--3月18日に無償化に踏み切られたわけですが、震災から1週間の間の議論ということでしょうか。
宮沢 実は1日なのです。しばらくは、自宅待機の期間がありました。自宅待機で、ダウンロード数が増えていることすらも最初はわからない状態でした。スタッフとはケータイメールなどをやりとりしながら、なにができるかを考えていました。ダウンロードの多さに気がついたのは、出社してからなので3月17日。Twitterの反響もすごくありました。その間に無償でやると決め、1日でリリースまでこぎつけました。無償化しようといってから、決定までが早かった。
神宮司 無償でやろうと言えた理由の1つは、地図とアプリの両方を自社で一気通貫でやっているからです。もし、協業してたら調整が必要ですし、アプリだけしか持っていないということであれば、まず地図会社に聞いてから、というふうになる。弊社で決めて動けるのはメリットですね。そこは勉強になりました。
--無償提供後の反響はどうでしたか?
神宮司 一日すごかった(笑)こうも(ダウンロード数が)上がっていくのかなと、人ごとながらアップルのサーバは大丈夫かなと思うほどでした。
--ダウンロード数はどのぐらいだったのでしょうか
宮沢 (規約上)非公開とさせていただいています。かなりの数で、何倍どころではなく、今までのユーザー数がちっぽけに思えるぐらいです。
神宮司 iPhoneを持っているかなりの人数にダウンロードしていただきました。10人に1人レベルでなくて、3人に1人とか2人に1人というレベルです。
--それは予想していましたか?
宮沢 まったくそこまで予定していませんでした。予想を超えてしまったので、サーバを増強しました。公開後に連休がありましたので、監視チームには休みの間もサーバを見てもらって。自宅待機もあったのですが、電話をかけたり携帯電話のメールなども含めて連絡を取り合いました。
神宮司 ユーザーの評価を見ていると、検索が遅いという評価があったりするんです。ところが、ユーザーがユーザーの批判を打ち消してくれる。文句言うなと言ってくれたり、でも、こういうところで使いやすいじゃないかと言ってくれたり、さらには被災地のボランティアにこれを使って行けたというコメントがあったりして、本当によかったなと。
--ほかにどのような声がありましたか?
宮沢 想定していなかったものとしては、その分を義援金に回そうという声があったことですね。
神宮司 議論をしたとき、安くする代わりに義援金にあてるということも考えたんです。でも、私たちが義援金にあてるより、無償化することでユーザーがその分を義援金にあててくれればいいと話していたら本当にそうなった。実は、ダウンロード自体は、九州など被災地でない地域でもダウンロードされているんです。そういう人も、そのお金を義援金に充てますと言ってくれるなど、そういう意味では社会貢献的なことを手伝えてよかったなと思いましたね。
--話を伺っていると、社長が気軽に会議に参加されているようなのですが、それは非常事態だからでしょうか。それとも日常的ですか?
神宮司 実は、担当の後ろに回ったりするのが好きなんです。フロアを見えてもらえれば分かりますが、高いパーティションはありません。誰がここで話しているのはわかる。悩んでいるなとか、違う話をしているなとか(笑)ただ、話し合うという文化はもともとあります。今回の件は、僕は『やれ』と背中を押しただけです。
--今回、無償化したことでかなりのユーザーを獲得できた面もあります。次の展開についてどうお考えですか。
神宮司 先ほども議論をしていたのですが、社会貢献として無料でやって、たまたまサービスが受け入れられた。これをすぐにビジネスに変えようと思っても甘くはないし、おこがましいところもある。まず、本当にいろいろな人に使ってもらえたので、さまざまな意見がもらえたという価値がある。これまでローカルで使えることを訴求していたけれども、こんなに認識してもらえたことはないなと。今回、受け入れられた理由はそこにあるので、そこを実直にやっていったらどうかと考えています。次の商品でもっとユーザーに使いやすい商品を訴求するひとつの材料にしたいですね。
--2300円という価格は、iPhoneアプリとしては高額の部類に入るかと思うのですが、今後の価格設定についてはどうお考えですか。
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