セーラー万年筆は3月31日、スマートフォンやタブレット端末向けのリアルタイム、双方向コミュニケーションプラットフォーム事業に参入すると発表した。同事業を推進する子会社として、セーラーC モール(略称、セシモ)を4月1日付けで設立。代表取締役には、セーラー万年筆社長の中島義雄氏が兼務で就任する。事業開始日は5月1日を予定している。
同社では、フライトシステムコンサルティングと共同でコンテンツ保有事業者向けのコミュニケーションプラットフォームを提供。これによってユーザーが多種多様なサービスを享受できる電子モールのような世界を構築できるとしている。BtoBtoC型のビジネスモデルにより2011年夏からサービスを開始し、将来的にはアジア各国をはじめとする海外展開も視野に入れているという。なお、セーラー万年筆とフライトシステムコンサルティングは1月19日に業務提携を発表している。
中島氏は、「当社は、今年創立100周年を迎え、長年にわたる万年筆の販売を通じて、シニア層に対する高いブランド認知力を持つ。明治、大正、昭和生まれの世代には知らない人はいないブランド。これまで当社が取り組んできた万年筆もシャープペンシルも、伝達するというニーズに応えたものであるが、昨今では手紙がメールに変わるように、伝達環境が変わり、書く文具以外のものも必要になってきている。次の100年に踏み出すということで、2010年から第1弾として音声ペンシリーズ、録音ペンシリーズを商品化しているが、スマートフォンやタブレット端末が急速に増えていくなかで、新世代の情報端末を使いこなす、新世代の消費者を取り込みたい事業者向けの新サービスを展開する」と、セシモの事業を位置づけた。
具体的には、スマートフォンユーザーやタブレット端末ユーザー向けにコンテンツ配信を希望する事業者を対象に、物販・サービス事業提供機能、クレジットカード課金機能などを、モジュール化したアプリケーションとして提供する。これらの中から必要な機能を組み合わせることで、セミカスタマイズによる自社アプリケーションの開発が可能になり、開発費用の削減とともに、短期間でのサービス開始が可能になるという。
用意されるモジュールは、予約カレンダー、メンバーリスト、電子カタログ、画像共有、電子書籍、ノート作成、クレジットカード課金などに分類されている。
プラットフォーム開発では、フライトシステムコンサルティングと協業し、事業者の顧客特性にあわせたサービス企画と、コンテンツ伝達用インフラを提供していく。また、クレジットカードの課金機能については、iPhone向けクレジットカード決済ソリューション「ペイメント・マイスター」などで実績を持つ同社のシステムを活用する。
フライトシステムコンサルティング社長の片山圭一朗氏は、「月額継続課金、スポット課金にも対応でき、さらにクレジット番号を保持せずに利用できるという機能がある。当社が持つコミュニケーション機能と課金機能を活用していきたい」としている。
セシモでは、語学学習や趣味講座などの教育分野への展開のほか、ファッションなどの通信販売、不動産、医療健康情報サービスなどへの展開を考えているという。
これにより、事業者は、通販用カタログの印刷、郵送費用の節減が可能になるほか、双方向のテレビ電話機能とチャット機能を併用した語学学習を、好きな時間に、好きな場所で受けられるといったサービスを実現できるという。また、3次元画像での商品ディテールの紹介、店員からの専門的な商品説明やアドバイスをリアルタイムで提供できるなど、売り手と買い手の双方が安心してコミュニケーションできるインフラが実現できるとしている。
セシモでは、2013年までの3年間で、同社のプラットフォームで最低でも100万人のユーザー利用を想定。新規市場として、300億~500億円を創造し、そのうちセシモの売上高を10億~30億円程度と予想している。セシモのプラットフォーム上でのアプリケーションあたりの利用金額は、300~2000円程度を想定しているという。
セシモの取締役に就任する、セーラー万年筆電子文具事業部長の小柳洋氏は、「シニア層でも直感的に利用できるのが、キーボードがないタブレット端末、スマートフォンの特徴。それを生かしたサービスを提供するプラットフォームを目指す。自宅にいながら囲碁の対戦ができるといった使い方、外出せずに自宅から買い物ができる、あるいは、複数の事業者が参加することで、一日の生活をサポートするサービスとしても利用が想定できる。1月に、フライトシステムコンサルティングと提携を発表したが、同社の開発力を生かし、プラットフォームとして活用したいと考えた」と述べた。
学校や幼児教室などの「教育」、病院、在宅介護などの「医療・福祉」、社内会議などの活用を想定した「企業・自治体」、対戦型ゲームや占いなどの「レジャー」、料理教室や茶道、華道などの「趣味・稽古」といった領域での利用を想定しているという。
「すでに物販事業者などと具体的な話し合いを開始している。異業種の企業がひとつのモールに集まることで、相乗効果があり、ユーザーが統一した課金システム上で利用できるというメリットがあるという声もあがっている」(小柳氏)
なお、新会社の社名である「セーラーC モール」の「C」には、「Culture」「Campus」「Content」「Community」「Communication」「Collaboraion」といった意味を込めており、「常に時代の風を感じとり、新しい価値を製品化することによって幅広いニーズに応える新たな新サービスの創出につなげる」としている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」