クラウドサービス「Evernote」の最高経営責任者(CEO)を務めるPhil Libin氏が来日し、7月21日に会見を開いた。1週間前に5000万ドルもの資金を調達した理由や、日本のパートナー企業から学んだことなどを語った。
Libin氏は大の日本好きで、これまでに幾度となく来日し、日本のユーザーと交流を深めている。それはEvernoteのユーザーにおける日本人の比率が非常に高く、またEvernoteの機能を使い倒すヘビーユーザーの割合が高いからでもある。Evernoteの日本人ユーザーはまもなく200万人に到達し(世界では1000万人)、Evernoteの解説本も現在までに27冊が出版されている。1冊目が出たのは日本版が公開されたとき、わずか1年半前のことである。
日本版公開から1年半で、Evernoteは多くの日本企業とパートナーシップを結んだ。ソースネクストやぐるなび、ぺんてるなどは早い時期からEvernoteと連携する製品、サービスを提供してきた。2011年4月には慶應義塾大学や内田洋行との提携を発表した。
こうした日本企業との関わりが、7月の新たな資金調達ラウンドにも少なからず影響を与えたようだ。EvernoteはSequoia CapitalおよびMorgenthaler Venturesから5000万ドルを得た。Libin氏はこの資金調達の理由について、「Evernoteを今後100年継続する企業に育てたいからだ」とシンプルに説明した。
「我々は即座に会社を売却するといった“出口戦略”はまったく考えていない。Evernoteを使って、人々に人生のメモを残してほしいと願っている。そして、そういった大事な記録が100年先まで残るような努力を続けたい。シリコンバレーのベンチャー企業が『私たちは100年続くビジネスをやりたいんだ』と言うと、たいてい不思議な顔をされる。でも私は100年後もEvernoteがユーザーから愛されることを望んでいる」
なぜそんな目標を持ったのか。そこには日本企業から学んだことがあるからだという。
「日本のパートナー企業の方から支援される中で、常に感銘を受けていたのは、どこの会社も非常に長期的なビジョンを持っているということ。そしてまた日本の企業の在り方として、100年間企業が続くのがそれほど珍しくないことを知った。内田洋行をはじめ、パートナー企業の中には100年以上続いている会社がいくつもある。しかもただ漫然と長期間事業を続けてきただけでなく、今後の100年間どういうビジネスをやっていくかという明確なビジョンも持っている」
Evernoteは7月21日、慶應義塾大学とのパートナーシップによるデベロッパーコンテスト「Japan Prize」の受賞作品を発表した。これはEvernoteと連携するアプリケーションを世界中から募集するコンテスト「デベロッパー・コンペティション」の日本予選も兼ねている。
「最も実用性に優れた連携アプリケーション」部門には、「Ever Finder for Mac」が選ばれた。EverFinderはEvernote内のノートを素早く検索するためのアプリケーション。フルキーボードでの操作、ノートブックやタグの絞り込み、検索結果のデスクトップ表示が可能。Mac App Storeで8.99ドルで販売されている。
「Evernoteの新しい可能性を提示した連携アプリケーション」部門には、「R.O.I」が選ばれた。R.O.Iは、Evernoteのノートへの記録頻度から、人々の関心を可視化するアプリ。
受賞アプリケーション制作者には、それぞれ賞金50万円と、8月18日に米国で開催されるデベロッパー・コンペティションへの招待、会場での受賞作品プレゼンテーション、シリコンバレーでの起業家へのプレゼンテーションやディスカッション機会などが提供される。
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