Facebookはどのように始まったのか--米国の大学カルチャーと創業者たち

 1月15日、世界最大のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「Facebook」誕生の波乱を描いた話題の映画「ソーシャル・ネットワーク」が日本で公開となった。米国では2010年10月に公開された同作品は、ゴールデングローブ賞で6部門にノミネートされているほか、アカデミー賞最有力候補との呼び声も高い。

 いまや5億人という驚異の会員数を誇るFacebookだが(現時点では、月間利用者数が5億9600万人と、6億人に手が届きそうだ)、日本では、恐らくこの1〜2年で、その名前を耳にするようになったという人が多いのではないだろうか。実際Facebookは、その立ち上げからまだ6年が経ったばかりなのである。

 Facebookでは、実名の下で、多くの個人情報やプライベート写真などが行き交っている。プロフィールに学歴や経歴、人生観、哲学、好きな活動、趣味、関心といった項目が事細かく存在しているのを見て、多くの日本人は「なぜここまで?」と不思議に思うかも知れない。しかし、その発端が米国のアイビーリーグの学生たちの要望に応えたツールだったと知れば、日本との文化の違いはあるにせよ、多少は理解ができるのではないだろうか。

Facebookのプロフィールページ

 今や世界最大ともなったSNS、Facebookはどのように始まったのだろうか?

Facebookは何を目指したのか

 当時ハーバード大学の学生だったMark Zuckerberg氏は2004年2月、「The Facebook(ザ・フェイスブック=当時はTheが付いていた)」を立ち上げた。Zuckerberg氏は、コンピュータ科学専攻の2年生で19歳だった。

 もともと米国の高校や大学では、学生間の交流を図るために、新入生の顔写真とプロフィールを掲載した「フェイスブック」と呼ばれる紙の名簿を作り配布する習慣がある。普通なら、そのオンライン版を作るのは大学側ということになるのだが、大学側がグズグズしている間にZuckerberg氏は、大学の寮の一室でプログラムを書きあげ、自腹でサーバを借りて独自のSNSをオープンしてしまったのだ。

 オンライン学生名簿と言っても、Facebookに登録するのは学生本人である。そのプロフィールにアップロードする写真も自前のものだ。登録にはハーバード大学のメールアドレス(Harvard.edu)が必要であり、また実名登録も条件とされていた。

 Facebookは、ある日突然、降って湧いたアイディアを元にして開発し、立ち上げたというわけではない。Zuckerberg氏それ以前にもいくつものアプリやオンラインソフトを開発し、その成功や失敗から多くのヒントを得ていた。フォーチュン誌で長年テクノロジー担当編集主任を務めるDavid Kirkpatrick氏著の「The Facebook Effect」には、そのあたりの経緯が詳しく記されている。

 Zuckerberg氏が2003年10月に作った「Facemash」というアプリは、同性同士の写真を2枚並べ、どちらがより「Hot」かを投票していくというサイトだった。一時期日本のFacebookユーザ間でも流行った「HOT or NOT」というアプリの原型とも言えるものだ。

 Facemashは、Zuckerberg氏が、ある女子学生とのやりとりに腹を立て、ウサはらしに開発したものだったという。公開後4時間で2万2000のビューがあったが、その一方で学生たちから、倫理規定違反やセキュリティ侵害、著作権侵害などで告発され、大学からは謹慎処分になってしまう。

 Zuckerberg氏は、「Facemashは、ほんのジョークのつもりだった。面白かったけれど、ハーバード大に属するマテリアル(写真など)を使った事が非常に大きな問題となってしまった。Facebookでは、著作権保護の扱いには慎重になり、また利用者にも呼びかけた」と、Facemashで教訓を得た事を語っている(The Harvard Crimson)。

Mark Zuckerberg氏、2008年の写真

 学生側にしてみれば、Facebookならば大学側が撮影した入学当時の冴えない写真を使わずに、お気に入りの写真をアップロードでき、自分のアピールポイントを自由に書ける。公開制限を付けて、受講している講義や愛読書、好きな映画や音楽、クラブ活動や政治的立場といった項目も追加できる。

 現在のFacebookのプロフィールには、独身、既婚、交際中などをプルダウンリストから選べる「交際ステータス」という項目があるが、これも、立ち上げ当時からあったものだ。

 こう聞くと「出会い系サイト」を意図したように捉えられがちだが、Zuckerberg氏が目指したのは、もっと広い意味でのフレンドコミュニケーションツールである。大学生ならキャンパスで目にした“気になる相手”の交際ステータスを知りたくて当たり前ではないか。そんなシンプルさが、学生たちのニーズや実態にぴしゃりとマッチしたサービスだったのだろう。

Facebookの創業者たち

 Facebook公開後、登録者は数日で数百人、1カ月後には同大学の学生や大学院生、卒業生や教職員なども含め、その利用者は1万人になっていたそうだ。この時点で、Zuckerberg氏はルームメートたちに声をかけ、Facebookを運営するための陣営を揃えていた。

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