イー・アクセスは10月3日、総務省に対し900MHz帯移動通信システムの開設指針に関する要望書を提出、客観的かつ公正な周波数の割り当てを求めていく考えを示した。当日は通信競争政策に関する公開パネルディスカッションも開催され、同社代表取締役会長の千本倖生氏と代表取締役社長のエリック・ガン氏は、集まった識者らの声に耳を傾けつつ、改めて周波数獲得への熱意を示した。
要望書では、申請者の要件として「LTEの900MHz帯への導入」「MVNOに加えて、移動通信事業者に対するネットワーク提供」を挙げたほか、複数申請があった場合の審査基準に「LTE人口カバー率」「MVNOユーザーの自社全ユーザーに対する比率」「SIMフリー端末の自社全ユーザーに対する比率」「提供するエンドユーザー料金とMVNO料金の水準」を提案。必ずしも既存大手3事業者のみが優位とならない基準を採用すべきと訴えた。
後半のパネルディスカッションには、インターネット総合研究所所長の藤原洋氏、慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授の夏野剛氏、同大学大学院メディアデザイン研究科教授の岸博幸氏が参加。通信競争政策に対するこれまでの評価と現状、そして今後どう進んでいくべきかについてそれぞれの立場から意見を述べた。モデレータはMM総研所長の中島洋氏が務めた。
これまでの競争政策については「前例・実績ありきで目新しいことが起きず、新規参入も困難という印象」(藤原氏)、「国際標準に欠けていた」(夏野氏)と厳しい評価が続く中、官僚出身の岸氏が「元々の参考とした電力と比べれば新規参入もあり、料金も低廉化するなど政策全般としては機能してきた」と評価。一方で「既得権益の排除や国際標準への対応など、進化すべきタイミングにはきている」とした。
通信業界の現状について、いわゆる“ガラケー”の生みの親ともされる夏野氏は「通信キャリアが生産台数と価格をコミットし、ひとりリスクを背負いつつ進化していく構造は2007年までの姿。ほぼ同タイミングで入ってきたスマートフォンによって、産業の進化はシリコンバレーに握られることになった」と分析。すでにキャリアや端末メーカー手動で新たなサービスを生みだすのは難しく、キャリアは土管(帯域提供事業者)として生き残りを図るしかないとした。
こうした意見を受け、イー・アクセスの千本氏は「土管屋となれば、ますます周波数の占拠率によって力関係が決まってしまいかねない」と状況を危惧。必ずしも土管に徹するのではなく、プラットフォームレイヤと密接な関係を構築しつつ成長していくとした。また、新規事業者にチャンスを与える構造こそが現状のシリコンバレーを支えているとし、日本でも同様の構造を採り入れていくことで対応してくべきとの考えを示した。
本題でもある900MHz帯も含めた周波数割当の選定条件の今後については、選定作業にも関わる藤原氏が「市場の活性化を目的とするならば、熱意のある事業者を選ぶべき」と提案。岸氏も「(900MHz帯について)オークションというわかりやすい収入の道を選ばないのであれば、成長性などを含めた経済への貢献を重視すべき」と藤原氏に同調した。
夏野氏は「かつて2Gで取得した周波数を3Gでも使用したように、今回も一部を3Gに回したいという本音があるはず」と、本音で議論すべきとの持論を展開。これに対し、千本氏は「総務省の言う世界最先端のワイヤレスサービスを実現すべく、我々はすべてLTEに使うことを明言している。そこは他の割当候補事業者と明確に対立した概念」と主張した。
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