Androidで定評「Dolphin Browser」が日本に注力--騒動に関しても経営陣がコメント

岩本有平 (編集部)2011年12月13日 08時00分

  米MoboTapが提供するスマートフォン向けブラウザ「Dolphin Browser」は、現在Android版として「Dolphin Browser HD(日本語版)」と「Dolphin Browser Mini」の正式版2種類、「Dolphin for Pad V1.0 Beta」のベータ版が1種類公開されている。また、iPhone版では「Dolphin Browser」、iPad版では「Dolphin Browser HD」が公開されている。

 そのダウンロード数は、Android版だけでも世界で1000万件を超えており、サードパーティー製のスマートフォン向けブラウザとしては世界最大規模。日本でも、ソフトバンクモバイルの一部製品にプリインストールされている。  Dolphin Browserのユーザーを国別に見ると、80%が米国だが、2番目に多いのは日本だという。これまで日本ではマーケティングを実施しておらず、口コミだけでユーザーを獲得してきた同製品について、来日したMoboTap代表らが自らその詳細を語った。

ソーシャルメディアを通じてユーザー拡大

 MoboTapは米サンフランシスコに拠点を置いている。創業は2009年で、CEOのYongzhi Yang氏は元Microsoftのエンジニアだ。同社は現在、北京に100名規模の開発部隊を置いており、サンフランシスコで製品企画やデザインをし、北京で開発するという体制を敷いている。7月には米大手ベンチャーキャピタルのSequoia CapitalとMatrix Partersから1000万ドルの出資を受け、さらに開発スピードを上げているという。


来日したMoboTapのメンバー。左からゼネラルマネージャーのTaek Chung氏、CEOのYongzhi Yang氏、マーケティング統轄のEdith Yeung氏

 Dolphin Browserはボランティアベースですでに18カ国に翻訳されており、208の国や地域で利用されているという。日本語版のAndroidアプリも12月に公開されている。

 1000万件というダウンロード数を達成できた理由についてYang氏は、「最初はとにかく早く作ってAndroid マーケットに出したこと」だと語る。

  • Dolphin Browserの利用状況。データは3カ月前のもので、ダウンロード数はすでに1000万件、対応言語は18カ国語に上るという

 かつてAndroidは決して人気の高いOSとは言えなかったが、オープンソースであり、サードパーティーが自由にアプリを開発できる点に注目したというYang氏。またAndroidのブラウザを見てみると、標準搭載のアプリも、サードパーティー製のアプリもスマートフォンのインターフェースに特化したものではなかったのだという。同氏はそこに自分たちの製品を投下するチャンスがあると判断。まずはAndroidに特化する形で開発に取りかかったという。

 今では数十万とも言われるAndroidアプリだが、Dolphin Browserのリリース当時、Android マーケットに提供されていたアプリは2000~3000程度。今ほどアプリの数も多くなかったことから、多くのユーザーの目に触れてダウンロードされた。それがTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを通じて口コミで広がったことで今に至ったのだという。

 当初Androidで提供されていたDolphin Browserだが、現在はiPhone版もリリースされている。英語版のダウンロード数はすでに300万件に達している。日本語版は未提供だが、「まもなく公開する予定」(MoboTapゼネラルマネージャーのTaek Chung氏)だという。

ユーザーの好みにカスタマイズできるのが利点

 Dolphin Browserの名前は、もちろん“イルカ”に由来している。「イルカは頭がいい。また、トレーニングするのが簡単だ。FirefoxやChromeではなく、トレーニングして“あなた好み”にできるブラウザを作りたかった」(Yang氏)。このブラウザは、大きく3つの機能を備えることで、ユーザー好みのカスタマイズができるのだという。

 1つめは「アドオン」だ。現在約70種類のアドオンをMoboTapやサードパーティーが提供している。現在はAPIを一般に公開していないが、将来的にはAPIを公開し、開発者が自由にアドオンを作成できるようにすることを検討中だという。2つめは「Webzine」だ。Webzineは、ソーシャルメディアのタイムラインやウェブメディアのRSSをスマートフォンに特化したレイアウトで閲覧できる機能だ。そして3つめが「ジェスチャー」だ。ブラウザ上でさまざまな軌跡を描くことで、ブラウザの操作や指定したURLへのアクセスが可能。ジェスチャーはプリセットされているものに加えて、オリジナルのものも登録できる。「たとえばハートマークを描けばあなたの好きなサイトにアクセスするといったことも可能」(MoboTapマーケティング統轄のEdith Yeung氏)

  • 約70種類用意されたアドオン

  • ユーザーによる設定が可能なジェスチャー機能

  • Dolphin BrowserのWebzineの画面と右端にあるアドオンボタン

 なおWebzineに関しては、10月末にウェブブラウジングの際のユーザーの閲覧履歴などの情報を外部サーバに送出していたことが明らかになり、日本のユーザーも問題視して騒動になった。これに対してMoboTapは公式ブログにて、Webzine対応サイトかどうかの確認のための仕様であり、情報を保存していないと釈明した上で、謝罪している。またAndroidの最新版では同機能の修正を実施しているという。この問題についてChung氏は、「開発者目線で語れば、個人情報を侵害しているという考えはなかったが、それでは安心して使えないと思った。次期バージョンではそこを大幅に改善し、安心して使えるようにする」としている。

 国内でもフェンリルやLunascapeといった会社がスマートフォン向けブラウザを開発している。競合とも言える存在だが、「(上記2社について)よく知らないが、本当の競合はブラウザアプリではなく、他のさまざまなアプリだと考えている。ユーザーはブラウザに限らず、いつも新しいアプリをダウンロードしている」(Yang氏)、「“プリインストール”自体が競合。まだまだサードパーティー製品を知らない人がいる」(Chung氏)と語る。

 Sequoia Captialなどの投資もあり、マネタイズよりもまずはユーザー拡大に注力するという同社。今後は日本での拠点設立も検討するほか、パートナーについても積極的に探していくとした。「もう少し日本のユーザーにフォーカスできれば、もっと使ってもらえると思っている」(Yeung氏)

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