子供や孫の写真を持ち歩く祖父母や親の割合は約7割--カメラ販売店や写真館の運営を手がけるキタムラが2010年に発足した「思いで作り研究所」の調査では、このような高い数字が出ている。
しかしその一方で、祖父母や親に写真を送る頻度を見ると、1年に1度以下、もしくは送ったことがないという人は回答者の6割になったという。
このギャップの理由はどこにあるのか? ネットワーク経由で写真を送れるデジタルフォトフレームは、電源を入れていないため使われていないケースがあり、かといってプリントした写真をいちいち送付するのは、オンラインでの発注をするにも手間がかかる。
これを解決しようと試みるのが、ビットクルー合同会社が10月末にもサービスを始める「Photokul」だ。
Photokulは、カメラ付きの携帯電話やスマートフォンで撮影した画像をメールに添付して指定のメールアドレスに送信すれば、事前に登録した住所にプリントされた現物の写真が配送されるというサービスだ。
写真の配送は月2回、L版15枚まで月額525円。このうち、利用しなかった写真の枚数は、翌月以降に再び利用するまで繰り越せる。また、メール配信時に表題に入力したテキストをコメントとして写真に入れることも可能だ。管理用のウェブサイトもあり、写真の削除や写真とコメントの向きの調整などができる。
ビットクルーの創業メンバーはエンジニアの中野知彦氏、プランナーの時仲ハジメ氏、デザイナーの田鍋亘氏の3名。エンジニア向け勉強会をきっかけに交流を持った中野氏と時仲氏に、もともと時仲氏の友人だった田鍋氏が参画する形で2010年10月に合同会社を設立した。
それぞれ別の仕事を持ちながら、アイデアを出してはボツにすることを繰り返した。「世の中の役に立つか、悪い評価がされないかというところもふまえて、自分たちがやりたいサービスを考えた」(時仲氏)。そして、海外で展開されているサービスなども研究しつつ、Photokulの企画を詰めていったという。「写真をプリントし、送付するのは人に渡すため。だから説明がない写真では仕方ない。そこでコメント機能も導入した」
3人がこだわったのは、徹底した“サービスの単純さ”だ。ビットクルー合同会社デザイナーで共同創業者の田鍋亘氏もサービスのコンセプトについて「世の中で複雑なモノを単純にしたかった」と語る。当初は配送タイミングも月1回か2回で選択できたが、これを1つにまとめた。また写真のウェブ上での共有機能、レタッチ機能なども検討したが、あえて実装せずに誰もが簡単に使えるものに徹したのだという。
機能についてはサービス開始後、ユーザーの声を聞きつつ検討していくが、3人はあくまで自分たちのペースで開発を進めるという。「今は投資を受けるつもりもないし、IPO(株式公開)を目指すわけではない。運用コストとモチベーションを保っていければいい」(時仲氏)
これまで手間だったコミュニケーションを、ケータイとネットの力で手軽にする――最近はソーシャルメディアを使った「オンラインからオフラインへの送客」などが声高にうたわれるが、ネットに毎日触れる世代と触れない世代を結びつけるのは、案外Photokulのようなシンプルなサービスなのかもしれない。
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