異なるアプローチのリスティング広告自動化:第2回

ビル・ラン(エフィシェント・フロンティア)2011年11月08日 12時00分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 前回の記事ではSEMプラットフォームの歴史や変遷について取り上げた。各プラットフォームはキャンペーンやパフォーマンスを異なるアプローチで管理する形で発展してきた。多くのプラットフォームは、一見類似する機能を持ち合わせている部分もあるが、それぞれに違った特徴があり、これはパフォーマンスに大きな影響を与える。第2回目の今回の記事では、広告主がどのように自動化プラットフォームを使い、どのようなメリットを享受しているかについて紹介したい。

表計算アプリケーション VS 自動化プラットフォーム

 Replacements社は、新品・中古の陶器、ガラス製や銀製の食器コレクションの世界最大のサプライヤーである。1981年の創業以来、1100種類、27万種類のパターンのテーブルウェアとコレクションの商品ラインアップで成長してきた。同社のウェブサイトには、月間2400万のビジターが訪問し、トラフィックは年率25%で成長。マーケティング活動は、オフラインマーケティング、リスティング広告、ポータル広告、ショッピングエンジン、タイアップ、ブログ、その他のオンライン・マーケティングが含まれる。

 Replacements社は、検索エンジンマーケティングを試験的に運用し、一定の成果を得た結果、リスティング広告のキャンペーンを2万キーワードから4万キーワードまで拡張することを決定する。その頃は、表計算を使った手動ベース、内部で開発したコンピュータアプリケーション、そしてルールベースの入札管理ツールでキャンペーン管理を行っていた。当初はこのアプローチで問題なかったのだが、2万キーワードを超えたあたりから、プラットフォームのインフラ面でキャパシティの問題に遭遇し始める。ルールベースのツールでは、リスティング広告のキャンペーンをそれ以上スケールすることができなかった。

 その後、Replacements社は自動化プラットフォームを採用。最初の6カ月間で、オンラインでの売上も、ユーザー登録も増加し、キーワードは短期間で2万から4万へ増やすことに成功した。現在では300万キーワードまでキャンペーンを拡張しているが、同時にコストを効率的に管理することにより売上を増やし、ROI目標を達成している。

 自動化によって、Replacements社はロングテールのキーワードの入稿と広告運用を最適化することができ、その結果、全ての商品ラインにおいて業績を上げることができた。同社はユーザー登録、売上額の両方において、具体的な数字の予測を立てることができたのだ。パフォーマンスを上げることができるロングテールのキーワードを増やすことで、同社はキャンペーンから最大点の効果を得ることに成功した。

自動化によってパフォーマンスを高めつつ時間を節約

 hotel.de社(サイトは多言語対応)は、包括的なインターネットホテル予約サービスプロバイダーである。毎月330万人のビジターがサイトへ訪れ、400万の登録ユーザーを保有する。多くのユーザーは最新の空室状況と宿泊料金が知りたいため、同社はリスティング広告の中に、これらの情報が含まれるべきと考えた。

 最新の宿泊料金が反映された広告は、コンバージョン率やROIを高めるのに非常に効果的である。しかしながら、ホテルの空室状況や宿泊料金が変わる度にキャンペーン、広告グループ、広告文を手動で更新するのは現実的ではない。同社はまさに、このことを実践するが、非常に作業時間を要し、継続的に行うのは不可能と判断する。

 その後、一部のプラットフォームが実装する在庫連動機能を導入することにより、宿泊料金を自動的に広告文へ挿入し、空室状況によって広告文のオン、オフが自動的に行えるようになった。同社のデータベースに何らかの変更があった場合、それがリスティング広告へダイナミックに反映される仕組みだ。その結果、最新の宿泊情報をインターネットユーザーに提供することが可能になった。

 自動化を行うことにより、hotel.de社はキャンペーン管理の作業時間を40%削減することに成功。結果、KPIの設定やパフォーマンスの分析、全体戦略の立案など、付加価値の高い活動に専念することが可能になった。パフォーマンスも上がり、コンバージョン率16%改善、売上20%増加などの成果を実現した。

