2008年7月10日にApp Storeが誕生してから3年以上の月日が経過した。一個人も大企業と渡り合えるその市場にこぞって開発者が参入し、今や50万ものアプリケーションが存在する巨大マーケットへと成長している。特に2011年は例年と比べてもアプリ成長やビジネスの手法が大きく変化した。2011年を振り返りながらアプリケーションの成長した過程を見ていく。
2011年3月11日に東北地方を襲った未曾有の大震災の直後、各キャリアの携帯電話はメールや音声通話が一切不通になる事態に陥った。そんな時に最大限に力を発揮したのがスマートフォンだった。交通機関で移動しながらTwitterやFacebookアプリを利用し、安否確認、災害情報、交通情報など、その当時貴重な情報を外出先で入手することができた。情報量が多く、また誤った情報が瞬くままに伝達され混乱を起こすという課題も残したが、音声通話が困難な状況下で、リアルタイムに現在の状況を伝えられるという利便性は、非常に災害に強いスマートフォンを印象づけた。
中でもiPhoneは災害用対策アプリが非常に充実していた。地震が発生した情報を伝えるための「ゆれくるコール」やiPhoneを懐中電灯として使うためのアプリ、安否情報を伝えるための「災害用伝言板」など、幅広いジャンルで役立つアプリが存在している。
また、文字情報による伝達だけではなく、アプリを通して音声での通話も可能だった。通常の音声回線がパンク状態になる中、「Skype」や「Viber」などで情報をやり取りする人が増え利用率が上がり、App Storeランキング上位にそれらが急浮上した。こうした災害に対応するためのアプリが次々にランキング上位に入り、順位もめまぐるしく変動した。1日のうちにランキング上位が時間毎にめまぐるしく変動するという事態も今までにはなかったことだ。災害の状況、時間の経過とともに、情報をいち早く伝えたり情報を入手するためのアプリから支援や避難に役立つアプリなど、刻々と変化するユーザーニーズがApp Storeに反映された結果と推測できる。
震災直後、有料だったスマートフォンアプリが無料になるという光景をよく目にした。中でも目立った動きが見られたのがiPhoneアプリ市場だった。その代表例とも言えるのが、「MapFan for iPhone」というナビゲーションアプリだ。通常は2300円するアプリだが、震災直後に帰宅困難者や被災地支援として無料にした。
高額の有料アプリが無料になるというのは極めて異例の事態にもかかわらず、震災直後の日本を助けたい、少しでも力になりたいという想いが連鎖し、「家庭の医学」「ロイターニュース」などさまざまなアプリが有料から無料へと変化していった。有料アプリを無料にするという動きだけではなく、有料アプリの売上げを支援団体に寄付したり値引いたりした情報をAppBankなどの情報サイトがまとめたり、自主的に寄付を呼びかけるといった運動が行われたりした。手段はそれぞれ異なるが、アプリを通して開発者らが復興を支援したいという想いがApp Storeのマーケット内に溢れていた。
2009年7月から始まったアプリ内課金は当初、日本市場ではあまり受け入れられていなかったが、2011年に入ってから状況が一変した。
「カイブツクロニクル」「-KingdomConquest-」「探検ドリランド」「小悪魔キャバ嬢らいふ」など、アプリ自体は無料だが、ゲームを進行して行く中でアプリ内課金をするという仕組みのアプリが一斉にセールスランキング上位にいることが日常的になってきた。
フィーチャーフォンで人気を博している、GREE、モバゲー、ハンゲームなどの企業もこぞってiPhoneアプリ市場に参入し始め、さらにタレントや大手ゲームメーカーと連動したアプリがランキング上位を占めるようになることが今後予想される。
「ストリートファイターIV VOLT」「デビル メイ クライ4 リフレイン」「Final Fantasy III」「モンスターハンターDynamic Hunting」「ウイニングイレブン2012」「THE KING OF FIGHTERS-i」「電車でGO!山手線編」──これらは、PS3やPSPなどの家庭用ゲーム機でよく耳にする有名なタイトルゲームだ。これらはすべて2011年にiPhoneアプリとして登場している。単なる移植アプリではなく、キャラクターの追加やiPhoneに最適化されたユーザーインターフェースなど、さまざまな工夫がなされており、各ゲーム会社の本気度が伝わってくる。また、CPUやチップなどの向上に伴い、グラフィックや音楽なども年々向上しており、App Storeランキング上位に食い込むアプリの約30%以上がゲームアプリという結果にも反映されているように、ゲーム機としてのiPhoneが着々と根付いてきている。
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