転職活動を行う際、コネに頼ると言っても、身近な知人や親戚に頼るだけでは不十分な場合が多い。本記事では、さまざまな数字を挙げながら、その理由について解説する。
景気回復の兆しが見え始め、企業の採用活動が再び活発化しようとしているなか、転職活動を始めようと考えている人々も数多くいるはずだ。こういった人々には、膨大な数のIT技術者も含まれている。彼らは、レイオフの憂き目にあった同僚が担当していた仕事を残業でこなすという生活から逃れたいと考えているのである。
こういった転職活動はほとんどの場合、家族や親しい友人といった個人的なコネに頼るところから始まる。しかし多くの場合、一般の人の人脈はそれほど広くないため、職探しはあっという間に行き詰まってしまうはずだ。
ほとんどのウェディングプランナーや葬祭ディレクターは、一般の人が持つ人脈の規模を250人程度だと考えている。250人もいれば職探しには十分だと思うかもしれないが、その中には家族や親戚も数多く含まれているのだ。強力なコネなど持っているはずがないという決めつけは、誰に対しても行うべきではないものの、あなたの家庭環境や家系によって、家族の持つ人脈の規模は大きく左右される。あなたの家族が会社を経営していたり、家族に企業の幹部が1人ないし複数いるという場合にはコネを当てにしてもよいかもしれないが、多くの人々にとって家族は仕事を紹介してくれる存在というよりも、感情面でサポートしてくれる存在と言った方がよいはずだ。
これは、昔から言われている「80/20の法則」(成果の80%は、それに費やした努力の20%によってもたらされる)をひとひねりしたものである。80/20の法則を人脈に適用しようとしても、手近な20%の人脈はその20%のなかで重なり合っていることが多いため、そのままでは適用できないと言ってもよいだろう。実際のところ、有効なコネはその次に控えている20%に含まれていることが多いのである。
このことは、社会学者のMark Granovetter氏が1973年にAmerican Journal of Sociologyで発表した「弱い紐帯の強み」(The Strength of Weak Ties)という論文でも明らかにされている。ボストン郊外における転職者を無作為に抽出して行った同氏の調査では、56%の人々が個人的なコネによって職を得たと回答しており、求職活動における人脈の有効性を裏付けている。しかしこの調査における重要な発見は、そういった回答を返してきた人々のうち、84%が「時々会う人」あるいは「滅多に会わない人」のコネによって職を得たと回答している点にある。これにより、コネに頼って就職しようとするのであれば、親しい人ではなく、「弱い紐帯」に当たる方がよいということが明らかになったわけだ。
しかし、250人の20%というと、どういった基準で選んだとしても50人になる。プロの営業担当者であれば1時間に20本程度の勧誘電話をかけることができるが、知人に電話をかける場合、「旧交を温めるための世間話」で話が長引くはずだ。1時間に5本の電話をかけ、必ず相手につながると仮定しても、あなたの人脈における「弱い紐帯」すべてに電話をかけるには、10時間程度必要となるわけである。
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