この東京高裁の判決を受け、国側が上告するか否かが注目されていたが、先日5月9日、国側は最高裁への上告に踏み切った。
上告理由の詳細は明らかになっていないが、最高裁で最大の争点となるのは、やはり地裁と高裁で判断が分かれている「医薬品のネット販売を規制する厚生労働省令が薬事法に基づいた適法な規制かどうか」という点だと思われる。
過去の最高裁の判例には、幼年者の在監者との接見禁止を定めた規則について、「監獄法がこの規制を許容するものではなく、接見禁止の規則は法律が委任した範囲を逸脱しており、違法かつ無効なものである」とした事例がある。
一方で、美術品としてのみ所持が許可される日本刀に関する規制について、「規制の内容は銃刀法という法律の許容した範囲内である」として、適法であると判断した事例もある。
これらの最高裁の判例をみると、規制される権利や利益の性質、重要性が結論に大きく影響を及ぼしているとみることができる。
つまり、前者のように、国民の重要な権利が制約される場合には、法律の趣旨が厳格に判断され、制約の許容範囲も限定される。その一方で、刀剣の所持のように、特権的に与えられた権利の制約については、法律の趣旨が緩やかに判断され、制約が許容される範囲も広くなる傾向があるとみることができる。
そうすると、今回の件についても、医薬品をインターネットで販売するという権利の性質・重要性を最高裁がどのようによらえるのかによって、法律が制約を許容している範囲が影響され、省令による規制の有効・無効の結論を左右することになると考えられる。
最高裁が医薬品をネットで販売する権利について、「特権的に与えられた権利である」と考えるのであれば、省令による規制は薬事法が許容している範囲内にある規制であり、適法・有効であるとの判断に傾くだろう。また、国民が本来的に有する重要な権利ととらえれば、省令による規制は薬事法の委任の範囲を逸脱するとして、違法・無効になるだろう。
最高裁に上告した場合、裁判の内容によっても異なるが、判決が出るまで通常1~2年ほどかかる。そのため、本件についても、判決が出るまでには年単位の期間がかかることが見込まれるが、長い目でその行く末を見守っていきたい。
法律監修:法律事務所オーセンス
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