数学 VS 数学

 前回の記事でも、すべてのプラットフォームの機能が同じではないことを言及した。最適化を裏で支える数学的処理は、良いパフォーマンスを得るためには非常に重要な要素であり、ROIにこだわる広告主にとって競合との差別化ポイントとなる。自動化のためのシステムやルール化はより多くのキーワードの運用を可能とするだけなのに対し、アルゴリズムや予測モデルは、競合を含めた全体の入札状況を精度高く読み取り、適切な箇所に予算や時間を注力することでキャンペーンのパフォーマンスを高めることができる。

 下の図は、異なる自動化プラットフォームの比較を実施した広告主の事例である。一方のツールでは利益の推移が一定で、キャンペーンのキーワード数や利用額は縮小均衡傾向。比べ、予測モデルやアルゴリズムを備えたツールは、キーワードを拡張しつつパフォーマンスの高い箇所に的確に投資することで、利益の倍増とスケーラビリティを実現した。

日本における自動化の傾向

 日本においては、ゆっくりとではあるが、リスティング広告の自動化アプローチへとシフトしつつある。まだ多くの広告主が低予算で、キーワード数も少ないため、手動管理を可能にしている部分もある。ただ、これも徐々に変化が訪れている。より先進的な広告主はキャンペーンを拡大しつつあり、自動化のためのテクノロジーについて、広告代理店に相談し始めているのである。

 ここ数年、デジタルマーケティングはと複雑化する傾向にある。昨今の経済情勢から、マーケターはROIとブランディングの兼ね合いについて真剣に考えるようになった背景もあり、テクノロジープラットフォームの採用が進んでいる。複数のプラットフォームと、それらを使いこなす広告代理店の比較評価を行うことは、上記のトレンドを反映していると言えよう。これらの比較をどのように行うかは重要なポイントとなり、正確な評価を出すにおいて見過ごすことはできない。季節変動、キーワードのスプリットラン、CPC競争、予算消化などは比較テストを実施する際に理解しておきたい。

 DSPやソーシャルが日本においても盛り上がる中、テクノロジープレーヤーも台頭し、それらのニーズに対応しつつある。旧来からオークションで行われているリスティング広告の入札マーケットプレイスに類似するこれらの新しい市場は、SEM担当者の業務が増えることを意味する。なぜなら、新たにアトリビューションやクロスチャネル効果を理解する必要が出てきたからだ。マーケティングチャネルは増え、それまでの縦割りのメディアバイイングやプランニングは日本でも変わろうとしている。メディアのプレースメントやコストと同等に、パフォーマンスを理解することも重要になってきている。

 次回の記事ではDSP市場がいかに成長し、SEMとディスプレイ広告のクロスチャネル効果がROIパフォーマンス向上に役立っているかを解説しよう。

◇特集:デジタルマーケティングテクノロジーの歴史と近未来
世界のリスティング広告自動化の歴史と現状:第1回
異なるアプローチのリスティング広告自動化:第2回
ディスプレイ広告の進化とクロスチャネルの重要性:第3回
Facebookの台頭と高精度化するデジタルマーケティング:第4回
複雑になるデジタルマーケティングにおけるテクノロジーの役割:第5回

【著者】ビル・ラン

エフィシェント・フロンティア(Efficient Frontier)

事業部長兼アジア・パシフィック担当ジェネラルマネージャー

マーケティング業界において15年間、小売りなどの業種のクライアントにおける、データベースマーケティング、オンラインマーケティング・プログラムを企画/実施した豊富な経験を持つ。エフィシェント・フロンティアでは6年在籍。旅行、自動車、金融、テクノロジー、保険などの業界の主要クライアントのデジタルマーケティング戦略・キャンペーン実施をリード。また、エフィシェント・フロンティアのアジア太平洋地域の市場の成長戦略を担当。シカゴ大学(経済学専攻)卒業。問い合わせはsalesinfo@efrontier.comまで。

【翻訳】杉原剛

アタラ合同会社

代表取締役CEO

オーバーチュア、グーグルでの両検索エンジンの広告事業に携わる。現在はアタラ合同会社 代表取締役CEO。Web APIを活用したリスティング広告の自動化/効率化システム開発、リスティング広告体制構築のコンサルティングを行う。また、アトリビューションマネジメント手法によるマーケティング全体最適を提唱しており、欧米の事情にも詳しい。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加