相手がビジネスの場での小さなグループであれ、一般聴衆であれ、障害を持つ人たちに対する準備はしておく必要がある。優秀なプレゼンテーションのスキルがあり、技術的に健全なプレゼンテーションを行えば、ほとんどの問題は解決できる。しかし、障害者を含む聴衆を対象としたプレゼンテーションの環境を改善する方法は、いくつもある。プレゼンテーションする側の少しの配慮と計画で、障害者も他の人と同じように参加できるようになるのだ。
できることの中でもっとも簡単で、一番助けになるのは、会場の前方に視覚障害者あるいは聴覚障害者のための席をいくつか用意することだ。この席のことを参加者にどう知らせたらよいかは、おそらく状況によるだろう。可能であれば、事前に障害者専用を準備するといい。この方法なら、アナウンスしたり看板を出したりして、障害者が不必要に注意を引くのを避けることができる。これには、席の背中に「指定席」という紙を貼っておけばいいだけだ。もし事前に準備が出来なければ、受付や配付資料の1ページ目に情報を出しておく。とにかく、特定の個人が注目されないようにしながら、参加者に対して障害者席について知らせる方法を、何かしら見つけることだ。
多くの発表者は暗い部屋を好むが、明るい部屋向けに準備をしておけば、明るい会場でもプレゼンテーションで同じような効果を上げることができる。正直なところ、障害者の問題を別にしても、暗い部屋は誰にとっても最高の環境とは言い難い。障害者でなくとも、急に部屋を抜け出さなくてはならなくなった時に、足下の黒いバッグに足を引っかけてしまうことはある。一般的な聴衆を相手にする場合は、部屋を明るくしておくのがベストだ。暗い部屋は、仲間内のビジネスプレゼンテーションで、同僚が遠慮無くあなたのプレゼンテーションにイライラした表情を向けられるよう配慮する時にだけ使えばいい。
もし聴衆について分かっているのであれば、ミーティングの部屋で車いすに対応する必要があるかどうか、事前に知ることができるだろう。プレゼンテーションが一般に公開されているのであれば、車いすの人が来る可能性に備えておくべきだ。通路には障害物がないようにし、車いすが通れるだけの幅を作らなくてはならない。1、2台分の車いすのスペースをあらかじめ割り当てておき、いざというとき椅子の配置を変えたりしなくて済むようにしておく。そういったことはプレゼンテーションの中断にもなるし、参加者に対しても失礼になる。受付のスタッフが、車いすの参加者を専用のスペースに案内できるように、必ず手配しておくこと。
聴衆が多く、質疑応答の際に聴衆が聴きやすいようマイクを手配しているのであれば、車いすの参加者がマイクの場所に移動できるか、マイクを持ち歩く人が車いすの客の場所に行き着けるようにしておく。
車いすはそれに座っている人のものであり、その人の個人空間の内側にある。話しかけるときに寄りかかったりしてはならない。相手に求められない限り、触ったり押したりしてもいけない。また可能であれば、車いすの人と話すときには、自分も椅子に座った方がいい。これはプレゼンテーションの最中にはおそらく不可能だろうが、プレゼンテーション後に車いすの人が話しかけてきた場合には、自分も椅子を持ってくるといいだろう。
介助犬にも同じことが言える。介助犬に話しかけてはならないし、撫でてもいけない。介助犬の注意を乱すことになってしまう。このことを、聴衆に伝えなくてはならない場合もあるだろうが、臨機応変に対応するのがいいだろう。
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