クラウドと「iPad」の繁栄--そしてギーク時代の終焉 - (page 2)

Jason Hiner (TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子2012年05月29日 07時30分

 一方、今日ではほとんどの従業員が自宅で少なくとも3台目、あるいは4台目の新型PCを使用しており、彼らの多くはスマートフォンも所有している。また、自らのノートPCやタブレットを携帯している従業員もいる。彼らの多くが「Gmail」や「Yahoo!メール」の電子メールアドレスを個人で取得しており、Amazon.comにおけるシームレスなオンライン注文手続きを愛用している。また、数は少なくなるものの、ITに詳しい従業員のなかには「Dropbox」といったクラウドサービスを利用し、個人ファイルを複数のデバイスから使用している者もいる。

 このため、IT部門が時代遅れのコンピュータを配備しようとしたり、電子メールの添付ファイルサイズに上限を設けようとしたり、使いものにならないウェブアプリケーションを開発したり、個人のスマートフォンから企業カレンダーにアクセスできないようにした場合、こういった従業員たちはIT部門のことを頼れる存在ではなく、業務の進捗を阻む存在と見なすようになるのである。

 彼らの多くはIT部門の手を何度も借りたいとは思っておらず、実際に必要ともしていない。その一方で、彼らは自社のITシステムが「iPad」のように簡単に操作でき、まるでGmailのように制約がなく、Amazonで何かを購入する際のようにシンプルかつシームレスで、Dropboxのように直感的な設定が可能になっていることを期待するのである。

 このような期待を抱かれるのは不公平だ。IT部門のリソースはAppleやGoogle、Amazonはおろか、ベンチャーキャピタルの支援を受けているDropboxのような新興企業にすら遠く及ばない。とは言うものの、不公平だということが事実であったとしても、ユーザーの期待はこれっぽっちも変わるものではない。

 その結果、ほとんどのIT部門はあらかじめパッケージ化されたコンシューマー指向のソリューションに太刀打ちできない状況に陥っている。このため、ギークが腕を振るって新たなソリューションを紡ぎ出す(それが企業PC向けの標準的なソフトウェアであろうと、内製のアプリケーションであろうと、自社でのメールサーバの稼働であろうと)という時代は急速に終焉へと向かっているわけだ。

 このことは、誰もがiPadやGmail、Dropboxを使うようになるということを意味しているわけではない。多くの企業は業務での使用に耐えられるこの種の製品(例えばDropboxの代わりに「Box.net」)の採用に走るはずだ。

 過去の記事でも書いているように、このことは今あるIT関係の仕事がすべてなくなってしまうということを意味しているわけでは決してない。それらは単に場所を変えるだけである。地方のITインテグレーターには小規模な地場企業の支援という仕事が残され、開発者にはソフトウェアへの依存度が日増しに高まっている社会への貢献という仕事が残され、ITインフラの専門家には大規模クラウドデータセンターの運用(または大企業におけるデータセンターの運用)という仕事が残され、プロジェクトマネージャーやビジネスアナリスト、ITアーキテクトには、適切なITソリューションの選択や計画を行う際に、組織を正しい方向に導いていくという仕事が残されることになる。

 これらが将来におけるIT関係の仕事である。われわれがこういった未来に向かっているという事実をまだしっかり受け止めきれていないのであれば、今こそそのことに正面から向き合うべきだろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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