一般用医薬品のネット販売を規制する厚生労働省(厚労省)省令の取り消しなどを求めた、ケンコーコムとウェルネットによる行政訴訟の第3回口頭弁論が、2月17日に東京高等裁判所で開かれた。
2009年6月施行の改正薬事法で、一般用医薬品は副作用のリスクに応じて第1類~第3類に分類された。そして厚労省の省令により、販売時に情報提供を義務づける第1類、情報提供の努力義務が求められる第2類の医薬品については、ネット販売が禁止された。
離島在住者や同じ医薬品の継続利用者に限っては、第2類の販売を2年認める経過措置をとったが、この経過措置もいよいよ5月末に期限を迎える。ケンコーコムらは2009年5月に行政訴訟を行ったが、一審では訴えが棄却、却下されている。
第2回の控訴審では、一審で問われてきた“ネット販売 対 対面販売”という観点での安全性や正当性の是非を判断するのではなく、省令の施行前後で薬害や医薬品販売時の情報伝達状況がどう変わったかを比較すべきと都築弘裁判長が促した。第3回では第2回までの都築裁判長の異動にあたって弁論の更新がなされたほか、今後の訴訟の方向性について確認がなされた。今後は控訴人(ケンコーコム側)、被控訴人(国側)からあらためて主張がなされ、4月28日に次回の弁論を開催する予定だ。
同日開催された控訴人の記者会見で、ケンコーコム代表取締役の後藤玄利氏はあらためて厚労省の対応について批判した。「国側の反論を見ていると薬害エイズ事件に似通った構造ではないか。当時ミドリ十字という既得権者がいたが、今回も(社団法人日本)薬剤師会や(日本チェーン)ドラッグストア協会が理不尽な規制をしてきた」(後藤氏)
また、一審でも論じられたドイツの状況にもふれ、「ドイツでは医薬品ネット販売が一時期規制されてきたが、日本の立法過程でドイツは違憲の判断が出て、法改正した。厚労省はその事実を知っており、『(法整備中の議論の中で、その報告について)出す』としながら出さなかった」と説明した。
控訴人の訴訟代理人で弁護士の阿部泰隆、関葉子両氏は、第2回控訴審で提出した求釈明に対しての国側の回答を、議論のすり替えばかりであると批判。「たとえば、『(省令の)立法に当たって、調査をしたのか?』と聞けば、自分たちに都合のいい違憲審査基準を出してきて『回答の必要はない』と言う。“答えない”というための理屈を出してきている」(関氏)。
次回の口頭弁論の期日が4月末となったため、同日結審したとしても、5月末の経過措置終了までに判決が出ない公算が高くなった。後藤氏は「経過措置の延長といった可能性もあるため断言できない」と会見後に語ったが、6月以降、離島在住者や継続利用者の一般用医薬品購入が困難になる可能性も否定できない。ケンコーコムによると、経過措置中の現在も、離島在住者や継続利用者に対して月2000件ほど一般用医薬品を販売している状況だという。
◇一般用医薬品のネット販売をめぐるこれまでの流れ
ラウンドアップ:一般用医薬品ネット販売の行方は--ケンコーコム訴訟が3月30日に判決
ケンコーコム後藤氏、ネット販売規制合憲に「極めて不当な判決」「最後まで闘う」
医薬品ネット販売をめぐるケンコーコム控訴審、東京高裁にて第1回目の口頭弁論
論ずべきは「ネット販売と対面販売」でなく「省令施行前後の状況」--ケンコーコム控訴審
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