キーノートセッションで登壇したMicrosoftのBing担当ディレクターであるStephen Weitz氏は次のように述べた。
人間は意思決定においては感情的である。8割の人は、誰かと相談するまではオンラインでの購入の意思決定を引き延ばすそうだ。だからソーシャルの情報は検索にとっても重要だとしている。幸い、ソーシャルが普及したことで、人類はウェブのあちこちで足跡を残している。Facebookの投稿数は今や月間3000億あるという。検索エンジンは今、知っている人のデータを検索結果に使うことができる。Bingに関しては以下の3つの分野に特に注力している。
ソーシャルは検索の質を高める、ほんの一部の要素でしかないとしているが、Facebookとの連携については、提携発表から時間はかかったものの、今後は加速していくと述べているし、Facebookとよい取り組みが今後もできるといった強い自信が垣間みられた。
Bingは「意思決定のための検索エンジン」(Decision Engine)を標榜しており、Facebookのデータを活用し、「友達と一緒に意思決定する」ということができる点を、Googleに対する差別化にしようとしている。
巨大かつ強大なGoogleに対抗するためには当然の戦略だが、やはりFacebookのデータは強力で、Bingの検索結果は以前よりも磨きがかかっているように思う。実際、検索シェアは今のところあまり変化がないそうだが、Facebookのいいね!を取り入れるようになってからBingユーザーのインタラクションは格段に増えているとのことなので、今後ジワジワとシェアにも変化が出てきてもおかしくはないと考えられる。
企業間では競合する場面が目立つが、FacebookとGoogleの親和性に注目し、キャンペーンで成功を収めた広告主も出てきている。フォルクスワーゲン・アメリカのSara Devine氏が、「Facebook Ads, Meet Search Ads」セッションの中で、アメフトの祭典スーパーボウルのTVCM(車種はパサートとビートル)に合わせたオンラインキャンペーンで、Facebook広告とGoogle AdWords広告、YouTube動画をいかに連携して成功したかを発表していた(パサートのTVCM公式動画)。
結果としては以下の通りである。
予算も潤沢で、かなり大規模なオンライン/オフライン連動キャンペーンだが、ソーシャルと検索の親和性、想定されるユーザー行動を理解し、徹底して網を張り、効果を挙げた好例である。
eMarketerの最新調査によると、Facebookの2011年の米国におけるディスプレイ広告の純収入は80.9%増の21億9000万ドルとなる見込みで、Facebookは、2011年のオンライン広告市場で17.7%のシェアを握り、トップに躍り出ることが判明している。まさに破竹の勢いであるが、フォルクワーゲンのような検索との連動利用も今後増えていくことが想定される。
検索エンジン大手が今後進むと思われる方向性や、広告キャンペーンにおいてソーシャル活用が増えていくのを見ると、ソーシャルなくしての検索はいよいよなくなってきたことを実感する。
SMXのような検索エンジンに特化したカンファレンスで年々ソーシャルが取り上げられる機会が増えているのも理解できるし、今後も当面はこの流れは変わらないだろう。今までのように、検索単体での考え方は、もはや変えるタイミングなのだろうと思う。
オーバーチュア、グーグルでの両検索エンジンの広告事業に携わる。現在はアタラ合同会社 代表取締役CEO。Web APIを活用したリスティング広告の自動化/効率化システム開発、リスティング広告体制構築のコンサルティングを行う。また、アトリビューションマネジメント手法によるマーケティング全体最適を提唱しており、欧米の事情にも詳しい。
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