NECが米コンバージズを買収--通信向けサービス事業の強化が目的

 NECは3月22日、米Convergysの事業支援システム(BSS)部門を買収すると発表した。買収金額は4億5000万ドルで、買収手続きは2012年4〜6月に完了する予定。2008年6月にNECが買収したNetCracker Technologyが一体運営を行うという。

 Convergysは、1983年に米オハイオ州シンシナシティに設立。買収の対象となる同社事業支援システム部門の2011年度売上高は3億2900万ドル、営業利益は3700万ドル。約2500人の社員と150社以上の顧客を持ち、米AT&T、英ブリティッシュテレコム、マレーシアのテレコムセルなど、世界各国の通信サービス事業者向けに、課金管理、顧客サポート管理、利用料収入管理などの基盤を提供している。

 NetCrackerが提供していた通信事業者向け運用支援システムを中核とする通信運用システム(TOMS)に、Convergysの事業支援システムの人材リソースおよびソフトウェア/サービスを加えることになる。これにより、海外で主流となっている運用を外部委託するマネージドサービスや、日本の通信サービス事業者が採用している自前のシステムにおいても、クラウドコンピューティングを介して事業支援システム(BSS)や運用支援システム(OSS)ソリューションを提供できる製品ラインアップが揃うことになる。

NEC代表取締役 執行役員社長の遠藤信博氏
NEC代表取締役 執行役員社長の遠藤信博氏

 午後5時から都内で行われた会見で、NEC代表取締役 執行役員社長の遠藤信博氏は、「OSSとBSSの個別運用ニーズに比べて、今後はOSSとBSSを一体運用する次世代OSS/BSSへのニーズが高まると予想されている。一体運用される次世代OSS/BSSの2015年までの市場平均成長率は16%になるとみている。NetCrackerのOSSと、今回買収したConvergysのBSSを一体化させることで、サービス申し込み、サービス開始、請求書送付までを一気通貫で実現する一体化した運用が可能になる。通信サービス事業者にとって、サービスの改善、コスト削減が見込めることになり、NECはここでしっかりとビジネスをやっていきたい」と語った。

 また、「NetCrackerは、インテグレーション力による顧客要望の実現、プログラミングレスで柔軟性を持つOSS製品を持つこと、顧客に密着したビジネスをグローバルに展開できるという特徴を持ち、OSS市場において3位あるいは4位のポジションにある。一方でConvergysは、多様なプロフェッショナルサービスを提供し、高い顧客満足度を持つこと、シンプルデータベースなどの強いBSS製品を保有していること、北米を中心に安定した顧客基盤を持つという特徴を持ち、BSS市場において4位または5位。全世界で5%のシェアを持つ。これを統合することで、さらに順位はあがっていくだろう。通信サービス事業者も、OSS/BSSを統合した次世代サービスを求めている」として、「2016年にはグローバルシェアで10%、年間売上高で1億ドル(約800億円)を目指す」とした。

  • OSS/BSSの市場推移とニーズ

  • 次世代OSS/BSS市場での機会獲得を目指す

 NECは、ITサービス、キャリアネットワーク、社会インフラ、エネルギーの4つの事業領域に対してリソースを集中する方針を示しているが、「今回の買収は、キャリアネットワークにおけるサービス&マネジメント領域で、グローバル拡大への打ち手となる。また、将来的には海外事業比率を25%にまで高めたいと考えており、その点でも重要な意味を持つ」と遠藤社長は位置づけ、「NECが成長していくためには大切な投資である」とコメントした。

 今回の買収は、NECの事業領域を補完し、変化の早い市場環境において通信サービス事業者の事業競争力を強化することができる通信業界向けトータルソリューションの提供を開始することができるともいえ、NECのこれまでの取り組みをさらに加速することになろう。

 遠藤社長は「今回の買収の鍵になるのは、人であり、コンサルタントであり、魅力あるソフトウェアとシステムといえる」としながら、「まずはNetCrackerが持つ70社、そしてConvergysが持つ150社の顧客に対するクロスセルでの効果を見込んでいる。続いて、オーダー管理用GUIと料金管理用GUIの一体化、料金データベースの統合、課金情報インターフェースの統合など、次世代OSS/BSSソリューションの確立に向けた統合化開発投資の実行。そして、NECが展開するキャリアクラウド、M2M(機器同士が通信し合うシステム)、スマートフォンビジネスなどとのシナジー効果を見込む」と語った。

 サービスソリューションの一例としてトラフィックの最適化をあげ、「NECが提供するネットワーク制御サーバから、利用状況、加入者情報を用いて、OSSにおいては、端末識別、契約内容、ユーザー利用履歴から、契約内容、端末種別、利用状況などに応じた最適帯域制御を実現。BSSでは加入者契約情報、課金モデルから、ユーザーのパターンに応じた多様な課金コースを設定できるようになり、この組み合わせによって、キャリアの利益最大化、エンドユーザーの満足度向上につなげることができる」と語った。

 また、今回の買収にあわせて、販売、SE、SI(システムインテグレーション)、開発のグローバル拠点における最適配置と最大活用を行っていくとし、「Convergysは、インドに1000人規模の開発拠点を持っており、これも有効活用していきたい」とした。

 さらに、「Convergysの事業はこれまでは欧米が中心であり、アジアの売り上げ構成比は10%程度。今後、新興国における通信サービス事業の成長が期待されており、この市場でもしっかりとビジネスをやっていきたい。また、Convergysではこれまで日本市場には顧客を持っていないが、今後は日本もターゲット市場のひとつとして捉えていく」とした。

  • 買収後はクロスセル展開を加速させる

  • 買収後の流れ

  • グローバル拠点の最適配置を図る

  • グローバルシェア10%、年間売上高1億ドルを目指す

 なお、3月22日付けで発表された役員人事で、矢野薫会長が代表権をはずれることについて「私自身がすべて決断しており、いままでのオペレーションと変わりはない」とした。

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