iMenu向け広告配信システム「孔雀」誕生秘話--D2Cとウルシステムズに聞く

藤井涼(編集部)2010年12月24日 19時37分

 ディーツーコミュニケーションズ(D2C)は、NTTドコモの公式ポータルサイト「iMenu」上で提供する検索サービス向けの検索連動型広告「D2C リスティング広告 iMenuサーチ(β版)」を10月1日に提供開始した。

 D2Cは9月まで、「ゲーム」や「着うた」などカテゴリごとにキーワードを登録し、検索ワードにマッチした広告を配信する“カテゴリマッチ方式”で検索連動型広告を販売してきた。そして今回、より検索ワードと関連性の高い広告を配信するため新たな広告配信システム「孔雀」を開発した。特定の検索ワードを購入した会社の広告のうち、入札金額と品質の高い広告が優先的に掲載される“キーワードマッチ方式”を採用している。

在庫がなければ他社の広告を配信

  • 一般的なリスティング広告とTAFSの違い

 孔雀は、複数の広告販売パートナーのアドネットワークをとりまとめることで幅広いキーワードをカバーする選択統合配信(TAFS:Total Ad Federated System)というコンセプトに基づいて構築されている。iMenuで検索が行われると媒体を通じて広告配信管理システムに広告配信の要求が送られる。要求に対しD2C内に在庫があるかを確認し、在庫がなければ他社の広告配信会社に在庫を問い合わせる仕組み。

 広告は広告販売パートナーが入稿し、システムでの審査を経て媒体へ配信される。配信された実績はレポートとして広告主へ提供し、その実績をもとに費用を請求する。

品質管理に深く関わり構築期間を短縮

 孔雀の構築期間は2009年10月から2010年9月末まで。わずか1年間という短期間ながら、iMenuに絡む重要なシステムであるため高い品質を求められた。開発の規模は利用ロール約20、約200画面、約10帳票、約20の配信機能、約60のバッチ、サーバラック10本。工数は1000人月を超える大規模なプロジェクトとなった。

 孔雀の構築パートナーには、ITコンサルティングを手がけるウルシステムズが選ばれた。システム構築における最大の特徴は、発注側であるD2Cがウルシステムズとともに深く品質管理に関わったことだ。数値の設定や管理だけでなく、作成した成果物が当初の要求を満たしているか、サービス提供時に問題が発生しないかなど、基本設計書のすべてを読み込み、開発ベンダーに機能の振る舞いを1つ1つ確認した。

ウルシステムズ事業開発部 部長代理の横山芳成氏

 「ここまで深く品質管理に関わった理由として、現状のシステム開発の構造では開発側と発注側でギャップが生まれることが挙げられます。大規模プロジェクトになると2次請け、3次請けのベンダーまで開発をお願いすることも出てきます。そうなると、発注側の要求がすべてのベンダーに伝わりきらず、リリース後に問題が発生したり、当初の要求と異なる内容になってしまうことがあります」(ウルシステムズ事業開発部 部長代理の横山芳成氏)

 開発ベンダーが“とにかく納期に向けて前へ進める”ことばかりにとらわれて、あいまいな箇所をあいまいなまま進めてしまい、結果として使えないシステムができあがってしまうケースが多々ある。そうならないよう、ウルシステムズはD2Cとともに開発ベンダーのフロアを都度訪問し、D2Cと開発ベンダー間の仕様調整の仲介や開発ベンダーの問題解決に努めた。この考え方は、「ウルシステムズのULSD(ユーザー主導開発)のポリシーによるもの」(横山氏)だという。

 開発側のテストには、単体で約3万項目、結合で約1万5000項目、総合で約5000のシナリオを用意した。業務テスト以外にも多重ログインや不正な文字コード入力などの例外的な約4万ケースのテストを実施した。

 開発ベンダー側でテスト要員を増強し一時は約300人体制でテストを実施していた。しかし、新規テストメンバーは自分の担当するテスト部分にのみ着目しがちで、どうしてもサービスや業務全体への理解が希薄になる面があった。そのため、正しいはずの“仕様”が不具合として報告され、開発側の要件定義担当者は不具合かどうかを確認するための再テストに時間を割かれるといった悪循環に陥ることもしばしばだった。

D2C事業開発本部 メディア・ストラテジー・グループ ITアーキテクト担当 上席エキスパートの和賀勝彦氏

 そこでD2Cは関係者らへオリエンテーションを実施し、システム全体の目的や成り立ち、役割を数回に渡り丁寧に説明した。その結果テストメンバーへの理解を得られ、テストをスムーズに進めることができたという。また、システムの品質を検証する部隊を用意し、開発ベンダーによるシステムテストの完了前に受入テストを開始した。早期にシステム障害のポイントや、D2Cが想定していないシステムの挙動を、D2Cと開発ベンダーの双方で共有できた。これらの取り組みにより、1年間という短期間でのシステム構築に成功したという。

 D2C事業開発本部 メディア・ストラテジー・グループ ITアーキテクト担当 上席エキスパートの和賀勝彦氏は、ウルシステムズがパートナーでなければ1年間でのシステム開発は難しかったと当時を振り返る。「この規模の案件ですと通常2年間はかかります。開発金額も現状の1.5倍ほどに膨れ上がっていたのではないでしょうか」(和賀氏)

 システムを孔雀に切り替えてから広告配信要求に対する広告の露出回数は大幅に増加し「売上は従来の2倍以上になった」(和賀氏)という。「将来的にはTAFSをハブにしてパブリッシャ向けに適切な広告を提供したいと考えています。リスティング広告にとどまらず、ディスプレイ広告やサムネイルとテキストを合わせた記事広告なども配信していく方針です」(和賀氏)

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