ヤフーCUが失敗した理由、LinkedInが成功する根拠--伊藤穰一氏に聞いた - (page 2)

鳴海淳義 (編集部)2011年07月05日 17時36分

--日本ではヤフーがLinkedInを参考にビジネス用SNS「CU」を開設しましたが、1年たたずに閉めました。ユーザーが思ったように集まらず、事業化の見通しが立たなかったようです。日本でこの種のサービスはうまくいかないのでは。

 基本的にLinkedInのことを理解していないですね。彼らはビジネスマン用のSNSを作っていた。でもLinkedInはSNSじゃないんですよ。SNSじゃなくて「ビジネスネットワークを使ったプロダクティビティサイト」で、本当の意味のユーティリティなんだよね。

 みんなビジネスマン向けのmixiみたいなものを作ろうとしていたけど、そういうサイトはオープンすると、どうしてもフレンドを増やすゲームみたいな状態になって、中途半端だった。

 一方でLinkedInはめちゃくちゃフォーカスされている。結局SNSというのは人を増やして、バリューを生み出さないと意味がない。だからFriendsterも駄目になった。LinkedInは自分たちのコアバリューにフォーカスして、じわじわとユーザー数を伸ばし、チューニングを重ねてきた。データに基づいて、すごい時間をかけていろいろなフィーチャーを作ってきた。だからぱっと見ると、ほかのSNSと似ている部分もあると思うが、使ってみると中身は全然違う。

--2007年に一度デジタルガレージと日本展開に関する基本合意があった。日本版サイトの開発を発表するまでに3年以上時間があいた理由は。

 米国ではずいぶん議論して、日本に進出するタイミングを考えていた。日本はビジネスのやりかたも違うし、難しいマーケットじゃないですか。だからやるんだったらちゃんとやらないといけない。LinkedInはけっこう真面目な会社なので、世界にプッシュできると思ったタイミングが今年だった。今年のはじめくらいに日本市場に本気で取り組もうと動き出した。

--日本進出にあたってデジタルガレージの役割とは。

 まだ細かいところは決めていない。まずはデジタルガレージが広報やマーケティングといった周辺のサポートを担当する。

 僕はアドバイザーとして半分以上の時間をLinkedIn日本語版のローンチまでは費やす。その後もずっとアドバイザーを続ける予定。日本チームのリクルーティング、プロダクトの内容を考える。

--日本語版では、日本独自機能などは予定していますか。

 たぶん日本人のために多少のインターフェースは変えられると思うけど、グローバルネットワークと同じデータベースを使うので、日本で何かを発見してそれを世界に発展させるということになると思う。言語はもちろん日本語化しますが、他に具体的にグローバル版とすごく違うというところはたぶんないでしょう。

 ただ外部企業との組み方やパートナーシップのあり方は米国とは違うかもしれない。米国では最初はリクルーティングをメインの機能としていたが、日本はたぶんリクルーティングは重視しないで、自分の仕事をよりプロダクティブにするような機能をメインフィーチャーにしていく。使ってもらえばいろいろフィードバックが出てくると思うので、それらを取り入れていきたい。

--LinkedInの収益の方法は。

 現在、広告とプレミアムアカウントとリクルーターはじめ就職関係の人たちの専門ツールがあります。サイト内広告はターゲティングできるので好評です。プレミアムアカウントでは、直接人にメールが出せるとか、自分のページを誰が見にきたか詳細に把握できるようにするとか、けっこういろいろな機能がある。

 日本では売り上げよりもまずユーザーを増やさないと、そもそものバリューが出せないので、ユーザー数増加を優先して考えたい。

--ユーザーを増やすための施策は。

 いろいろやる必要があると思う。広報やイベント、あとはメディアパートナーも重要。米国ではクチコミでずいぶん広まった。コアユーザーが使って、クチコミで広がるのが一番いい。日本ではどうするかデータを見ながら考えたい。ただし簡単な方法はないと思っている。

--メディアパートナーというのはどういう役割ですか。

 彼らのサイトにLinkedInのツールを埋め込んだり、LinkedInのサイトに彼らのコンテンツを掲載したりというのがメインになると思う。ぜひCNET Japanもどうですか。

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