東京高等裁判所(東京高裁)は4月26日、ケンコーコムとウェルネットが起こした一般用医薬品のネット販売規制に関する行政訴訟で、原告敗訴となった一審の判決を一部取り消し、一般用医薬品のインターネット販売を含む郵便等販売を認める判決を下した。
判決で東京高裁の三輪和雄裁判長は、薬事法が店舗販売業者が行う第1類、第2類の医薬品の郵便等販売を一律に禁止するという点までを厚生労働省(厚労省)の省令に委任しているものとは認められないとしている。
そのため、規制について定めた省令の部分は、国民の権利を制限する省令の規定であり、国家行政組織法12条3項(「省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、または義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない」というもの)に違反するとし、控訴人(一審の原告)に一般用医薬品の郵便等販売の権利があることを確認する旨の判決を言い渡した。
つまり、本来改正薬事法で定められていなかった省令での「販売の制限」自体が法律に違反しており、控訴人らのインターネットをはじめとした郵便等販売の権利があるという判断になる。
判決を受けて開かれた会見で、ケンコーコム代表取締役の後藤玄利氏は「(一審から省令が違憲であると語っており、)当然の結果であると認識している。だが、正直緊張していた。判決を聞いて正直ほっとしている。違憲の省令を出しているということが続いていた。この状況は長期化しており、今でも日々困っている。こういった事態が一刻も早く解消されることを願っている。司法の良識に感謝している」と話した。また、国側の上告については「厚労省は判決を真摯(しんし)に受け止めて、上告しないで頂きたいと切に願っている」とした。
ウェルネット代表取締役の尾藤昌道氏も「判決には感無量。最近おかしなことが続いている中で、実に筋が通ってすばらしいと思っている。顧みれば、納得いかず不透明な規制だった」と語った。
控訴人代理人で弁護士の阿部泰隆氏も、一審が「対面販売とネット販売を比較してどちらが安全か」という点が争点になっていたことに対して、控訴審では「ネット販売は禁止するに値するか」という点を論じたことを評価した。
今回の規制の影響は今日もまだ続いている状況だ。ケンコーコムでは「年間売り上げで5億円程度下がっている」(後藤氏)とのこと。ウェルネットでも「通常月額600万円ほどの売上。規制の直前は駆け込み需要もあって800万円ほどまで伸びたが、翌月には450万円まで落ちている」(尾藤氏)と説明する。
今後国側が2週間以内に上告する可能性もあるが、これについて後藤氏は「先方(厚労省)がどう動く変わる。だが厚労省に認識して欲しいのは、3年近く異常な状態が続いており、お客さまから毎日『購入したい』という問い合わせを頂き、省令で禁止されているとお断りしていること。1日も早く異常な状態に終止符を打ちたいというのが率直な気持ち」と語り、尾藤氏もそれに同意した。また後藤氏は、行政刷新会議、いわゆる「規制仕分け」で一般用医薬品のインターネット販売などについて検討する旨の閣議決定がなされていることにもふれ、厚労省の対応を促した。
今回逆転勝訴を勝ち取った両社だが、明日からでもすぐに第1類、第2類を販売する準備をしている状態ではないと説明する。さらに今後第1類、第2類の販売を再開する際は、ITを使ってインターネット販売の安全性を高めていくと語った。「副作用や禁止事項もネット上で対話し、大量購入も制限する。最近ではSkypeなどもあるので、お客さまとの密なやりとりも積極的にやっていく」(後藤氏)。
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