Evernote、日本での利用動向や企業との取り組みを語る

岩本有平 (編集部)2011年04月20日 22時09分

 Evernoteは4月20日、都内で発表会を開催した。パーソナルクラウドサービス「Evernote」のAndroid向けアプリケーションの最新版となる「Evernote for Android」バージョン3を発表したほか、国内企業とのパートナーシップについて紹介した。

 発表会で、EvernoteのCEOであるPhil Libin氏は、東日本大震災の被災者に対して見舞いのコメントをした上で、「我々が何ができるかを考えた」とコメント。すべての無料ユーザーを対象に、本来有料であるプレミアムユーザー向け機能を1カ月間無料で提供したことを説明した。「この時期起きたことを整理して、可視化し整理すること。それを復興に役立てるだけでなく、将来に伝えていきたい」(Libin氏)。さらに、同月の国内プレミアムユーザーからの売上12万ドル弱をカリフォルニア日本文化コミュニティセンター経由で被災地に寄付したと語った。

Evernote CEOのPhil Libin氏 Evernote CEOのPhil Libin氏

ビジネスの環境を変えた5つの要素

 震災のような困難はあるが、Libin氏は現在同社を取り巻く環境について、「ビジネスをする上でユニークな時期。コンシューマーソフトウェアカンパニーとしては最高の時代」だと語る。Libin氏は5年前の環境と比較し、(1)販売方法やロジスティクスを意識せずにソフトを販売できる「AppStore」、(2)起業のためにサーバやインフラを整える必要性をなくした「クラウドサービス」、(3)サービスの基礎部分を無料で入手できる「オープンソースインフラストラクチャー」、(4)すばらしい製品であればそれを伝えてくれる「ソーシャルメディア」、(5)ベンチャーと大手での価格競争の心配を解消した「フリーミアム」--この5つの要素があるために、企業が製品作りに集中できると語る。Libin氏はこの5つの要素について「Geek Meritocracy」と表現する。「このGeek Meritocracyがなければ、FacebookもDropboxも成功しなかったと思う」(Libin氏)

 Libin氏によると現在Evernoteのユーザーは全世界で870万人。毎日新規ユーザーは2万人増加しているという。またそのうち91%はブログやTwitterでEvernoteを知り、直接Evernoteのアプリをダウンロードしている。残り9%のうち8.4%はデバイスにバンドルされたものを利用し、広告やプロモーション経由で集まるのはわずか0.6%だという。

 また、米国についてアクティブな利用をするのが日本のユーザーだという。現在日本のユーザーは150万人。これは全ユーザーの17%に当たる。しかしアクティブユーザー数の割合で言えば、全体の38%をしめる1位の米国に次ぐ28%という割合になるのだという。

 こういった背景もあり、Evernoteでは日本のマーケットを非常に重視している。同社では急増するトラフィックに対応するため、本社データセンターとのネットワークプロバイダにNTTコミュニケーションズの「グローバルIPネットワークサービス」を採用したことを明らかにした。

クラウド時代のビジネスモデルは「時間がたつにつれ、商品の価値が上がる」

 Libin氏はまた、クラウドサービスが、消費財のように「時間がたつにつれ、商品の価値が下がる」というものや、メディアビジネスのように「時間がたっても商品の価値が変わらない」といったものとことなり、データを蓄積することで価値が最大化する、つまり「時間がたつにつれ、商品の価値が上がる」商品であると語る。事実、同社のプレミアムユーザーの割合を見ると、利用1カ月では1%程度だが、12カ月では8%、サービス開始間もなく利用した36カ月のユーザーでは23%に上るのだそうだ。

  • Evernoteのユーザー数

  • 国別でのアクティブユーザーの割合

  • 利用期間ごとのプレミアムユーザーの割合

 ここでLibin氏はAndroid用アプリを紹介した。共有ノートブックの閲覧、編集機能をはじめ、FacebookやTwitterとの連係機能などが追加されたと説明した。Windows版も先週アップデートしているが、今後はMacやiPhone、iPad版についてもアップデートしていく予定だ。

国内のパートナーも続々製品を展開

 Evernoteのパートナー企業は、現在世界で4000社。そのうち33%が日本のパートナーだという。Libin氏は、国内で直近に展開された製品を紹介した。詳細は以下の通り。

  • キングジム:iPhoneアプリ「SHOT NOTE」
    専用メモ帳に書いた内容を撮影し、画像を補整した後に、Evernoteにアップロードできるメモ帳管理アプリ。メモの日付や番号はODRで処理するため、検索も用意にできるという。
  • ぺんてる:「airpenPocket」
    ノートに書いた筆跡をワイヤレスでPCやEvernote、スマートフォンなどにアップロードするデジタルペン。
  • 内田洋行:「書撮りくんEN」
    ホワイトボードをスキャンしOCRで処理した上、接続したAndroid端末を経由してEvernoteに内容をアップロードする。5月10日よりベータ版を提供。6月20日より販売を開始する。
  • リコー:「App2Me」
    デジタル複合機とPCを連携するウィジェット「App2Me」を利用。共用の複合機から個人のEvernoteにスキャンした内容をアップロードする。
  • Busica:「Evernote for SHARP MFP」
    シャープ製カラー複合機にEvernote連携ソリューションを組み込み、操作パネル経由でEvernoteへのファイリングに対応。
  • 富士ゼロックス:「netprint」
    コンビニエンスストアのコピー機でiPhone内のドキュメントなどを印刷できるiPhoneアプリ「netprint」で、Evernoteの連携機能を追加。Evernote上のドキュメントをコンビニで印刷できるようになった。
  • 東芝:「TOSHIBA BulletinBoard」
    同社PCのプリインストールソフト「TOSHIBA BulletinBoard」にEvernoteを連携。家族や友人などで掲示板の情報などを共有できる。
  • ジャストシステム:「ATOK Pad for iPhone」
    日本語入力システムATOKをiPhoneで利用できるメモアプリ「ATOK Pad for iPhone」にEvernoteの同期機能を用意。PC向けメモアプリ「ATOK Pad for Windows」とドキュメントの共有を実現。
  • マピオン:「マピオン」
    地図サービス「マピオン」にEvernoteのクリップ機能やサイトメモリ機能を搭載。マピオンの地図や主要スポットの情報などを緯度経度付きでクリップできる。
  • 楽天トラベル:「楽天トラベル」
    旅行情報サイト「楽天トラベル」にEvernoteのサイトメモリ機能を搭載。
  • PFU:「ScanSnap」
    スキャナ「ScanSnap」シリーズでスキャンした際、Evernoteへのデータ連携機能を提供 。

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