2010年のシリコンバレーを振り返ると、さまざまな業界で新旧の入れ替え、競争が始まった年であった。GrouponやFacebookなど多くのベンチャー企業が急激な勢いで成長し、Googleを含む大手ネット企業を本格的に脅かす存在となってきた。さらにベンチャーキャピタル、モバイル、メディアの業界でも大きな新しい波を感じた年となった。2011年はこれらの“新しい波”と既存の対決がさらに激化するのだろうか。
ネット業界のリーダーとして君臨し新しいサービスを次々と創出してきたGoogleも、2010年は本格的な脅威を感じ、ライバルに悩みはじめた年となったのではないだろうか。もちろんそのライバルは、Times誌の「今年の人」にも選ばれたMark Zuckerberg氏率いるFacebook。世界規模で急成長し、米国では全人口の半分近くが参加するほどの巨大サービスを展開、北米におけるインターネットのトラフィック量はGoogleを超える勢いである。
Facebookはサービスをプラットフォームとして確立しただけでなく、そのプラットフォーム上でZyngaを代表としたアプリケーション開発ベンチャーがいろいろなサービスを展開したことで盛り上がりが加速し、成功した。
多くのベンチャー企業、ベンチャーキャピタリスト、業界リーダーがFacebookの動向を注視し、ネット業界の舞台の主役を奪いとった感がある。話題の主役をGoogleから奪っただけでなく、同社からは大量の社員も奪ったことで、Googleは給与10%アップに特別ボーナスなど、社員引き止めの対抗策をとりはじめた。失敗に終わったと見られるGroupon買収の狙いもFacebookへの対抗策のひとつという意見もあり、2011年はこのGoogle対Facebookの競争がさらに激化すると予想する。
ところで、この1年間でGoogleは約30社を買収したのはご存じだろうか。買収先の特徴は、ずばり「ソーシャル」と「モバイル」である。これは、上記のFacebookとの対抗意識とともに、これまで親密な関係にあったAppleとの戦いが本格化したことも裏付けている。シリコンバレーナンバーワンのインターネット会社の地位をYahooから奪ったGoogleだが、今度はFacebookがその地位を奪いにかかる。このダイナミックな動きは、シリコンバレーならではと感じる。
また、新興の流れはシリコンバレーのベンチャーキャピタル業界においても感じた。本来、インターネット分野のベンチャー企業が成長するためには設備や人材への投資のために、ある程度の資金が必要だった。しかしこれが、クラウドでサービスを構築し、ソーシャルネットワークなどを使って人材を確保するといったことができるようになったため、資金面での課題は極端に減り、「いかに素早くビジネスを立ち上げるか」という重要性が増した。
そのため、少額の投資ファンドを運用し、迅速に投資判断ができるスーパーエンジェルや新しいタイプのファンドが台頭した。その代表例が、Netscape創業者であるMarc Andreessen氏らが集まったAndreessen Horowitz、GoogleやPayPalのエンジェル投資家であったRon Conway氏が率いるSV Angels、そしてY combinatorなど新しいタイプのファンドである。
これらファンドの投資ポートフォリオやキャピタリストの動向には、シリコンバレーで活躍するベンチャーキャピタルの代名詞であるKleiner Perkins Caufield & ByersやSequoia Capitalなど以上に注目が集まっていたように感じる。我々も数年前よりエンジェルネットワークを活用したシードラウンド投資を進めており、すでにに22社のポートフォリオを持つ。その中にはGoogleやGrouponに買収される企業もでてきたが、この1年の熱気は過熱気味とも感じるすさまじいものがあった。
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