「すべては現場から始まる。現場目線を持っていることが前社長との違い」――。7月19日に開かれた会見の場で、SI大手日本ユニシスの新社長である黒川茂氏がこう意気込む。黒川氏が注目されるのは、同社にとって初めての生え抜き社長だからだ。
1958年に同社の前身である日本レミントンユニバック(後の日本ユニバック、1988年にバロースと統合して現在に至る)が設立、それ以降、日本ユニシスは筆頭株主である三井物産から社長を迎えている。つまり、黒川氏が「50年の歴史で初めてプロパーの経営トップ」になる。
「仕事は明るく楽しくがモットー」という黒川氏は1974年に日本ユニバックに入社。長らく金融分野のシステムエンジニア(SE)としてユーザー企業に常駐したり、大規模プロジェクトの現場を経験したりしている。2008年に執行役員に就任し、2009年からは2年間、経営企画部長も兼任、この6月に代表取締役社長に就任している。
黒川氏は、IT投資の抑制や市場規模の縮小、競争の激化という外部環境にいかに対応していくかという課題を認識。売り上げを拡大していくために、ユニシス自身がスピード感を持ってユーザー企業に対応していくこと、ユーザー企業のITの全体最適化を狙っていく中で、プライベートクラウドに注力していくことを明らかにしている。
日本ユニシスの2012年3月期の売上高の目標は2550億円、2011年3月期実績の2530億円のほぼ横ばいを目指す。黒川氏は「前年並みを死守して、早く(売上高)3000億円に持っていきたい」と今後を見通している。
この数年SI業界では売上高3000億円が生き残る条件といわれており、日本ユニシス前社長の籾井勝人氏も3000億円を基準にして、2006年からは規模を拡大させるためのM&A戦略を打ち出した。その一環としてネットワークインテグレーターのネットマークスやコンサルティングのケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズを買収している。
しかし、2008年のリーマンショック以降、国内企業はIT投資を抑制。こうした外部環境の大きな変化により、日本ユニシスの業績は2008年3月期を頂点にして、大きく減少している(図)。こうした状況でトップになったのが黒川氏だ。
黒川氏は、この数年の業績を踏まえて「現場の活力がなくなっていることが業績に表れている」と説明。「現場目線で現場と一緒にやっていく」と現場重視で経営していくことを強調している。
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