)サービス「スマートモバイルマネージャ」を提供してデバイスを管理しやすくする体制を整えていると説明する。
さらに、近頃話題となっている個人端末の業務利用、BYOD(Bring Your Own Device)やBYOC(Bring Your Own Computer)についても言及。積極的に推奨する訳ではないが、そうした選択肢があることを認めた上で、適したソリューションを提供する必要があるとした。
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