ニワンゴは1月15日、3DCGの初音ミクを踊らせることができるムービー制作ツール「MikuMikuDance(みくみくだんす)」(MMD)の映像を表示できる新システムを、六本木のライブハウス「ニコファーレ」に導入予定であることを発表した。これにより、ユーザーがニコニコ動画に投稿しているMMDのモーションデータを加工することなく、ニコファーレのステージ上に表示させて簡単にイベントなどを開催できるようになる。
「ユーザーがそれぞれ持ち寄ったデータを集約して、ライブイベントを開くこともできます。MMDに対応したモデルであれば、基本的にすべて動かすことができるので、たとえばMMDを使った漫才イベントなどもできるようになります」と話すのは、ドワンゴ ニコニコ事業本部 事業推進部長の中野真氏だ。
全壁面と天井に設置したLEDモニターによる映像演出や、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)を使ったライブ配信ができる施設として、2011年7月にオープンしたニコファーレ。ユーザーによるイベントの開催も可能だが、現在は芸能人やプロのアーティストによるイベントが中心になっているという。
「オープン当初、ユーザーにも積極的に開放していこうというテーマをもって作っていたのですが、実際には、どうすればニコファーレを使えるのかが分からなかったり、現地まで行かなければいけないことなどが、ユーザーにとってハードルになっていました」(中野氏)
そこで、クリエイターなどが自宅にいながらニコファーレに参加できるひとつのきっかけとして、新たにMMDへの対応を発表した。中野氏は「ニコニコ動画だけでなくニコファーレも1つの表現の舞台として使えるようになるため、モーションデータの再利用もしやすくなるのでは」と話す。
今後はプロのアーティストなどによるイベントだけでなく、ユーザーが創作物をアウトプットできる場としてのニコファーレもアピールしていきたいという。
ネット視聴者の盛り上がりをよりリアルに体感できるようにする取り組みとして、ニコファーレの壁面LEDに表示されるネット観客システムも2月に一新する。これまでは、ニコファーレの生中継を視聴するユーザーのサムネイル画像が壁面LEDに並んで表示されるだけだったが、新システムではサムネイル画像に代わり3Dアバターが観客として表示され、ネット視聴をしながらアバターを操作できるようになるという。
「3Dアバターでどのような動作ができるかは現在開発中のところですが、たとえばサイリウムコメントをしたときに、アバターがサイリウムを振ったり、飛んだり跳ねたりといったことが、自分の視聴クライアントを通じてできるようになる予定です」(中野氏)。
開始当初はニワンゴが用意したアバター画像の中から選択することができ、将来的にはパーツを組み合わせることで、自分だけのオリジナル3Dアバターも作れるようになる予定だ。なお同社では、現在3Dシステムの開発エンジニアを募集している。
さらに、ジェスチャーで操作するXbox 360のコントローラー「Kinect(キネクト)」の動きをステージ上で3D再現する実験も進めている。これによって、たとえば観客が自宅にいながらニコファーレでオタ芸などを披露できるようになるという。「コメントだけではどうしても受動的になってしまうので、ステージにいる人だけじゃなく、全員が参加して盛り上がれるようにしたいですね」(中野氏)
ニワンゴは、2011年12月12日に「ニコニコ動画」が5周年を迎えたことを機に、サービスを大幅に見直していくことを発表しており、4月29日に“原点回帰”をテーマとする「ニコニコ動画(ZERO)」にバージョンアップする予定だ。中野氏によれば、ニコファーレの新機能もバージョンアップに向けた取り組みの一環だという。
「この5年間でニコニコ動画内のカテゴリもいろいろと細分化されました。それによってジャンルごとの発展があったりとメリットがあった一方で、盛り上がりという意味で“大きな火”がつきにくくなっている。それはサービス全体でもそうですし、各ジャンルごとでも感じているところです。これはニコ動だけでなく、どのサービスも同じような傾向があると思うのですが、盛り上がりをユーザー任せにしているところが非常に多くて、意図的に仕掛けられるものが凄く少ないと感じています。もちろん狙ったことがすべて当たるのは難しいと思うのですが、ユーザーに任せていても、火がつきやすい状況を僕らでまた作っていきたいと思っています」(中野氏)
2011年12月にすべてカテゴリを合算した総合ランキングを復活させ、2月からはユーザーがよりニコファーレへ参加しやすくなる仕組みを提供するなど、“一体感のあるサービス”を取り戻すべく一歩ずつ進んでいるニコニコ動画。4月29日のバージョンアップに向けて、今後もいくつかの新機能が発表される予定だ。
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