フリーランスで生計を立てるということは、多くのITプロフェッショナルの目標となっているようだが、良いことずくめというわけではない。フリーランスになることで得られると巷で考えられているメリットの多くは、それほど素晴らしいものではないのである。以下の文章(筆者自らの経験に基づいている)に目を通していただくと、筆者がフリーランスに辟易としていると思われるかもしれない。しかし、そのようなことは決してない。それどころかフリーランスでいると、当選した宝くじを換金しているような気分になる日も数多くある(当選金額はさほど大きくないものの、それでも当たりであることに変わりはないということだ)。フリーランスがあなたの目標となっているのであれば、よくある神話に魅せられてではなく、あなた自身のちゃんとした理由を持ったうえで、その目標に向かって邁進していってほしい。
フリーランスになることが金持ちへの道だと考えているのであれば、その考えは改めた方がよいだろう。確かに、適切なタイミングで適切な場所に居合わせた場合、フリーランスで仕事を請け負うことによってかなりの収入が期待できる。しかし、実際のところは他の人々と同様、仕事を続けていくだけで精一杯という状況がほとんどなのである。筆者の周りを見回しても、会社勤めをしていた頃よりも収入の面でずっと楽になったという人はいない。フリーランスという労働形態は、仕事の少ない日々が続き、蓄えも底をついたという時、不安の種にしかならないはずだ。
軍隊は専門分野に特化している。一方、IT業界のフリーランスは、何でも自分でやらなければならない。もちろん、自分なりの専門分野に精通することは可能だ。筆者自身は、ユーザーがソフトウェアをより効率良く利用できるようにするための支援を得意としている。とは言うものの、そういった仕事だけで生計を立てることはできない。そこで他の仕事も引き受けることになるわけだが、プロジェクトによっては退屈さのあまりに思わず寝入ってしまうようなものもある。そして、寝入ってしまうとその間は収入を得られないため、時間当たりの単価が下がってしまうことになる。もっとも、IT業界の変化の速さを考えた場合、フリーランスで働くほとんどの人は、自らの持つ技術を錆び付かせないように磨き続けるという専門技術には特化できるはずだ。
筆者はクライアントに接する際、各クライアントが自分の唯一の上司であると考えるようにしている。つまり、そういった関係を意図的に確立するように仕向けているのである。この場合、クライアントの数だけ上司を持つことになってしまうという短所が出てくる。こういった上司は一般的な上司よりも融通を利かせてくれるとはいえ、最終的には彼らの意に沿うように仕事を進めることになるのだ。しかし、仕事を受けないという選択肢もある--つまり、上司を選ぶことができるわけだ。上司の選択に悩む、人から羨まれるような素敵な立場に身を置けるというのは、フリーランスならではの特権だと言える。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」