朝日新聞社は5月18日、PCやiPad、Android OS搭載スマートフォンで朝日新聞の記事が読める有料の電子版サービス「朝日新聞デジタル」を開始した。PCはブラウザで表示でき、iPad、Android向けにはそれぞれ専用アプリが用意されている。
朝日新聞デジタルの購読料金は2コースに分かれる。朝日新聞を宅配で定期購読している場合はその金額に加えて月額1000円を支払う「ダブルコース」と、デジタル版のみを購読する場合は月額3800円を支払う「デジタルコース」がある。いずれも1契約(同一ID)で複数端末の利用が可能で、同居の家族も利用できる。
購読は総合ガイドのサイトから申し込むが、いずれのコースの場合でも、決済はクレジットカードのみで、購読するためには朝日新聞社が運営する課金・認証サービス「Jpass」への登録が必要になり、JpassのIDでログインする。2011年7月末まではお試し期間として、この期間中に解約すれば料金はかからない。
朝日新聞デジタルの最大の特徴は、「(主要見出しなどの)リストの羅列ではなく、紙の新聞のようにニュースの価値判断をして編集し“面”で表示していくことだ」(朝日新聞社役員待遇デジタルビジネス担当兼コンテンツ事業本部長の佐藤吉雄氏)とし、新聞のように面をめくる感覚にしたが、単純に紙の新聞をそのままPDFにして配信するわけではない。
こうした面の展開をするうえで、コンテンツは3つの「刊」として配信される。24時間体制で世界の動きをリアルタイムで速報する「24時刊」、1日200本を超える朝日新聞の夕刊と朝刊最終版ニュースを編集して毎日早朝に配信する「朝刊」、ストレートニュースではなく財界やスポーツ界、文化人などのコラムを中心に配信する「You刊」がある。これら3つのパッケージはそれぞれ、大型記事目玉記事などを選択し、その関連記事なども収集して構成。独自の面として編集する。こうして編集されたコンテンツは、各端末の画面に最適化した独自レイアウトで表示される。
このほか、機能としては以下が用意されている。
佐藤氏は、「私たちが目指すのは紙と電子のコラボレーション。創刊から132年になる長い編集経験の蓄積と、生まれたばかりの新しい電子版が相互に補完し、発展し合う新しい時代の新しいメディアの姿をハイブリッド型メディアと名づけ、この姿への進化を目標にする」と語り、まずは来年度中に10万人の登録会員数を目指す。
また、佐藤氏は1面タイムマシン機能を例に挙げながら、朝日新聞デジタルはもともと「ハリー・ポッターに出てくる魔法の新聞がモチーフだ」とした。機能だけでなく、デザイン面でも各所に意識されている。同氏は「現在1つの記事に最大7枚の写真を掲載できるが、写真は順次動画にしていきたい。今後テレビ機能を持つ日が来るかもしれない」と続けた。なお、面や記事に埋め込まれた再生ボタン付画像をクリック、またはタップすると、動画がそのまま再生され、拡大することもできる。
今回の朝日新聞デジタルでは、コンテンツ面の他に、販売や営業面でも試行錯誤が重ねられたようだ。朝日新聞社取締役販売担当の飯田真也氏は「販売店は全国約3000店舗(ASA)、系統店以外も含めると5000店舗あるが、デジタルの発行に関してはこれら販売店の協力がないと成功しないと考え協議を重ねてきた。その結果、世の中のデジタル化の流れは避けて通れないと認識した上で、紙とデジタルを競合させるのではなく、双方が複合したビジネスモデルができるのではないかという結論に達した」と説明した。そして、今後の朝日新聞デジタルの営業に関しては、デジタル部門のみならず、新聞販売局も販売店も積極的に展開していくという。
そして、一連の説明においてコンテンツや機能、販売、営業に関して、大いに参考にしたのが、先行して有料化、課金化した日本経済新聞社(日経)だという。
飯田氏は続ける。「紙とデジタルが食い合うとは考えていない。併売していく。日経新聞をASA3000店舗で販売(日経の発行部数約300万部のうちの4分の1程度)しているので、その店舗で起きた課金に関する苦情などいろいろなケースを1年かけてじっくり研究してきた。日経の課金モデルと違うのは新聞代の徴収は従来どおり販売店で、デジタルはクレジットカードで、と分けていること。さらに、日経は新聞とデジタルを別々の組織にしたが、私どもははじめから紙もデジタルも一緒に営業展開している」
また、今回iPhone版は登場しなかったが、アプリは既に開発しており、現在審査中だとしている。決済方法やログインIDなどの仕組みはアップルと折り合うのかという問いに関し、「審査中」として明言は避けた。
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