伊藤穣一氏インタビュー--MIT Media Lab新所長に聞く - (page 2)

Daniel Terdiman (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2011年05月09日 07時30分

--すでにお答えいただいている感じがしますし、当たり前の質問かもしれませんが、MIT Media Labの所長になろうと思ったのはなぜでしょうか。

伊藤氏:主な理由は、創造的で野心的に考える力を持った、聡明で素晴らしい学生や研究者が非常に多くいること、そして訪問した際に、その場のエネルギーに非常に共感したことです。それが一番の理由です。また、Media Labが探していた、所長という地位に対するニーズや役割の一部に合ったスキルを、わたしが蓄積していることがありました。MIT Media Labは、わたしがこれまで関心を抱いてきたことほぼすべてを続けさせてくれますが、あらゆるものを強化する基盤を備えたコミュニティーの中で続けることになります。また、内面が豊かで深みのある人々に、コンテクストを提供することにやりがいを感じます。わたしは聡明な人々との交流を通して学んでいますし、自分の考え方に刺激を与えてくれるメンターや友人に囲まれていたいと思っています。わたしからの通常のアウトプットは、コンテクストやつながり、そして全体的な道筋やビジョンといったものです。したがって、MIT Media Labはそうした活動にも非常に向いています。また、研究者、理論、ビジネス、短期的なもの、長期的なものなどのバランスがうまくとれています。

--特に関心を持っているのは何か、一通り教えてもらえますか。

伊藤氏:興味のある順番というわけではありませんが、ダイビング、人権、イノベーション、著作権、インターネット政策、メディア、アート、中東地域、心理、ビデオゲームです。実際のところ、ほとんど何にでも関心があります。興味のないものは何か、考えようとしているくらいです。

--Media Lab参加についてのブログ記事の中で、電波状況がかなり悪い携帯電話越しにNicholas Negroponte氏と初めて会話したことについての書きぶりが好きでした。この素晴らしい機会がひどい電波にかき消されてしまうのではと心配ではありませんでしたか。

伊藤氏:そうですね、課題はあります。われわれが良好な関係にあるのは確かです。互いに対して大いに期待しています。それはいいことですが、インパクトをもたらすという点では、細かいところに難しい点があります。例えば資金調達などの問題です。すべきことは数多くあります。わたしは学術機関で働いたことはありませんし、Media LabやMITもわたしのような人と一緒に仕事をするのは初めてです。難しい問題に直面することになるでしょうが、誰もが全力を尽くすだろうと考えています。MITの上級管理職の多くにも会いました。Media Labの人々だけでなく、みな非常に協力的でした。それは常に心強いことでしたし、大きな後押しになりました。

--Media Labが既に重要で偉大な研究所であることは明白ですが、同研究所でご自身の特色を出すためにまずはこういうことをしてみたい、と考えていることはありますか。

伊藤氏:わたしはインターネットによって、世界とコミュニケーションをとる方法が変わったと考えています。Media Labはインターネットに関連するさまざまなものを発明しましたが、公開されているツールをすべて利用しているわけではないと思います。Creative Commonsのようなオープン性と共有、さらに実現し得る外部コミュニティーの構築などがあると思います。Media Labを訪れてみて、極めて作業に没頭しやすい環境であることがすぐに分かりました。しかし、その中にはもっと開放したり、外部とつながったりできるものもあると考えています。共同作業をしないということではありませんが、拡大の余地はあります。また、シリコンバレーをはじめとする世界のほかの地域とのつながりを強化することも、できるかもしれません。非営利団体は、もっと多くのつながりを持てる可能性があります。Knight Foundationとの関係のようなつながりもいくつかありますが、特に社会企業家が非営利団体の分野で重要になりつつあることを考えると、今よりもはるかに多くのつながりができる可能性があります。そこには相性のいい関係が存在すると思います。しかし実際には、現状に関する理解と認識を深めてから、もっと多くのことを決めるつもりです。多くのことを推奨する前に、理解を深めたいと考えています。

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